Q&A経営相談室
【海外進出】
中堅・中小企業が中国進出で失敗しない法
 
Q:
 年内のWTO(世界貿易機関)への加盟実現が高まり、順調に経済発展を遂げている「中国」に進出したいと考えていますが、事前準備として何をすればいいか教えてください。(電子部品メーカー)
 
<回答者> 中小企業総合事業団 調査・国際部
中小企業国際化支援アドバイザー 高島 清

A:
 ご質問者のように中国進出を検討する中小企業の経営者が、今年に入りかなり増えてきています。
 当中小企業総合事業団では「国際化支援アドバイス」(海外投資及び国際取引)を行っているのですが、海外投資について中国関連のアドバイスは、昨年度719件中36.7%だったのが、今年(4月〜8月21日/全体426件)は50.5%となり、急増しています。
 中国への関心が高まっている理由はいくつかあります。1つは人件費が安いことです。地域差はありますが、一般ワーカーの場合、福利厚生費込みで月給1000元(1万5000円)程度で、ここ数年変わっていません。しかしマネジャークラスの給与は年々上がっています。2つ目は、以前は安かろう悪かろうだったのが、「品質」が非常に向上していることです。3番目は中国の将来性です。中国は、今後10年間の平均成長率を7%と見込んでおり、現在のGDP 1兆ドル強を倍増する、としています。
 進出形態は独資(自社出資比率100%)が主体になっています。進出動機としては取引先または親会社からの要請、あるいはコスト削減などを狙って進出するケースが多いようです。
 また、現在進出先として最も人気の高いエリアは上海を中心にした華東地域、次に多いのが深センを中心にした華南地域です。

カギ握る「企業化調査」

 さて、中国進出をスムーズに立ち上げ、成功に導くには緻密な「フィジビリティ・スタディ(FS/企業化調査)」を行うことが最大のポイントです。これは、1.どこに進出するか、2.進出形態は独資で自ら現地生産するのか、あるいは原材料及び機材を持ち込んで現地企業に生産を委託するのか、3.生産、販売計画をどうするか、4.社員数、人件費などをどの程度にするか――など。 
 要は事業として採算がとれるのかどうかを厳密に調査する、ということです。ムードに流されて甘く見積もると、失敗する恐れがあります。中小企業の場合、いちからFSをやるのは大変なので、専門家の指導を受けながら行うのが望ましいのではないでしょうか。 
 そのうえで注意事項としていくつか挙げると、まず独資で進出する場合、総務と経理担当者には優秀な現地人スタッフを採用することです。とくに総務担当者は政府機関と折衝する際の窓口になるため、非常に重要なポストといえます。マネジャークラスは公募するか、「服務公司」という人材派遣機関を利用して採用しています。
 第2は自社で現地生産するにあたっては、「標準工場」を活用するとイニシャルコストを抑えることができます。標準工場はいわゆる工場団地で、中国各地にあります。賃貸料は1000平方メートルで、15〜28万円くらいです。
 第3は、契約に関しては細部にわたって決めておくことです。例えば先ほどの標準工場を借りる場合なら「もし不可抗力以外の理由で、工場内の電気や水道が止まった場合、どういう形で保証、手当てしてくれるのか」といったことまで網羅しておくべきでしょう。そして、それを必ず弁護士にチェックしてもらっておくことです。
 失敗する典型的なケースは販売先を確保しないまま中国の内需をあて込んで進出する場合です。現地生産にしろ委託生産にしろ、販売計画を厳密に作成することが成功の近道といえます。

問い合わせ先:中小企業総合事業団国際事業課  TEL 03-5470-1522

提供:株式会社TKC(2001年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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