■Q&A経営相談室

:労務管理

社員の副業を認める際の留意点は…

 売上が低下し、賃金が下がり気味です。社員の副業を認めて軋轢を減らしたいと思っていますが、留意点はどのようなことですか?(印刷業)

回答者:社会生産性本部 主席経営コンサルタント 飯野峰尾

 多くの会社では、就業規則に雇用契約を維持したまま他社で働くことの禁止、または他社で働くことについて事前に会社の許可を受けなければならないとする規定や、これらに違反した場合の罰則規定を設けています。
 判例においても社員が勤務終了後の「その自由な時間を精神的肉体的疲労回復のため適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用についても関心を持たざるをえず、また、副業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、対面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の副業の許否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮した上での会社の承諾を必要とする旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたい」という理由で就業規則に定められた副業禁止や解雇が認められています。
 つまり、副業を行うことによって、休養不足が生じ本来の業務に支障が起こる場合、あるいは副業の内容が会社の業務と競業したり、風俗、暴力バーなど会社の信用や対面を傷つけるものであったりする場合には、解雇が認められることもあります。
 副業禁止規定を会社がそもそも設けるのは、(1)精神的、肉体的に疲労するので、会社の勤務に全力投球ができない(2)残業ができない(3)会社の秘密、情報が漏れる(4)場合によっては会社の対外的信用、体面を傷つける――などの支障が起こることを防ぐことにあります。
 かりに副業を認めるとしても以上のような支障がないことを確認するため、副業を希望する社員に対し、会社への事前の届出と許可を前提とすることをお勧めします。

ワークシェリングと副業

 最近、総合電機大手企業が、工場の現業部門の社員に対し、期間を限定して、就業規則で禁じているアルバイトなどの副業を認めることになりました。同社はワークシェアリングを実施していて、これに伴う賃金の減少分を補填するため、例外措置として副業を認めることにしました。約20%の時短とそれに伴う賃金カットを実施しています。同社は、減収を自助努力で補いたいという従業員がいれば、原則禁止している副業を例外的に認めることにしました。届出を受けて企業機密の漏洩などの恐れが無ければ認めるというものです。同杜では今回の措置を「これら社員の収入の落ち込みを最小限にとどめるため、就業規則で禁じている副業を、実施期限を区切って解禁、アルバイトなどの副業を認めている」と説明しています。
 同じ電機業界のワークシェアリングの導入を目指す企業でも、就業規則で禁じている副業の問題について労使間で検討を始めるなど、具体的に動きだしており、副業禁止の規定を見直す流れは今後、本格化していきそうです。
 労働基準法による法定労働時間は、1日8時間1週40時間です。この法定労働時間は、同一の事業主に属する異なった事業場において働く場合だけでなく、事業主を異にする事業場において働く場合にも労働基準法第38条の定めにより通算されます。たとえば、甲事業場で6時間働いた後に、乙事業場で2時間働くと、1日の労働時間は8時間ということになります。かりに乙事業場で4時間働くと、通算して10時間働くことになります。この場合、2時間は時間外労働になり、その時間外労働に対して割増賃金を支払う必要が生じます。
 この場合、時間外労働についての法定の手続をとり、割増賃金を支払うのは甲と乙のどちらであるかの判断は、「その労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべきであろう。後で契約を締結した事業主は、契約の締結にあたって、その労働者が他の事業場で労働していることを確認した上で契約を締結すべきであるからである」とされ、この点にも注意が必要です。

「戦略経営者」2002年7月号より転載

注:当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、TKC全国会は当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員事務所 にご相談ください。