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《税務Q&A》

情報提供 TKC税務研究所

【件名】

本社ビル屋上に設置する太陽光発電設備に係る中小企業経営促進税制の適用の可否

【質問】

 A社は、建設業を営む資本金5千万円の青色申告法人(中小企業者から除外される「適用除外事業者」(措法42の4〔8〕八)には該当しません。)ですが、当期中に、本社の屋上に太陽光発電設備(総工費1千万円。以下「本件発電設備」といいます。)を設置することとしており、発電した電気については、本社ビルの消費電力を賄うほか、余剰電力については売電する予定です。
 そこで質問ですが、本件発電設備の資産区分及び耐用年数についてはどうなりますか。
 また、設置業者によれば、本件発電設備については、中小企業経営強化税制における生産性向上設備としての証明書の入手が可能と聞いておりますが、同税制を適用することができるでしょうか。
 なお、本店や寄宿舎等の建物は生産等設備に該当せず、同税制の適用はないと聞きましたが、A社の本社ビルには、役員室及び総務・経理部門のほか、営業部門及び設計・工事管理部門等を含む社内の全部門が配置されています。

【回答】

1 自家発電用としての太陽光発電設備の資産区分については、使用形態に応じ、次の3つの取扱いに分かれるものと考えられます。
(1)まず、太陽光発電設備が、工場等における製造工程の動力用の発電装置として使用される場合には、「機械及び装置」に該当し、その耐用年数については、その設備が供される事業から生ずる最終製品(電気)を専ら用いて他の最終製品が生産される場合には、当該最終製品(電気)に係る設備ではなく、当該他の最終製品に係る設備として、耐用年数省令別表第二の設備の種類の判定を行うこととなります(耐通1-4-5、国税庁質疑応答事例(法人税)《風力・太陽光発電システムの耐用年数について》)。
(2)また、太陽光発電設備が、主として電力会社への電気の供給すなわち売電を行うために設置されたものである場合には、一般に「機械及び装置」に分類されるものと考えられ、その耐用年数は、耐用年数省令別表第二の「31 電気業用設備」の「その他の設備」の「主として金属製のもの」の17年を適用するのが相当と考えられます。
(3)これに対して、太陽光発電設備が、主として店舗や事務所用の建物における消費電力を賄うために設置されたものであり、余剰電力が生じた場合にのみ売電を行うにすぎない場合には、建物附属設備の「電気設備」の「その他のもの」に該当し(耐通2-2-2)、耐用年数15年を適用するのが相当と考えられます。
2 A社が本社屋上に設置する本件発電設備は、A社における製造工程の動力用の発電装置として使用されるものではなく、本社ビルにおける消費電力を賄うために設置されるものであり、余剰電力が生じた場合にのみ売電するものということですが、これを前提とする場合には、上記 1の(3)のパターンに属するものとして建物附属設備の「電気設備」の「その他のもの」として耐用年数15年を適用すべきところと考えられます。
3 ところで、中小企業経営強化税制は、中小企業者等のうち中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた青色申告法人が、平成29年4月1日から令和3年3月31日までの指定期間内に、生産等設備を構成する経営力向上設備等で、その製作若しくは建設の後事業の用に供されたことのないものを取得等して、これを国内にある当該中小企業者等の営む指定事業(A社が営む建設業も該当します。)の用に供した場合には、その供した日を含む事業年度において、原則として、〔1〕特定経営力向上設備等の取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額の特別償却(即時償却)又は〔2〕その取得価額の7パーセント(中小企業者等のうち資本金の額又は出資金の額が3千万円以下の法人又は農業協同組合等の場合は10パーセント)相当額の税額控除との選択適用を認める制度です(措法42の12の4〔1〕〔2〕)。
  上記の「特定経営力向上設備」とは「機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びに政令で定めるソフトウエア」で中小企業等経営強化法13条4項に規定する経営力向上設備等に該当するもののうち、次の取得価額要件を満たすものをいいます(措法42の12の4〔1〕、措令27の12の4〔1〕〔2〕)。
 (1)機械及び装置・・・・・一台又は一基の取得価額が160万円以上のもの
 (2)工具、器具及び備品・・一台又は一基の取得価額が30万円以上のもの
 (3)建物附属設備・・・・・一の取得価額が60万円以上のもの
 (4)ソフトウエア・・・・・一の取得価額が70万円以上のもの
  なお、中小企業経営強化税制の適用に当たっては、適用法人が青色申告書を提出する中小企業者等であることに加えて、A類型(生産性が旧モデルに比べ年平均1パーセント以上向上する設備)については工業会からの証明書を、また、B類型(投資収益率が年平均5パーセント以上の投資計画に係る設備)については経済産業省による確認書を取得した後、これらを添付して中小企業等経営強化法13条1項の経営力向上計画の認定申請を行った上、申告に際して、その経営力向上計画の写し及び認定証の写しを添付する必要があります(措令27の12の4〔4〕、措規20の9〔2〕)。
4 そして注意すべき点として、平成31年度税制改正により、適用対象設備等の基礎となる経営力向上設備等のうち、機械及び装置並びに建物附属設備に該当する発電設備については、その発電設備により発電されることが見込まれる電気の量のうちに売電することが見込まれる電気の量の占める割合が2分の1を超えるものは、適用対象設備から除くこととされました(中小企業等経営強化法施行規則8〔2〕一表・二、平成31年3月経済産業省告示85号)。
  この改正は、中小企業者等が平成31年4月1日以後に受ける経営力向上計画の認定のうち同日以後に申請がされるものに係る経営力向上計画に記載された経営力向上設備等(機械及び装置並びに建物附属設備に限ります。)について適用し、中小企業者等が、同日前に受けた認定及び同日以後に受ける認定のうち同日前に申請がされたものに係る経営力向上計画に記載された経営力向上設備等については、従前どおりとされています(改正中小企業等経営強化法施行規則附則〔2〕)。
5 ところで、中小企業経営強化税制の適用対象となる経営力向上設備等は、「生産等設備を構成するもの」であることが前提となるところ、この生産等設備とは、例えば、製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗又は自動車整備業を営む法人の作業場のように、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動(以下これらを「生産等活動」といいます。)の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいうとされ、例えば、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは、これに該当しないこととされています(措通42の12の4-2)。
  この後段の取扱いは、本店の機能のみを有する建物や寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設等の資産は、経営統括、従業員の利便、従業員の確保といった目的のために通常用いられる資産であって、生産、販売、役務提供といった直接的な付加価値の生成や収益の稼得に関係するものというよりは、むしろ間接的に寄与する資産に該当するため、このような減価償却資産は、一般的に生産等設備に含まれないと解されています(平成29年6月30日付課法2-17ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の措通42の12の4-2に係る趣旨説明))。
  なお、一棟の建物が本店用と店舗用に供されている場合など、減価償却資産の一部が法人の生産等活動の用に直接供されているものについては、その全てが生産等設備として取り扱われます(措通42の12の4-2注)。
6 上記4について本件発電設備についてみると、平成31年4月1日以後に経営力向上計画の認定を受けることを前提とすると、本件発電設備による発電量のうち、売電量が2分の1を超える見込みである場合には、中小企業経営強化税制の適用対象となりませんが、売電量が発電量の2分の1以下と見込まれる場合には、一の取得価額が60万円以上の建物附属設備として、特定経営力向上設備に該当するものと考えられます。
  また、上記5に関しては、本件発電設備が設置される本社ビルが生産等設備に該当するか否かが問題となりますが、A社の本社ビルは、「本店の機能のみを有する建物」ではなく、営業部門や設計・工事管理部門等、生産等活動の用にも直接供されていることが認められ、したがって本社ビルの屋上に設置される本件発電設備は、生産等設備を構成する建物附属設備に該当するものと認めるのが相当と考えられます。
  したがいまして、本件発電設備については、生産性向上設備(A類型)としての証明書が得られる限り、中小企業経営強化税制の適用可能となり得るものと考えられます。

【関連情報】

《法令等》

耐用年数通達1-4-5
耐用年数通達2-2-2
租税特別措置法42条の12の4
租税特別措置法施行令27条の12の4
租税特別措置法施行規則20条の9
租税特別措置法通達42の12の4-2
中小企業等経営強化法施行規則8条
平成31年3月29日経済産業省告示85号

【収録日】

令和 1年 8月30日


 
注1: 当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
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