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最近の中小企業の倒産は年間2万8000件のペースと高水準を示していますが、特徴的なことは、「放漫経営」による倒産が減り、「不況型倒産」や「連鎖倒産」が増えていること。これら経営者の直接の責に帰すことができない要因に対して緊急避難的な措置を講ずることは、中小企業基本法にも明記してあり、その具体的施策として、特別な融資制度も用意されています。
中小企業の倒産防止のための融資制度には大きく分けて4つがありますが、それぞれを論ずる前にまずお薦めするのは、中小企業庁の倒産防止対策として、都道府県商工会連合会と主要な商工会議所に設置している『倒産防止(経営安定)特別相談室』(275ヵ所)に相談されることです。ここでは商工調停士および中小企業診断士、弁護士、公認会計士などの専門スタッフが金融あっせんや民事再生法等倒産関係の法律に関する相談を無料で行っています。
4つの融資制度を有効活用
さて、融資制度ですが、まず特別相談室で推薦を受けた中小企業者は、中小企業体質強化資金助成制度を活用した各都道府県等の「経営安定対策貸付」を利用することができます。貸付限度額は1500万円以上で各都道府県等が定める範囲内。
この制度は「最も簡単で使いやすい」ともいえますが、金額が小さいという弱点があります。そのため、ご相談のような大口の取引先の倒産には対応できないかもしれません。
もっと金額が必要な場合には「緊急経営安定対応貸付制度」があります。これは連鎖倒産を防止するための貸付制度で、貸付対象は「倒産企業に対する売掛金債権等を50万円以上有する者」「倒産企業との取引額が、全取引額の20%以上を占める者」のいずれか。3つの政府系金融機関から、これまでの融資実績とは別枠で借りることができ、限度額は中小企業金融公庫と商工組合中央公庫が1億5000万円、国民生活金融公庫3000万円となっています。さらにこの制度では、前述の貸付対象条件を緩和し、取引先倒産とは関係なく、不況型で経営危機に陥っている企業に対しても、8000万円を限度に融資(50%の担保徴求免除)する制度も最近付け加えられています。
次に、「経営安定関連保証制度」。これは、大企業など「社会的影響が大きい」と経済産業大臣から指定を受けた企業の再生手続き開始申立等で、その企業と取引のある中小企業に影響が及ぶ場合に利用できる制度。最近では長崎屋やそごうなどもこの「指定」を受けました。所在地の市町村長の認定を受けることにより、信用保証協会からの保証が一般保証に加え、一般保証と同額の限度額を別枠で利用できます。一般保証は、普通保証、無担保保証、無担保無保証人保証を合わせて2億9000万円ですから、金融機関・信用保証協会の審査をクリアすれば、5億8000万円までの保証を受けることができる計算になります。
そして最後に「中小企業倒産防止共済制度」。これは中小企業総合事業団の共済事業で、6ヵ月以上掛金を納付していた契約者は、万一取引先企業に不測の事態が生じ、売掛金や受取手形などの回収が困難になった場合に、その売掛債権等の額と掛金総額の10倍に相当する額とのいずれか少ない額の範囲内(最高3200万円)で、無担保、無保証人、無利子で貸付が受けられます。
いずれにしても、連鎖倒産を防ぐための特別な融資制度は、年々手厚いものとなっています。しかし、残念ながら、これらの制度を知らずに倒産の憂き目を見る経営者が多いのも確かです。もしも不幸にして、会社が危うくなったら、冒頭に述べた『倒産防止(経営安定)特別相談室』に相談してみて下さい。中小企業の経営安定への入り口がここにあります。
(インタビュー・構成/「戦略経営者」・高根文隆)
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