Q&A経営相談室
【採用戦略】
インターンシップで新卒社員を採用したいが…
 
Q:
 インターンシップ制度で新卒社員を採用したいと考えています。そのための方法と手続き、留意すべき点について教えてください。(自動車部品製造業)
 
<回答者> 関西経営者協会 インターンシップ制推進室長  宮内雅也

A:
 学生を企業に一定期間受入れ、職業体験させるインターンシップ制度は日本では平成10年頃から徐々に広がり始めました。もっとも、一口にインターンシップといっても、仕事の中身を知ってもらうためのもの、専門的な技術を学生に習得させることを目指すもの、起業をサポートするものなど、目的や内容はさまざまです。そんな中で最近増えてきているのが、お訊ねの就職・採用を前提とするインターンシップです。
 採用時には通常、面接、ペーパーテスト、適性検査などを併用して選考しますが、学生も企業もお互いの本当の姿を見極めるのは難しく、それがミスマッチを引き起こし、早期離職の一因ともなっています。そこでこの制度では、学生を職場の中に入れて実際に仕事をさせ、事前に互いの長所・短所を知ることによってミスマッチを防ぐことを狙いとしています。
 実際の受入れの手順としては、まずその目的に応じたプログラムを策定する必要があります。就職・採用を前提とするインターンシップであれば、企業として学生にアピールしたいことを中心に、受入れ部署と調整の上、プログラムを組み立てます。採用人数が少なかったり職種別採用を行うため採用後の配属先が決まっている場合などは、そこでの仕事を経験させるのも1つの方法です。また学生は1つの職種を深く体験するよりもいろいろな職種を広く体験することを希望しているケースが多いので、受入れの時期や期間によってはそうした学生の希望を取り入れることを考えてもよいでしょう。ちなみに受入れ時期は学部3回生または修士課程1年生の夏休みが多く、期間は1週間から1ヵ月程度が一般的です。なお就職・採用を前提とするインターンシップの場合、3回生で就職が決まってしまえば、その後の学生生活で勉強しなくなるという指摘があります。就職内定後のフォローについても留意が必要でしょう。

保険適用と賃金の問題

 またインターンシップ全般についていえることですが、受入れの実務にあたっては保険適用と賃金の問題への注意が必要です。これは言い換えれば学生が労働者に該当するかどうかということです。アルバイトやパートタイマーなどと同様に労働者として学生を受入れるのであれば、労働者災害補償保険(労災保険)の適用があり、賃金も労働基準法や最低賃金法に則った支払いが必要です。逆に工場見学者などと同様、労働者に当たらなければ賃金支払いの必要はないわけですが、万一事故が起こったときは労災保険からの給付が受けられません。ほとんどの企業では学生の受入れをあくまで教育の一環と捉え、学生が労働者には該当しないと考えています。そのため賃金は支給しないか、たとえ支給しても日当程度というところが大半です。一方、保険については何らかの手立てを講じています。学校によっては学生に保険を付保していますが、それとは別に企業が民間損害保険会社の扱う保険に加入させるケースもあります。
 こうした点を社内で調整し明確にしたうえで、学生を募集します。募集方法としては、新規学卒者の採用と同様、募集要項を学校へ送付したり、就職情報誌や自社のホームページに掲載するといった方法がありますが、インターンシップについてはそれ以外にも、行政や各種団体が行っている情報提供やマッチングを利用することも考えられます。私ども関西経営者協会でも受け入れ情報をインターネットで発信しておりますので、ぜひご利用ください。なお、どのような募集方法をとるにしても、インターンシップの募集であることは明示しておくべきです。また就職・採用を前提とするインターンシップにおいて、受入れても採用しない可能性があるのであれば、事前にその旨を明らかにすることも無用のトラブルを避けるうえで必要です。

提供:株式会社TKC(2001年12月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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