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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の併用の可否

【質問】

(1)事実関係
〔1〕個人甲は、30年間住居としてきたN区の居宅が手狭になったので、住替えを計画し、平成20年の初めにM市にある高級分譲住宅を購入して、同年3月に家族で入居した。
〔2〕甲は、M市の分譲住宅の購入に際してかなり多額の住宅ローンを設定したので、平成20年分及び平成21年分の所得税の申告に当たっては、限度額いっぱいの住宅借入金等特別控除の適用を受けている。
〔3〕住宅ローン返済の負担が予想以上に重いので、平成21年には、N区の従前の居宅(転居後は空家)及びその敷地(以下「旧居住用財産」という)を売却し、その売買代金で住宅ローン残額の一部の繰上げ返済をした。
〔4〕平成21年分の所得税の確定申告では、前年に続き住宅ローン残額に対する住宅借入金等特別控除の適用を受けるほか、旧居住用財産の譲渡所得について、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除(措法35)を適用し、課税譲渡所得金額0として申告した。
〔5〕最近、所轄税務署から、「平成20年に取得したM市の分譲住宅に入居し、同年以後の年分の所得税について住宅借入金等特別控除の適用を受けているが、平成21年分にあっては、同年中に売却した旧居住用財産の譲渡所得について3,000万円特別控除の適用をも併せて申告している。
 しかし、このように一定期間内の所得税について住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の特例を併せて適用することは認められていないので、平成20年分以後の各年分の住宅借入金等特別控除の適用を取りやめて、修正申告をする必要がある」と指摘された。
(2)質問
イ 所轄税務署の指摘の根拠を知りたい。
ロ 平成20年分にまで遡って住宅借入金等特別控除の適用を取りやめ、修正申告するように指摘されたが、実は、旧居住用財産の売買代金が多くなかったので、どうしてもというのであれば、旧居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用を自己否認して修正申告する方が、本税、加算税ともに徴税税額が少なくて助かるので、そのように取扱うことはできないものか。

【回答】

(1)所轄税務署の指摘の根拠について
 住宅税制上の優遇措置が特定の者に過度に集中することを避ける趣旨で、住宅借入金等特別控除の適用を受ける個人が、同特別控除の適用に係る住宅を居住の用に供した年(居住年)を中心とする5年の間に旧居住用財産等を譲渡し、その譲渡所得について居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除(措法35)等の適用を受ける場合には、税制上、これらの年分の所得税について住宅借入金等特別控除の特例を併せて適用することは認めないこととされています(措法41〔8〕〔9〕)。
 なお、居住年の翌年、翌翌年中に行った旧居住用財産の譲渡について居住用財産の譲渡所得の3,000万円控除等の適用を受ける個人が、その譲渡年の前年分、前々年分の所得税について既に住宅借入金等特別控除の適用を受けている場合については、旧居住用財産の譲渡年分の確定申告期限までに過年分の住宅借入金等特別控除の適用を取り止めて、自主的に修正申告すべきことなどを定めた義務的修正申告の規定が設けられています(措法41の3)。
(2)居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用を自己否認し、修正申告することについて
 前述のように、個人が一定期間の所得税について住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等を併せて適用し、申告することは認められていません。
 そして、取得した居住用家屋等についての住宅借入金等特別控除の適用が先行し、その翌年分又は翌翌年分の旧居住用財産の譲渡所得について居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の適用を受ける場合には、特別に、先行した住宅借入金等特別控除の適用を自主的に取り止め、遡及的に修正申告すべきことを定めた義務的修正申告の規定が設けられています。
 そのため、この間の住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の併用の解消については、もっぱら、住宅借入金等特別控除の適用の取止めによる修正申告等によって行う(その修正申告等がないときは、税務署長は住宅借入金等特別控除の適用を否認して更正決定をする)ことを制度上の原則としており、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の適用を取止めて修正申告等する方向での是正は予定されていないものと考えざるを得ません(措法41の3)。

【関連情報】

《法令等》

租税特別措置法41条8項
租税特別措置法41条9項
租税特別措置法41条の3

【解説】

1.一定期間内における住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等との併用の排除について
(1)住宅借入金等特別控除の対象となる居住用家屋等を取得した個人が、当該居住用家屋等を居住の用に供した年分以前の所得税について、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の適用を受ける(受けている)場合
 住宅借入金等特別控除は、個人が同特別控除の対象となる居住用家屋等(居住用家屋、既存住宅用、増改築をした家屋(措法41〔1〕)又は認定長期優良住宅(措法41〔5〕))を取得した個人が、当該取得した年分、その前年分又は前々年分の所得税について、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等(居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除(措法35)、居住用財産の譲渡所得の軽減税率(措法31の3)、特定の居住用財産の買換え・交換の特例(措法36の2、同36の5)、既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え・交換の特例(措法37の5)又は特定事業用地適正化計画に係る土地等の交換等の特例(措法37の9の2))の特例の適用を受ける(受けようとする)場合には、その取得した居住用家屋等に係る居住年以後10年間の各年分の所得税については、適用されません(措法41〔8〕)。
(2)住宅借入金等特別控除の対象となる居住用家屋等をその居住の用に供した個人が、当該居住の用に供した年の翌年又は翌々年中に当該居住用家屋等以外の土地建物等(居住用財産に該当するものに限る)の譲渡をした場合において、その譲渡につき、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の適用を受けるとき当該個人が取得した居住用家屋等に係る居住年以後10年間の各年分の所得税については、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません(措法41〔9〕)
 このように、住宅借入金等特別控除の対象となる居住用家屋等を取得し居住の用に供していても、その居住の用に供した年の前々年から翌々年までの5年の間に、旧居住用財産等の譲渡をし、その譲渡について居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の適用を受けるときは、この期間内に居住の用に供した居住用家屋等に係る居住年以後の10年間の各年分の所得税を対象とする住宅借入金等特別控除の特例を受けることはできません。
 なお、住宅借入金等特別控除の適用を受けていた居住用家屋等を譲渡した場合には、当該居住用家屋等の譲渡所得について居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除等の適用を受けても、その前年以前の年分に係る当該居住用家屋等に係る住宅借入金等特別控除の適用については、修正申告等の義務は課されていません(譲渡年分については、年末に居住していないため、当然に、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません)
2.義務的修正申告等について
(1)上記1.の(2)に該当する個人が、旧居住用財産の譲渡年の前年分又は前々年分の所得税について住宅借入金等特別控除の適用を受けている場合には、その者は、その譲渡年分の所得税の確定申告期限までに、当該前年分又は前々年分の所得税についての修正申告書(確定申告書の提出がない場合は、期限後申告書)を提出しなければなりません(措法41の3〔1〕)。
(2)(1)による修正申告書等の提出がない場合には、所轄税務署長は、住宅借入金等特別控除の適用を否認し、更正決定を行います(措法41の3〔2〕)。
(3)その他(1)の修正申告書で提出期限内に提出されたものは、期限内申告書(通則法17〔2〕)とみなすなどの特則も設けられています(措法41の3〔3〕〔4〕)。

【収録日】

平成22年 8月25日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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