■農地等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(暦年課税)

1. 納税猶予の特例の概要
   農業の後継者が贈与を受けた一定の農地等((注1)参照)の価額に対応する贈与税額は、一定の要件の下に、その農地等の贈与者の死亡の日まで納税が猶予されます。(猶予される贈与税額を「農地等納税猶予税額」といいます。)
 この納税猶予の特例の適用を受けた農地等(「特例農地等」といいます。)は、受贈者が贈与者の死亡の際、贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税の対象とされ、その時に農地等納税猶予税額は免除されます。
 同様に受贈者が贈与者よりも先に死亡した場合にも、その農地等納税猶予税額は、受贈者の死亡のときに免除されます。
 なお、贈与者又は受贈者の死亡の日前に、この特例農地等について農業経営の廃止、譲渡、転用等の一定の事由が生じた場合には、その農地等納税猶予税額の全部又は一部の納税猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。
  (注1) 農地等とは、農地(特定市街化区域農地等に該当するもの及び農地法第32条第1項又は第33条第1項の規定による利用意向調査に係るもので、同法第36条第1項各号(次の(1)から(5)の場合をいいます。)に該当するとき(次の(1)から(5)の場合に該当することについて正当の事由があるときを除きます。)におけるその農地を除きます。)及び採草放牧地(特定市街化区域農地等に該当するものを除きます。)並びに準農地をいいます。
(1) 農地の所有者等から農業委員会に対し、その農地を耕作する意思がある旨の表明があった場合において、その表明があった日から起算して6か月を経過した日においても、その農地の農業上の利用の増進が図られていないとき
(2) 農地の所有者等から農業委員会に対し、その農地の所有権の移転又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転を行う意思がある旨の表明(農地法第35 条第1項の農地中間管理事業を利用する意思がある旨の表明又は同条第3項の農地所有者代理事業を利用する意思がある旨の表明を含みます。)があった場合において、その表明があった日から起算して6か月を経過した日においても、これらの権利の設定又は移転が行われないとき
(3) 農地の所有者等にその農地の農業上の利用を行う意思がないとき
(4) 利用意向調査を行った日から起算して6か月を経過した日においても、農地の所有者等から農業委員会に対し、その農地の農業上の利用の意向についての意思の表明がないとき
(5) 上記(1)から(4)までのほか、農業委員会が、農地について農業上の利用の増進が図られないことが確実であると認めたとき
(注2) 特定市街化区域農地等とは、都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地で、平成3年1月1日において首都圏、近畿圏及び中部圏の特定市(東京都の特別区を含みます。)の区域内に所在するもの(都市営農農地等に該当するものを除きます。)をいいます。
(注3) 都市営農農地等とは、都市計画法第8条第1項第14号に掲げる生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地で、平成3年1月1日において首都圏、近畿圏及び中部圏の特定市(東京都の特別区を含みます。)の区域内に所在するものをいいます。ただし、生産緑地法第10条又は同法第15条第1項の規定により買取りの申出がされたものを除きます。
(注4) 準農地とは、農用地区域内にある土地で農業振興地域整備計画において用途区分が農地や採草放牧地とされているもののうち、10年以内に農地や採草放牧地に開発して、農業の用に供するものをいいます。
 
2.適用要件
   この特例の適用が受けられるのは、次の要件のいずれにも該当する場合に限られます。
 (1)贈与者の要件
     贈与の日まで3年以上引き続いて農業経営を行っていた個人で次のいずれにも該当しない人であること
    贈与をした日の属する年(以下、「対象年」といいます。)の前年以前において、その農業の用に供していた農地を推定相続人に対し贈与している場合であって、その農地が相続時精算課税の適用を受けるものであるとき
    (注)過去の年分において、贈与者の推定相続人に農地を贈与し、その推定相続人が相続時精算課税の適用を受けている場合には、その贈与者の全ての推定相続人が納税猶予の特例を受けられないことになります。
    対象年において、今回の贈与以外に農地等を贈与している場合
    過去に農地等の贈与税の納税猶予の特例に係る一括贈与を行っている場合
 
 (2)受贈者の要件
     贈与者の推定相続人のうちの1人で、次に係る要件の全てに該当するものとして農業委員会等が証明した個人であること
    贈与を受けた日において、年齢が18歳以上であること
    贈与を受けた日まで引き続き3年以上農業に従事していたこと
    贈与を受けた後、速やかにその農地等によって農業経営を行うこと
    当該証明の時において効率的かつ安定的な農業経営の基準として農林水産大臣が定めるものを満たす農業経営を行っていること(平成28年4月1日以後に贈与により取得する農地等について、この特例の適用を受ける場合)
    (注)贈与を受けた農地等について、この特例を受ける場合には、その農地等については相続時精算課税の適用を受けることはできません。
 
 (3)特例の対象となる農地等の贈与  
     贈与者の農業の用に供している農地等のうち「農地の全部」、「採草放牧地の3分の2以上の面積のもの」及び「準農地の3分の2以上の面積のもの」について一括して贈与を受けること
    (注) 今回の贈与の前年以前に贈与者が贈与した採草放牧地又は準農地のうち相続時精算課税の特例の適用を受けたものがある場合は、一括して贈与しなければならない採草放牧地又は準農地の面積が上記と異なりますので、詳しくは、相続税・贈与税を専門とする税理士(TKC会員事務所)にご相談ください。
 
3. 申告の手続
   この特例の適用を受けようとする場合は、贈与税の申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、次の表に掲げる書類を添付して、その申告書を申告期間内に提出するとともに、農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。
 
  添 付 書 類
この特例の適用を受ける旨、特例の適用を受ける農地等の明細及び納税猶予税額の計算に関する明細を記載した書類(「農地等の贈与税の納税猶予税額の計算書」)
農地等の贈与者及び受贈者がこの特例の適用を受ける要件に該当している旨の農業委員会の証明書
受贈者が贈与者の推定相続人であることを証する書類(例えば、戸籍の抄本など)
農地等のうちに平成3年1月1日において首都圏、近畿圏及び中部圏の特定市(東京都の特別区を含みます。)の区域内に所在する農地又は採草放牧地がある場合には、その農地又は採草放牧地が都市営農農地等である旨又は市街地区域以外の区域に所在するものである旨の市長(区長)の証明書
準農地についてこの特例の適用を受ける場合には、その土地が準農地に該当する旨の市町村長の証明書
担保として提供しようとする財産の明細書その他担保の提供に関する書類
贈与の事実を証する書類(例えば、贈与契約書など)
贈与者が租税特別措置法施行令第40条の6第1項に規定する個人に該当する旨を明らかにする贈与者の書類で次に掲げる事項の記載のあるもの(「農地等の贈与に関する確認書」など)
(1) 贈与者が今回の贈与の前年以前にその農業の用に供していた農地をそのものの推定相続人に対し相続時精算課税の適用に係る贈与をしていないこと
(2) 今回の贈与の年中に今回の贈与以外の贈与により、農地及び採草放牧地並びに準農地を贈与していないこと
(3) 次に掲げる採草放牧地及び準農地の面積
  贈与者が今回贈与をした採草放牧地
  贈与者が今回の贈与の日までにその農業の用に供していた採草放牧地
  今回の贈与の前年以前に贈与者が贈与した採草放牧地のうち相続時精算課税の適用を受けるもの
  贈与者が今回贈与をした準農地
  贈与者が今回の贈与の日までに有していた準農地
  今回の贈与の前年以前に贈与者が贈与した準農地のうち相続時精算課税の適用を受けるもの
(4) イの面積が、ロの面積及びハの面積の合計の3分の2以上となること
(5) ニの面積が、ホの面積及びヘの面積の合計の3分の2以上となること
 
4.納税猶予期間中の手続
   この特例の適用を受けた人は、納税猶予の期限が確定するまでの間、贈与税の申告期限から3年ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項を記載した届出書(「継続届出書」といいます。)を提出しなければなりません。
  (注) 継続届出書の提出がないときは、原則として、その納税猶予は打ち切られ、農地等納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。
 
5.農地等納税猶予税額の納付
 イ 農地等納税猶予税額を納付しなければならない場合
   納税猶予を受けている相続税額は、次の表に掲げる場合に該当することとなったときは、その贈与税額の全部又は一部を納付しなければなりません。
 

特例農地等について、譲渡等があった場合
(注)譲渡等には、譲渡、贈与若しくは転用のほか、地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは賃借権の設定(農用地利用集積計画に基づくもの等で一定の要件を満たすものを除きます。)又はこれらの権利の消滅若しくは耕作の放棄(農地について農地法第36条第1項の規定による勧告(農地が農地中間管理事業の推進に関する法律第2条第3項に規定する農地中間管理事業の事業実施地域外に所在する場合には、農業委員会等から所轄税務署長に対し、農地が利用意向調査に係るものであって、農地法第36条第1項各号に該当する旨の通知をするときにおけるその通知をいいます。)があったことをいいます。)も含まれます。

贈与を受けた農地等に係る農業経営を廃止した場合

受贈者が贈与者の推定相続人に該当しないこととなった場合
継続届出書の提出がなかった場合
担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合
都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合
準農地について、この特例の適用を受けた場合で、申告期限後10年を経過する日までに、農業の用に供されていない準農地がある場合
 
 ロ 利子税
   上記イにより納付する贈与税額については、贈与税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間(日数)に応じ、年3.6%(平成21年12月5日前の期間については、6.6%)の割合で利子税がかかります。
 ただし、各年の特例基準割合(※)が7.3%に満たない場合には、その年中においては次の算式により計算した割合(0.1%未満の端数切捨て)になります。
 
 (算式)
 
3.6% ×

特例基準割合(※)
────────
7.3%

 
 
※特例基準割合
 各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合
 ハ 特例農地等を収用交換等により譲渡した場合の利子税の軽減の特例
   平成26年4月1日から平成33年3月31日までの間に、特例農地等について収用交換等による譲渡をした場合には、利子税の額が0(零)に軽減されます。
 なお、利子税の軽減の特例の適用を受けるためには、公共事業施行者の収用交換等による譲渡を受けたことを証する書類を添付した届出書を提出する必要があります。