Q&A経営相談室
【税  制】
販売代理店への現金還元などは交際費となるのか?
 
Q:
 売上高の増加を図るためにキャンペーンを実施し、一定額以上を販売した販売代理店に現金還元や商品の無償交付などの奨励策を企画しています。これらの支出は交際費に該当するのでしょうか。(食品製造業)
 
<回答者> 税理士 多勢陽一

A:
 自社製品の販売促進の一環として、販売した金額・数量を基準に販売店に対し金銭の払い戻しや販売用製品、事業用固定資産等を交付する行為を売上割戻といいます。これは交際費に該当しないとされています。
 売上割戻は、「販売額や回収額を基準とする方法」「販売促進効果を持続させるためポイント制をとる方法」など、それぞれの業種・業態によって多様化しています。また、実施期間も企業によって違いますし、割戻対価も「金銭を支払う」「販売用製品や固定資産などを支給する」など様々です。
 得意先に金銭や物品を贈答するという行為が伴うため、売上割戻と交際費は隣接する勘定科目です。運用の仕方を間違えると税務調査時に交際費と指摘されるケースもありますので、注意が必要となります。
 売上割戻と交際費が区別される基本的な基準の一つとして、代替課税の考え方があります。
 売上割戻を受けた販売店は、その収受した金銭について必ず収益に計上することになります。販売用製品を交付した場合には、販売店は製品を仕入れることなく売上だけが計上されることになり、また、事業で使用することが明らかな固定資産を交付する場合には、販売店は自らその固定資産を購入する必要が無くなります。そのため結果的に販売店側の経費が減少されることになります。このように売上割戻は、販売店側の利益増加に貢献しそこで課税が行われることから交際費とは区別されているのです。

相手が個人なら交際費

 
この代替課税の考え方は、相手方を事業者に限定するものです。したがって、売上割戻で金銭等を支出する相手が販売店の役員や担当者などの個人である場合、事業者として収益の計上が行われませんので交際費に該当することになります。役員や担当者が受け取った金銭について雑所得として確定申告を行うにしても交際費に該当することになります。
 売上割戻の一環として旅行やスポーツ観戦の招待を行うという場合でも、招待者は販売店の役員や従業員ということになりますので、同様の考え方から交際費に該当します。
 販売店に支出した金銭や交付した事業用資産を売上割戻として経理処理を行う場合には算定基準をあらかじめ決めておき、その基準に従った金銭の支出や事業用資産の交付が行わなければなりません。一般的には、販売高や回収額が売上割戻の基準になるでしょう。算定基準は、販売店の置かれている営業地域の特殊事情や協力度合などを考慮して定められたものであっても、売上割戻があくまでも自社製品の販売促進を目的としたものであって贈答を目的としたものでない限り差し支えはないでしょう。ただこの場合、基準作成までの会議記録や稟議書などは、その根拠を示すものですから必ず保存するようにしておきましょう。
 売上割戻として事業用資産以外の物品(いわゆる販促用ノベルティ等)を交付する場合でも、購入単価がおおむね3000円以下の少額物品であるときには、一般的にその交付に要する費用は交際費に該当しないとされています。ただ、販売店に販売促進のための督励訪問を行う際に持参する手土産代等は、その購入価額が3000円以下でも贈答目的であるため交際費に該当することになります。
 販売店の新築祝いなどに事業用資産を贈呈する場合もあるでしょうが、自社の製品名の入った看板などの贈呈であれば、製品名が不特定多数の者の目に触れ広告宣伝効果があることから交際費には該当しません。売上割戻の基準によらない宣伝広告用意外の事業用資産の贈呈の場合は、交際費に該当します。
 売上割戻を拡大解釈して運用すれば交際費に該当する結果になりますので、会計事務所と確認をとりながら運用することをお勧めします。

提供:株式会社TKC(2001年7月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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