■非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例

1.特例のあらまし
 

 会社の後継者である相続人又は受遺者(「経営承継相続人等」といいます。)が、相続又は遺贈(「相続等」といいます。)により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式又は出資(「非上場株式等」といいます。)を被相続人から取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限られます。)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます(猶予される相続税額を「株式等納税猶予税額」といいます。)。
 この株式等納税猶予税額は、租税特別措置法第70条の7の2第16項又は第17項に掲げる場合に該当したときには、その全部又は一部が免除されます。
 また、相続時精算課税に係る贈与によって取得した非上場株式等については、原則として、次の2の(5)の場合を除き、この特例の適用を受けることはできません。

   
 

(株式等納税猶予税額の全部又は一部が免除される主な場合)

 
経営承継相続人等が死亡した場合

相続税の申告期限後5年以内に、経営承継相続人等がやむを得ない理由により承継会社の代表権を有しないこととなった場合において、この特例の適用を受けた非上場株式等(「特例非上場株式等」といいます。)に係る会社の株式又は出資(「株式等」といいます。)を次の経営承継者等に贈与し、当該受贈者が当該株式等について贈与税の納税猶予の規定を適用した場合

相続税の申告期限後5年を経過した後に、経営承継相続人等が特例非上場株式等を租税特別措置法第70条の7の2第16項第2号の規定に基づき会社の後継者に贈与した場合

相続税の申告期限後5年を経過した後に、次に掲げるいずれかに該当した場合
経営承継相続人等が特例非上場株式等に係る会社の株式等の全部を譲渡又は贈与(「譲渡等」といいます。)した場合(その経営承継相続人等と特別の関係がある者以外の一定の者に対して行う場合や民事再生法又は会社更生法の規定による認可を受けた計画に基づき株式等を消却するために行う場合に限ります。)
特例非上場株式等に係る会社が合併により消滅した場合で一定の場合
特例非上場株式等に係る会社が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合で一定の場合
相続税の申告期限後5年を経過した後に、特例非上場株式等に係る会社について破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合
 
(注1) 免除に際しては、1、2又は3に該当することとなった日から6か月以内、4又は5のいずれかに該当することとなった日から2か月以内に一定の書類を税務署に提出する必要があります。
(注2) 上記2の「やむを得ない理由により承継会社の代表権を有しないこととなった場合」における「やむを得ない理由」は、次のとおりです。
  1) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳(障害等級が一級である者として記載されているものに限る)の交付を受けたこと
  2) 身体障害者福祉法の規定により身体障害者手帳(身体上の障害の程度が一級又は二級である者として記載されているものに限る)の交付を受けたこと
  3) 介護保険法の規定による要介護認定(要介護状態区分が要介護五に該当するものに限る)を受けたこと
  4) 上記1)から3)に掲げる事由に類すると認められること
(注3) 「経営承継相続人等と特別の関係がある者」とは、経営承継相続人等の親族などその経営承継相続人等と租税特別措置法施行令第40条の8の2第12項に定める特別の関係がある者をいいます(以下、次の2の(2)及び(3)において同じです。)。
 
 また、免除されるまでに、特例非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、株式等納税猶予税額の全部又は一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。
(注) この特例の適用を受けるためには、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「円滑化法」といいます。)に基づき、会社が「経済産業大臣の認定」を受ける必要があります。なお、「経済産業大臣の認定」を受けるためには、原則として、相続開始後8か月以内にその申請を行う必要があります。
   
2.特例を受けるための要件
 

 この特例の適用を受けるためには、次の要件などを満たす必要があります。

 
(1) 被相続人の要件
 

 被相続人は、次のいずれにも該当する人であること

 
相続開始前のいずれかの日において会社の代表権を有していたことがあること
相続開始の直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者がその会社の総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、経営承継相続人等を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
被相続人が相続開始の直前に代表権を有していなかった場合には、上記2のほか、代表権を有していた期間のいずれかの日において、2と同様の保有状況であったこと
  (注1) 「代表権」には、制限が加えられたものを除きます(以下、(2)において同じです。)。
  (注2) 「被相続人と特別の関係がある者」とは、被相続人の親族などその被相続人と租税特別措置法施行令第40条の8の2第12項に定める特別の関係がある者をいいます。
  (注3) 「総議決権数」及び「議決権数」には、株主総会において議決権を行使できる事項の全部について制限された株式の数などは含まれません(以下、(2)及び(3)において同じです。)。
 
(2) 経営承継相続人等の要件
   経営承継相続人等は、次のいずれにも該当する人であること
 
相続開始の直前において会社の役員であったこと(被相続人が60歳未満で死亡した場合等を除きます。)
相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有していること
相続開始の時において、経営承継相続人等及び経営承継相続人等と特別の関係がある者がその会社の総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で経営承継相続人等が最も多くの議決権数を保有していたこと
相続開始の時から申告期限(申告期限までに経営承継相続人等が死亡した場合は、その死亡の日)まで引き続き特例非上場株式等の全てを保有していること
  (注) 経営承継相続人等は特例非上場株式等に係る会社1社につき1人に限ります。
 
(3) 会社の要件
   特例の対象となる会社は、非上場会社で、次のいずれにも該当する会社であること
 
経済産業大臣の認定を受けていること
相続開始の時において常時使用する従業員の数が1人以上であること
なお、特例の対象となる会社の特別関係会社(注1)が会社法第2条第2号に規定する外国会社に該当する場合(注2)には、常時使用する従業員の数が5人以上であること
資産管理会社(注3)に該当しないこと
風俗営業会社(注4)に該当しないこと
相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度における総収入金額が零を超えること(注5)
経営承継相続人等以外の者が会社法第108条第1項第8号に掲げる事項について定めのある種類株式を保有していないこと
中小企業者(注6)であること
相続開始前3年以内に経営承継相続人等及び経営承継相続人等と特別の関係がある者から現物出資又は贈与により取得をした資産がある場合において、相続開始の時におけるその資産の価額(注7)の合計額が会社の資産の価額の合計額の70%以上とならないこと
会社の特定特別関係会社(注8)が非上場会社に該当すること
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会社の特定特別関係会社(注8)が風俗営業会社に該当しないこと
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会社の特定特別関係会社(注8)が中小企業者であること
 
(注1) 「特別関係会社」とは、租税特別措置法施行令第40条の8の2第8項に規定する会社をいい、特例非上場株式等に係る会社、その会社の代表権を有する者やその会社の代表権を有する者の親族などが、総議決権数の50%を超える議決権数を保有する場合の会社(会社法第2条第2号に規定する外国会社を含みます。)をいいます。
(注2) 会社又は会社との間に支配関係(会社が他の法人の発行済株式又は出資(他の法人が有する自己の株式等を除きます。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式等を直接又は間接に保有する関係として租税特別措置法施行令第40条の8第8項に定める関係をいいます。)がある法人がその特別関係会社の株式又は出資を有する場合に限ります。
(注3) 「資産管理会社」とは、租税特別措置法第70条の7第2項第8号又は第9号に規定する会社をいい、有価証券、自ら使用していない不動産(不動産の一部について現に自ら使用していない場合には、自ら使用していない部分に限ります。)、現金・預貯金等(経営承継相続人等及び租税特別措置法施行令第40条の8の2第12項に定める経営承継相続人等と特別の関係がある者に対する貸付金、未収金及びその他これらに類する資産を含みます。)の特定の資産の保有割合が会社の貸借対照表に計上されている帳簿価額の総額の70%以上の会社やこれら特定の資産からの運用収入が総収入金額の75%以上の会社などをいいます。
 なお、次のイからハなど一定の要件を満たす場合には、資産管理会社に該当しません(以下、5.において同じです。)。
イ. 相続開始の日まで引き続き3年以上にわたり、商品の販売や資産の貸付け(経営承継受贈者及び経営承継受贈者の同族関係者に対するものを除きます。)などの業務を行っていること
ロ. 相続開始の時において常時使用する従業員(経営承継受贈者及び経営承継受贈者と生計を一にする親族を除きます。以下「親族外従業員」といいます。)の数が5人以上であること
ハ. 相続開始の時においてその会社がロ.の親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場等を所有し又は賃借していること
(注4) 「風俗営業会社」とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業に該当する事業を営む会社をいいます。
(注5) 相続開始の日がその相続開始の日の属する事業年度の末日である場合には、その相続開始の日の属する事業年度及びその事業年度の直前における総収入金額が零を超える必要があります。
(注6) 「中小企業者」とは、円滑化法第2条各号のいずれかに該当する会社をいいます。
(注7) その会社が相続開始の時において現物出資又は贈与により取得した資産を既に有していない場合には、その相続開始の時に有していたものとしたときにおけるその資産の価額をいいます。
(注8) 「特定特別関係会社」とは、租税特別措置法施行令第40条の8の2第9項に規定する会社をいい、特例非上場株式等に係る会社、その会社の代表権を有する者やその会社の代表権を有する者と生計を一にする親族などが、総議決権数の50%を超える議決権数を保有する場合の会社(会社法第2条第2号に規定する外国会社を含みます。)をいいます。
 
(4) この特例の対象となる非上場株式等の数
 

 この特例の対象となる非上場株式等の数は、次のa、b、cの数を基に下表の区分の場合に応じた数が限度となります(持分会社の場合も下表に準じます。)。

 「a」・・・ 経営承継相続人等が相続等により取得した非上場株式等の数
 「b」・・・ 経営承継相続人等が相続開始前から保有する非上場株式等の数
 「c」・・・ 相続開始の時における会社の発行済株式等の総数
区分
特例の対象となる非上場株式等の限度数
a+b < c×2/3の場合

経営承継相続人等が相続等により取得した非上場株式等の数(a)

a+b ≧ c×2/3の場合
発行済株式等の総数の3分の2から経営承継相続人等が相続開始前から保有する非上場株式等の数を控除した数(c×2/3−b)
(注1) 「非上場株式等」又は「発行済株式等」は、議決権に制限のないものに限ります。
(注2) この特例の対象となる非上場株式等は、議決権に制限のないものに限ります。
(注3) c×2/3の計算において1株(円)未満の端数がある場合には、その端数を切り上げます。
 
(5) 過去に特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等の贈与を受けている場合
 

 相続人等が被相続人から過去に「特定受贈同族会社株式等」又は「特定同族株式等」の贈与を受けている場合で、平成22年3月31日までに「特定受贈同族会社株式等・特定同族株式等についての相続税の納税猶予の適用に関する届出書」を相続人等の住所地を所轄する税務署に提出しているなど一定の要件を満たすときには、これらの株式等については、その被相続人に係る相続税の申告に際し、一定の数又は金額を限度として、この納税猶予の特例の適用を選択することができます。
 なお、「特定受贈同族会社株式等」又は「特定同族株式等」の全部についてこの納税猶予の特例の適用を受けない場合には、これらの株式等だけでなく、相続又は遺贈により取得したこれらの株式等に係る会社と同一の会社の株式等についてもこの特例の適用を受けることはできませんので、ご注意ください。

(注1) 「特定受贈同族会社株式等」とは、贈与を受けた人(相続人等)が税務署に提出した「特定受贈同族会社株式等に係る届出書(平成21年改正前の租税特別措置法第69条の5第10項)」に記載された株式等をいいます。
(注2) 「特定同族株式等」とは、次のイ及びロの株式等をいいます。
平成20年12月31日以前に相続時精算課税に係る贈与により取得した株式等(贈与税の申告書に平成21年改正前の租税特別措置法第70条の3の3又は第70条の3の4の規定の適用を受ける旨の記載があるものに限ります。)
平成21年改正前の租税特別措置法第70条の3の3第3項第1号ロに規定する選択年中におけるイの株式等の最初の相続時精算課税に係る贈与の日から同項第4号に規定する確認日(原則として、選択年の翌年3月15日から4年を経過する日をいいます。)までに被相続人から贈与により取得したイの株式等に係る会社と同一の会社の株式等(イの株式等を除きます。)
(注3) この納税猶予の特例の適用を受ける人を除き、「特定受贈同族会社株式等」について、この納税猶予の特例の適用を選択しない場合には、原則として、従前どおり、「特定受贈同族会社株式等に係る特定事業用資産の特例」の規定を適用することができます。
   
3.申告の手続
 

 この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書を期限内に提出するとともに株式等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保(特例非上場株式等でなくても差し支えありません。)を提供する必要があります。

(注1) 特例非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、株式等納税猶予税額及び利子税に見合う担保の提供があったものとみなされます。
(注2) 非上場会社の株式を担保として提供する場合には、その株式の株券を法務局(供託所)に供託し、法務局(供託所)から交付を受けた「供託書正本」を税務署に提供します。
なお、株券が発行されていない場合には、会社に対して株券の発行を請求する必要があります(一定の書類を提出することにより、株券を発行することなく株式を担保として提供できます。)。
   
4.納税猶予期間中の手続
 

 この特例の適用を受けている経営承継相続人等は、株式等納税猶予税額の免除又は納税猶予税額の全部について納税の猶予が打ち切られるまでの間、相続税の申告期限後5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに、引き続いてこの特例を受ける旨及び特例非上場株式等に係る会社の状況等に関する事項を記載した届出書(この届出書を「継続届出書」といいます。)を提出しなければなりません。
 なお、継続届出書の提出がない場合には、原則として、この特例の適用が打ち切られ、株式等納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。

   
5.株式等納税猶予税額の納付
  (1) 株式等納税猶予税額を納付しなければならない場合
    納税猶予を受けている相続税は、次の表に掲げる場合などに該当することとなったときは、その相続税額の全部又は一部を納付しなければなりません。
    (主な場合)
   
1)

特例非上場株式等について譲渡等があった場合

2)

申告期限後5年以内に経営承継相続人等が代表者でなくなった場合

3)
申告期限後5年以内の一定の基準日において雇用の8割を維持できなくなった場合(各基準日における常時使用従業員数の平均値で判定します。)
4)
会社が資産管理会社に該当した場合
5)
担保の全部又は一部に変更があったことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合
     なお、上記(1)の3)の事由により納付することとなったときは、一定の要件を満たす場合は、延納又は物納を選択することができます。
     
  (2)利子税
    上記(1)により納付する相続税額については、相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間(日数)に応じ、年3.6%の割合で利子税がかかります。
ただし、各年の特例基準割合(※)が7.3%に満たない場合は、以下のとおりとなります。
     (算式)
     
3.6%
×
特例基準割合(※)
──────────
7.3%
(注)0.1%未満の端数は切り捨て
      (例)特例基準割合(※)が4.3%である場合・・・年2.1%
     (注)特例基準割合(※)が変動すると利子税の割合も変動します。
   
※特例基準割合
  各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合
     なお、経営承継期間(相続税の申告期限から5年間)経過後に、株式等納税猶予税額の全部又は一部を納付するときは、その経営承継期間中の利子税は、免除されます。