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中小企業でも就労時間中にWeb閲覧や私用メールをする社員が増えてきて、経営者の頭を悩ましています。大変難しい質問ですが、私は次のように考えます。
まず、Web閲覧に関しては、それを監視したとしても、プライバシー侵害にはならないと思います。以前から業務時間中にアダルトサイトを見ていて仕事をしないという理由で解雇がなされた事案がいくつも発生しています。特にアメリカのパソコンメーカーで大量解雇された事件は有名です。こうしたケースでは、勤務中にどのようなWebを見ていたのかを特定しなければいけませんし、仕事に必要なWeb閲覧であればとがめる事ができません。従って、どこにアクセスしたかの記録をとることは必要なことになります。
何を見ているか、監視されるのは気分が良くないという意見があるのはわかります。内心の自由であり、プライバシーの範囲ではないか、というわけです。その面は否定しませんが、勤務時間中というのは仕事をする時間ですし、その仕事は会社の業務そのものであって、その内容についてはすべて会社の行為となります。従って、どのような行為も会社の行為としてふさわしいかを検討することになるはずです。公私の区別を明確にして、その上で公の部分、すなわち業務上の部分では、作業内容のチェックや指導は社員が受任するべき内容になるでしょう。
次に電子メールのチェックですが、条件付ながらも原則として適法であるというべきです。その条件とは、企業が作成配布した企業所有のメールアドレスであること、というものです。このメールは、企業が所有管理しているメールサーバを経由していますので、企業の外と内側とを区別する基準となるものでもあります。企業としては、内部の重要な情報が外部に漏洩することを防止することが必要であり、外部からウイルスなどの危険なファイルが入らないように監視、規制することが必要になっています。従って、どのようなファイアーウォール(外部からの不正侵入を防止するセキュリティシステム)を作っても、社員自身が持ち出したり、外から持ち込んでいたのでは意味がないのです。セキュリティを守る上で、外部とのやり取りは厳しくチェックするべきだと言えます。
ただ社員は通常、電子メールはプライベートな通信に用いてもいいもの、という認識をもっているかもしれません。会社のメールアドレスで飲み会の連絡をしたり、デートの約束をしたり、といったことも多いでしょう。しかし、それらは社員が会社のものを公私混同して利用しているだけであって、決して誉められることではないのです。そのようなスタンスで接して構いません。電子メールの使用ルールを決めて、徹底させるのもひとつの手です。
社員との合意も必要
以上、社員には厳しい内容の回答となりましたが、ただ、経営者の方は次の点は理解しておきましょう。こうした作業は実はプライバシーに非常に接近したものですから、慎重に行う必要があります。従って、まず事前に規制内容を明示しておく必要があります。監視の内容、監視する範囲など、そして監視されているということを予め全員に明確に告知しておく必要があります。もし万が一、不正な行為が行われたようなときには十分な対処ができるように監視行為に対するチェックシステムを用意する必要もあるでしょう。
そして最後に従業員代表者の合意を得て、就業規則や労働協約、規約といった形で明確にしておく必要があります。このように周知徹底することで、安定的な企業の管理が実現するのだと思います。
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