■非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(暦年課税)

1. 特例の概要
    会社の後継者である受贈者(「経営承継受贈者」といいます。)が、贈与により先代経営者である贈与者から、その贈与者が保有する経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式又は出資(「非上場株式等」といいます。)の全部又は一定以上を取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限られます。)の価額に対応する贈与税額は、一定の要件の下に、その非上場株式等の贈与者の死亡の日まで納税が猶予されます。(猶予される贈与税額を「株式等納税猶予税額」といいます。)
 この納税猶予の特例の適用を受けた非上場株式等(「特例受贈非上場株式等」といいます。)は、贈与者の死亡の際、経営承継受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税の対象とされ、その時に株式等納税猶予税額は免除されます。
 同様に、経営承継受贈者が贈与者よりも先に死亡した場合にも、その株式等納税猶予税額は、経営承継受贈者の死亡の時に免除されます。
 また、上記以外にも、猶予継続贈与が行われた場合のほか、贈与税の申告期限後5年を経過した後に、一定の事由に該当した場合には、申請により、その株式等納税猶予税額の全部又は一部が免除されます。
 なお、贈与者又は経営承継受贈者の死亡の日前に、特例受贈非上場株式等を譲渡するなど一定の事由が生じた場合には、株式等納税猶予税額の全部又は一部について納税猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。
(注1) この特例の適用を受けるためには、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」といいます。)に基づき、会社が「経済産業大臣の認定」を受ける必要があります。
  (注2) 株式等納税猶予税額の全部又は一部が免除される場合とは、次の表のイからトのいずれかに該当した場合をいいます。なお、免除に際しては、イ又はロに該当した場合には、その該当することとなった日から6か月以内、ハ又はニに該当した場合には、後継者が特例受贈非上場株式等の贈与について贈与税の期限内申告書を提出した日から6か月以内、ホ又はヘに該当した場合には、その該当することとなった日から2か月以内、トに該当することとなった場合には、認可の決定があった日から2か月以内に一定の書類を税務署に提出する必要があります。
株式等納税猶予税額の全部又は一部が免除される場合
贈与者の死亡の時以前に経営承継受贈者が死亡した場合
贈与者が死亡した場合
贈与税の申告期限後5年以内に、経営承継受贈者がやむを得ない理由により承継会社の代表権を有しないこととなった場合において、特例受贈非上場株式等に係る会社の株式又は出資(「株式等」といいます。)を次の経営承継者等に贈与し、当該受贈者が当該株式等について贈与税の納税猶予の規定を適用した場合
贈与税の申告期限後5年を経過した後に、経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等に係る会社の株式等を次の経営承継者等に贈与し、当該受贈者が当該株式等について贈与税の納税猶予の規定を適用した場合
贈与税の申告期限後5年を経過した後に、次に掲げるいずれかに該当した場合
(1) 経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等に係る会社の株式又は出資(「株式等」といいます。)の全部を譲渡又は贈与(「譲渡等」といいます。)した場合(その経営承継受贈者の親族などその経営承継受贈者と租税特別措置法施行令第40条の8第11項に定める特別の関係のある者(「経営承継受贈者と特別の関係がある者」といいます。)以外の者のうち一人の者として一定の要件を満たす者に対して行う場合又は民事再生法若しくは会社更生法の規定による認可を受けた計画に基づき株式等を消却するために行う場合に限ります。)
(2) 特例受贈非上場株式等に係る会社が合併により消滅した場合で一定の場合
(3) 特例受贈非上場株式等に係る会社が株式交換等により他の会社の株式交換完全小会社等となった場合で一定の場合
贈与税の申告期限後5年を経過した後に、特例受贈非上場株式等に係る会社について破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合
贈与税の申告期限後5年を経過した後に、特例受贈非上場株式等に係る会社について民事再生法の規定による再生計画又は会社更生法の規定による更生計画の認可の決定(再生計画の認可の決定に準ずる一定の場合を含みます。)があった場合において、会社が有する資産について一定の評定が行われたとき
  (注1) 特例受贈非上場株式等のうちに猶予継続贈与により取得した特例受贈非上場株式等がある場合には、上記イ及びロの事由と異なりますので、詳しくは、相続税・贈与税を専門とする税理士(TKC会員事務所)にご相談ください。
  (注2) 上記ハの「やむを得ない理由により承継会社の代表権を有しないこととなった場合」における「やむを得ない理由」は、次のとおりです。
1)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳(障害等級が一級である者として記載されているものに限る)の交付を受けたこと
2)身体障害者福祉法の規定により身体障害者手帳(身体上の障害の程度が一級又は二級である者として記載されているものに限る)の交付を受けたこと
3)介護保険法の規定による要介護認定(要介護状態区分が要介護五に該当するものに限る)を受けたこと
4)上記1)から3)に掲げる事由に類すると認められること
   
2.適用要件
   この特例の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
 (1)贈与者の要件
   贈与者は、次のいずれにも該当する人であること
 
  要件

贈与前のいずれかの日において会社の代表権を有していたことがあること

贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者がその会社の総議決権数の50%超の議決権を有し、かつ、経営承継受贈者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
贈与者が贈与の直前に代表権を有していなかった場合には、上記ロのほか、代表権を有していた期間のいずれかの日において、上記ロと同様の保有状況にあったこと
贈与の時において会社の代表権を有していないこと
  (注1) 「代表権」には、制限が加えられたものを除きます(以下、(2)において同じです。)。
  (注2) 「贈与者と特別の関係がある者」とは、贈与者の親族などその贈与者と租税特別措置法施行令第40条の8第10項に定める特別の関係のある者をいいます。
  (注3) 「総議決権数」及び「議決権数」には、株主総会等において議決権を行使できる事項の一部について制限がある株式等の議決権数及び株主総会等において議決権を行使できる事項の一部について制限がある株主等が有する株式等の議決権数を含みます(以下、(2)において同じです。)。
 
 (2)経営承継受贈者の要件
   経営承継受贈者は、次のいずれにも該当する人であること
 
  要件
贈与の日において20歳以上であること
贈与の時において会社の代表権を有していること
贈与の時において、経営承継受贈者及び経営承継受贈者と特別の関係のある者がその会社の総議決権数の50%超の議決権を有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有していること
贈与の時から贈与税の申告書の提出期限(提出期限までに経営承継受贈者が死亡した場合には、その死亡の日)まで引き続き特例受贈非上場株式等の全てを保有していること
贈与の日まで引き続き3年以上、会社の役員であること
  (注1) 経営承継受贈者は、特例受贈非上場株式等に係る会社1社につき1人に限ります。
  (注2) 「会社の役員」とは、会社法第329条第1項に規定する役員又は業務を執行する社員をいいます。
 
 (3)会社の要件  
   特例の対象となる会社は、非上場会社で、次のいずれにも該当する会社であること
 
  要件
経済産業大臣の認定を受けていること
贈与の時において常時使用する従業員の数が1人以上であること
なお、特例の対象となる会社の特別関係会社(注1)が会社法第2条第2号に規定する外国会社に該当する場合(注2)には、常時使用する従業員の数が5人以上であること
資産保有型会社又は資産運用型会社(一定の要件を満たすものを除きます。)(注3)に該当しないこと
風俗営業会社(注4)に該当しないこと
贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度における総収入金額(注5)が零を超えていること(注6)
経営承継受贈者以外の者が会社法第108条第1項第8号に掲げる事項について定めのある種類株式を保有していないこと
中小企業者(注7)であること
贈与前3年以内に経営承継受贈者及び経営承継受贈者と特別の関係のある者から現物出資又は贈与により取得した資産がある場合において、贈与の時におけるその資産の価額(注8)の合計額が贈与の時における会社の資産の価額の合計額の70%以上でないこと
会社の特定特別関係会社(注9)が非上場会社に該当すること
会社の特定特別関係会社(注9)が風俗営業会社に該当しないこと
会社の特定特別関係会社(注9)が中小企業者であること
  (注1) 特別関係会社とは、租税特別措置法施行令第40条の8第6項に規定する会社をいいます。
  (注2) 会社又は会社との間に支配関係(会社が他の法人の発行済株式又は出資(他の法人が有する自己の株式等を除きます。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式等を直接又は間接に保有する関係として租税特別措置法施行令第40条の8第8項に定める関係をいいます。)がある法人がその特別関係会社の株式又は出資を有する場合に限ります。
  (注3) 資産保有型会社又は資産運用型会社とは、租税特別措置法第70条の7第2項第8号又は第9号に規定する会社をいい、有価証券、自ら使用していない不動産(不動産の一部について現に自ら使用していない場合には、自ら使用していない部分に限ります。)、現金・預貯金等(経営承継受贈者及び租税特別措置法施行令第40条の8第10項に定める経営承継受贈者と特別の関係がある者に対する貸付金、未収金及びその他これらに類する資産を含みます。)の特定の資産の保有割合が帳簿価額の総額の70%以上の会社やこれら特定の資産からの運用収入が総収入金額の75%以上の会社などをいいます。
 なお、資産保有型会社又は資産運用型会社のうち、次の1)から3)など一定の条件を満たすものは除かれます。 
1)贈与の日まで引き続き3年以上にわたり、商品の販売や資産の貸付け(経営承継受贈者及び租税特別措置法施行令第40条の8第10項に定める経営承継受贈者と特別の関係がある者に対する貸付けを除きます。)などの業務を行っていること
2)贈与の時において常時使用する従業員(経営承継受贈者及び経営承継受贈者と生計を一にする親族を除きます。以下「親族外従業員」といいます。)の数が5人以上であること
3)贈与の時において、その会社が2)の親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場等を所有し又は賃借していること
  (注4) 風俗営業会社とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業に該当する事業を営む会社をいいます。
  (注5) 総収入金額とは、会社の総収入金額のうち会社計算規則第88条第1項第4号に掲げる営業外収益及び同項第6号に掲げる特別利益以外のものをいいます。
  (注6) 贈与の日がその贈与の日の属する事業年度の末日である場合には、その贈与の日の属する事業年度及びその事業年度の直前における総収入金額が零を超える必要があります。
  (注7) 中小企業者とは、円滑化法第2条各号のいずれかに該当する会社をいいます。
  (注8) その会社が贈与の時において現物出資又は贈与により取得した資産を既に有していない場合には、その贈与の時に有したものとした時におけるその資産の価額をいいます。
  (注9) 特定特別関係会社とは、租税特別措置法施行令第40条の8第7項に規定する会社をいいます。
 
 (4)特例対象贈与の要件等
   この特例の適用を受けるには、下表のイに該当する場合には下表中の限度数(a)の全部、ロに該当する場合には下表中の限度数(c×2/3−b)以上の数の非上場株式等の贈与を受けていることが要件となります。
 なお、この特例の対象となる非上場株式等の数は、次のa、b、cの数を基に下表の区分の場合に応じた数が限度となります(持分会社の場合も下表に準じます。)。
   a:贈与者が贈与の直前に保有する非上場株式等の数  
   b:経営承継受贈者が贈与の直前に保有する非上場株式等の数
   c:贈与の時における会社の発行済株式等の総数
 
区分 特例の対象となる非上場株式等の限度数
a+b<c×2/3の場合 贈与者が贈与の直前に保有する非上場株式等の数(a)
a+b≧c×2/3の場合 発行済株式等の総数の3分の2から経営承継受贈者が贈与の直前に保有する非上場株式等の数を控除した数(c×2/3−b)
  (注1) 「非上場株式等」又は「発行済株式等」は、議決権に制限のないものに限ります。
  (注2) この特例の対象となる非上場株式等は、議決権に制限のないものに限ります。
  (注3) c×2/3の計算において1株(円)未満の端数がある場合には、その端数を切り上げます。
 
3. 申告の手続
   この特例の適用を受けるためには、贈与税の申告書に、「株式等納税猶予税額の計算書(贈与税)」、下表に掲げる書類及び担保として提供しようとする財産の明細書その他担保の提供に関する書類を添付して、その申告書を贈与税の申告書の提出期間内に提出することともに、株式等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保(特例受贈非上場株式等でなくても差し支えありません。)を提供する必要があります。
 
  提出書類
会社の株主名簿の写しなど、贈与の直前及び贈与の時における会社の全ての株主又は社員の氏名等及び住所等並びにこれらの者が有する株式等に係る議決権の数が確認できる書類等(その会社が証明したものに限ります。)
贈与の時における会社の定款の写し(会社法その他の法律の規定により定款の変更をしたものと見なされる事項がある場合には、当該事項を記載した書面を含みます。)
円滑化法施行規則第7条第4項の経済産業大臣の認定書の写し及び同条第2項の申請書の写し
外国会社又は租税特別措置法施行令第40条の8第11項に規定する法人の株式等を有する場合には、贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度(資産保有型会社又は資産運用型会社に該当する場合は、贈与の日の3年前の日の属する事業年度から贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度までの各事業年度)の貸借対照表及び損益計算書
  (注1) 特例受贈非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、株式等納税猶予税額及び利子税に見合う担保の提供があったものとみなされます。
  (注2) 非上場会社の株式を担保として提供する場合には、その株式の株券を法務局(供託所)に供託し、法務局(供託所)から交付を受けた「供託書正本」を税務署に提出します。なお、株券が発行されていない場合には、次に掲げる書類を提出することにより、株券を発行することなく非上場会社の株式を担保として提供できます。
株券が発行されていない場合の担保提供関係書類
・受贈者が所有する非上場株式についての質権設定の承諾書
・印鑑証明書(質権設定の承諾書に押印したもの)
※質権設定後に、会社法第149条第1項の書面を提出する必要があります。
 
4.納税猶予期間中の手続
   この特例の適用を受けた人は、株式等納税猶予税額の免除又は株式等納税猶予税額の全部について納税の猶予が打ち切られるまでの間、贈与税の申告期限後5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び会社の状況等に関する事項を記載した届出書(「継続届出書」といいます。)を所轄の税務署へ提出しなければなりません。
  (注) 継続届出書の提出がない場合には、この特例の適用が打ち切られ、株式等納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。
 
5.株式等納税猶予税額の納付
 (1)株式等納税猶予税額を納付しなければならない場合
   納税猶予を受けている贈与税は、次の表に掲げる場合などに該当することとなったときは、その贈与税額の全部又は一部を納付しなければなりません。
  (主な場合)
 

特例受贈非上場株式等について譲渡等があった場合

申告期限後5年以内に経営承継受贈者が代表者でなくなった場合(一定の場合を除きます。)

申告期限後5年以内の一定の基準日において雇用の8割を維持できなくなった場合(各基準日における常時使用従業員数の平均値で判定します。)
会社が資産保有型会社又は資産運用型管理会社(一定の要件を満たすものを除きます。)に該当した場合
担保の全部又は一部に変更があったことにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合
 なお、上記(1)3の事由により納付することとなったときは、一定の要件を満たす場合は、延納を選択することができます。
 
 (2)利子税
   上記(1)により納付する贈与税額については、贈与税の申告期限の翌日から納税猶予期限までの期間(日数)に応じ、年3.6%の割合で利子税がかかります。
 ただし、各年の特例基準割合(※)が年7.3%に満たない場合には、以下のとおりとなります。
 
 (算式)
 
3.6% ×

特例基準割合(※)
────────────
7.3%

 
 
※特例基準割合
 各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合
 なお、経営承継期間(贈与税の申告期限から5年間)経過後に、株式等納税猶予税額の全部又は一部を納付するときは、その経営承継期間中の利子税は、免除されます。