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■Q&A経営相談室

:法 改 正

「登録販売者」制度の中身と影響

 地方で調剤薬局を5店舗経営しています。このほど薬事法が改正になり、「登録販売者」制度が設けられましたが、その詳しい内容と業界への影響などについて教えてください。(薬局経営)

回答者: 商業環境研究所 代表 入江直之

 規制緩和の大きな流れを受けて、今年6月に「改正薬事法」が衆議院で可決、成立しました。今後、3年間の経過期間を経て、2009年から実施される見込みです。今回の改正の目玉の一つは、大衆薬分野の販売に「登録販売者」制度が導入されたこと。つまり、店舗に薬剤師がいなくても販売できる医薬品を定めたことです。
 現在は医師の処方箋が要らない大衆薬であっても、薬剤師を配置した薬局や薬店でなければ販売できませんが、改正薬事法では、こうした大衆薬を副作用リスクの度合いによって「A・B・Cの3段階」に分類し、「特にリスクが高い」とされるA分類を除く、B・C分類の薬品は新設される「登録販売者」の資格があれば、薬剤師がいない一般の小売店でも販売できるようになります。
 改正の主旨は、あくまでも「消費者の利便性を高める」ことが狙いですが、現実にはこれにより医薬品販売を取り巻くさまざまな業界が影響を受けることになります。まず、この法案の成立を最も待ち望んでいたといえるのがコンビニ業界でしょう。コンビニはこれまでも郵便や金融ATM、酒類など、規制緩和の流れに乗って取扱品目を拡大してきました。
 従来、風邪薬や頭痛薬、解熱剤などは必要時のために家庭で買い置きされていたわけですが、コンビニで販売されるようになれば、消費者の購買行動は大きく変わるに違いありません。医薬品は利益率が高く、またレジまわりのデッドスペースを活かして対面販売すれば売り場効率の向上というメリットも生まれます。
 登録販売者資格の詳細は2年以内に厚労省が定め、試験は国ではなく、都道府県が実施するとされていますが、いずれにしても従来の薬剤師に比べてハードルの低い資格になると考えられます。このため、コンビニだけでなく、食品スーパーや100円ショップなども、大衆薬販売に参入する意欲を見せており、人件費の削減効果を活かして営業時間の延長を計画している企業もあるようです。
 一方、医薬品メーカーは、この法改正によって、販路が拡大することを期待していますが、医師の診断に基づいて使用される医療用医薬品を大衆薬に転用した、いわゆる「スイッチOTC」など、前述のA分類に属する薬品については少し意見が分かれるようです。
 ご存じのように、大衆薬の市場は健康食品やサプリメントなどに押されて、その規模が縮小傾向にあります。が、食品や雑貨なども販売する「ドラッグストア型チェーン」では、これを契機にA分類の販売を強化する調剤タイプと、B・C分類の販売を強化するタイプに分かれるでしょうし、また、コンビニなどの大手小売チェーンがメーカーとPB商品を開発する動きも出てくるでしょう。現状では登録販売者資格の詳細が未確定であり、どれだけの小売店が大衆薬販売に参入するかは不明ですが、今後3年の間に具体的な運用をめぐって、さまざまな論議が交わされることになると思います。
 いずれにしても、従来の薬局薬店では、今後「説明が義務」づけられるA分類の薬品をどう位置づけ、販売していくかが成長のカギを握っていると考えられます。例えば、ご質問者の場合は処方箋調剤が可能な薬局を経営されているということですから、その利点を活かして、さらにA分類の販売強化を狙い、一般小売店との差別化をはかるという方法もあるのではないかと思います。

「戦略経営者」2006年10月号より転載

注:当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、TKC全国会は当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員事務所 にご相談ください。
 
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