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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

国庫補助金等

【質問】

 私はA市から100万円の補助金の交付を受け、交付の目的である機械を150万円で取得した。
この場合の税務上の処理について説明してもらいたい。

【回答】

 補助金をもってその目的である固定資産を取得した場合には、その補助金は総収入金額に算入されない。
 したがつて、市からの補助金100万円は、事業所得の総収入金額に算入されない。また、取得した機械の取得価額は50万円(150万円ー100万円=50万円)になる。

【関連情報】

《法令等》

所得税法42条
所得税法43条
所得税法施行令89条
所得税法施行令90条
所得税法施行令91条

【解説】

1 国庫補助金の交付を受けた場合においても、本来ならば課税所得の計算上総収入金額に算入される。しかし、国庫補助金の受入に伴い課税利益が生ずるとした場合には、その国庫補助金によって取得を予定された資産の取得資金が税の額だけ不足することとなり、補助金交付の目的が阻害される結果となる。そこで、この調整のための手段として、国庫補助金等の総収入金額不算入の制度が設けられている。
 この制度は、補助金をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合には、その取得又は改良に充てた部分の補助金の額は、総収入金額に算入しないこととし、他方、その固定資産については、その取得に要した金額又は改良費の額から総収入金額に算入されなかった金額相当額を控除する制度である。
 これによって、国庫補助金の交付を受けた時点では課税は生じないことになる。しかし、その固定資産の減価償却を行う場合に、総収入金額に算入されない金額相当額だけ取得費又は改良費が減額されているので、それだけ年々の減価償却費の額が少なくなることを通じて、その固定資産の耐用年数に相当する期間になし崩し的に課税が行われることになる。つまり、この制度は一種の課税延期の制度である。
2 居住者が、各年において固定資産(山林を含む。以下同じ。)の取得又は改良に充てるため、国や地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれに準ずるもの(以下「国庫補助金等という。)の交付を受け、その年においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合には、その国庫補助金等の返還を要しないことがその年12月31日(その者がその取得又は改良をした後その年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時)までに確定した場合に限り、その国庫補助金等のうちその固定資産の取得又は改良に充てた金額は、所得金額の計算上総収入金額に算入されない(所法42条1項)。
 なお、国庫補助金に準ずるものとして次のものが定められている(所令89条)
 (1)障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の助成金
 (2)福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律に基づく独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金
 (3)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金
 (4)公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に基づく独立行政法人空港周辺整備機構又は成田国際空港株式会社の補助金
 (5)独立行政法人農畜産業振興機構法に基づく独立行政法人農畜産業振興機構の補助金
 (6)日本たばこ産業株式会社が交付するたばこ事業法に規定する葉たばこの生産基盤の強化のための助成金
 また、この国庫補助金等で取得し又は改良した固定資産の取得価額については、総収入金額に算入されない金額相当額(国庫補助金等の額)を控除した金額をもって取得し又は改良したものとみなされる(所法42条5項、所令90条1号)。すなわち、国庫補助金等の分だけ減額(圧縮)された取得価額を基にして、減価償却費の計算や譲渡があった場合の譲渡所得等の計算が行われることになるのである。
3 居住者が各年において国庫補助金等の交付に代わるべきものとして固定資産の交付を受けた場合には、その固定資産の価額に相当する金額は、所得金額の計算上総収入金額に算入されない(所法42条2項)。
 また、その固定資産については、その取得に要した金額はないものとみなされる(所令90条2号)。
4 前記1の場合において、その国庫補助金等の返還を要しないことがその年12月31日までに確定していない場合は、その国庫補助金等の額に相当する金額は、その年分の所得金額の計算上総収入金額に算入されない(所法43条1項)。要するに、とりあえず、その国庫補助金については棚上げして、課税が生じないようにするものである。
 しかし、国庫補助金等の全部又は一部について返還を要しないことが確定した場合には、その確定した金額は、次の金額を除き、その確定した年分の所得金額の計算上総収入金額に算入することになっている(所法43条2項、所令91条1項)。
 (1)補助金を減価償却資産の取得に充てたとき・・・返還する必要のないことが確定した補助金×((その減価償却資産の取得に要した金額ーその減価償却資産の取得の日から補助金を返還する必要のなくなった日までの期間の減価償却費の累積額)÷(その減価償却資産の取得に要した金額))
 (2)補助金を減価償却資産の改良に充てたとき・・・返還する必要のないことが確定した補助金×((その減価償却資産の改良に要した金額)ー(その減価償却資産の改良の日から補助金を返還する必要のなくなった日までの期間の改良に要した金額の減価償却費の累積額)÷(その減価償却資産の改良に要した金額))
 (3)補助金を減価償却資産以外の固定資産の取得や改良または山林の取得に充てたとき・・・返還する必要のなくなった部分に相当する金額
 要するに、返還を要しないことが確定したことに伴って、次の金額を総収入金額に算入しなければならないのである。
  イ 国庫補助金等の交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良に充てられた金額以外の金額があれば、その金額
  ロ 国庫補助金等の交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良に充てられた金額のうち、既往の減価償却費に対応する金額
 上記ロの金額を総収入金額に算入することによって、既往の減価償却しすぎた分が調整されるわけである。
 また、この国庫補助金等で取得し又は改良した固定資産の取得価額については、返還を要しないことが確定した部分に相当する金額を控除した金額をもって取得し又は改良したものとみなされる(所令91条2項)。
5 前記2、3、4の国庫補助金等の総収入金額不算入の規定は、原則として確定申告書にその適用を受ける旨、総収入金額に算入されない金額その他所定の事項の記載がある場合に限り、適用される(所法42条3項、43条4項)。

【収録日】

平成22年 9月 8日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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