■農地等についての相続税の納税猶予及び免除の特例

1.特例のあらまし
 

 農業を営んでいた被相続人又は特定貸付けを行っていた被相続人から一定の相続人(農業相続人といいます。)が一定の農地等を相続や遺贈によって取得して農業を営む場合又は特定貸付けを行う場合には、一定の要件の下で、その取得した農地等の価額のうち農業投資価格(農業投資価格は国税庁ホームページの「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で確認することができます。)による価額を超える部分に対応する相続税額は、その取得した農地等について相続人が農業の継続又は特定貸付けを行っている場合に限り、その納税が猶予されます(猶予される相続税額を「農地等納税猶予税額」といいます。)。
 この農地等納税猶予税額は、次のいずれかに該当することとなったときに免除されます。
 なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した農地等については、この特例の適用を受けることはできません。

 
 

 ◎ 免除される場合

 
特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合

特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等(この特例の適用を受ける農地等をいいます。)の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき農業の後継者に生前一括贈与した場合
※ 特定貸付けを行っていない相続人に限ります。

特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限ります。)
※ 特例農地等のうちに都市営農農地等を有しない相続人に限ります。
 
(注1)  「都市営農農地等」とは、都市計画法第8条第1項第14号に掲げる生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地で、平成3年1月1日において首都圏、近畿圏及び中部圏の特定市(東京都の特別区を含みます。)の区域内に所在し、生産緑地法第10条又は同法第15条第1項の規定による買取りの申出がなされていないものをいいます。
(注2)  「市街化区域内農地等」とは、都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地をいいます。
 
 

 また、上記のイからハまでのいずれかの場合に該当する前に、特例農地等について農業経営の廃止、譲渡、転用などの一定の事由が生じた場合には、農地等納税猶予税額の全部又は一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません特例農地等の買換えや収用交換等により譲渡した場合などは納税の猶予の継続や利子税の軽減の特例がありますので、詳しくは、相続税・贈与税を専門とする税理士(TKC会員事務所)にご相談ください。)。

 
2.特例を受けるための要件
 

 この特例の適用が受けられるのは、次の要件に該当する場合です。

 
(1) 被相続人の要件
   被相続人は、次のイからニのいずれかに該当する人であること
 
死亡の日まで農業を営んでいた人
農地等の生前一括贈与をした人
※ 死亡の日まで受贈者が贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていた場合に限られます。
死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人
死亡の日まで特定貸付けを行っていた人
 
(注) 「特定貸付け」とは、市街化区域内農地等以外の農地又は採草放牧地について行う地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権(賃借権等といいます。)の設定(民法第269条の2第1項の地上権の設定を除きます。)による、次のイからハまでのいずれかの貸付けをいいます。
   農業経営基盤強化促進法第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のうち同項第1号に掲げる農地売買等事業のために行われた貸付け
  被相続人が行っていた上記(注)イの貸付けには、次の貸付けが含まれます。
   農地法等の一部を改正する法律(平成21年法律第57号)(改正農地法といいます。)による改正前の農業経営基盤強化促進法(旧基盤強化法といいます。)第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のために都道府県農地保有合理化法人(同法第7条第1項の承認を受けた法人(同法第5条第2項第4号ロの規定により農業経営基盤強化促進基本方針に定められた者に限ります。)をいいます。)に対し行っていた貸付け((注)ハの※印に該当するものを除きます。)
   旧基盤強化法第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のために旧市町村農地保有合理化法人(同法第7条第1項の承認を受けた法人(同法第6条第3項の規定により農業経営基盤強化促進基本構想に定められた者に限ります。)をいいます。)に対し行っていた貸付けのうち、旧市町村農地保有合理化法人が、改正農地法附則第12条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされている旧農地売買等事業(旧基盤強化法第4条第2項第1号に規定する農地売買等事業をいいます。)を実施している場合におけるその貸付け((注)ハの※印に該当するものを除きます。)
   農業経営基盤強化促進法第4条第3項に規定する農地利用集積円滑化事業のうち同項第1号イ又は同項第2号に掲げる農地所有者代理事業若しくは同項第1号ロに掲げる農地売買等事業のために行われた貸付け
  被相続人が行っていた上記(注)ロの貸付けには、旧基盤強化法第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のために旧市町村農地保有合理化法人に対し行っていた貸付けのうち、旧市町村農地保有合理化法人が、農業経営基盤強化促進法第11条の9第1項の規定により農地利用集積円滑化事業規程(同項に規定する農地利用集積円滑化事業規程をいいます。)の承認を受けている場合におけるその貸付け((注)ハの※印に該当するものを除きます。)が含まれます。
   農業経営基盤強化促進法第20条に規定する農用地利用集積計画の定めるところにより行われた貸付け
  被相続人が行っていた上記(注)ハの貸付けには、旧基盤強化法第20条に規定する農用地利用集積計画の定めるところにより行っていた貸付けが含まれます。
 
 
(2) 農業相続人の要件
   農業相続人は、被相続人の相続人で、次のイからニのいずれかに該当する人であること
 
相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人
農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるためその推定相続人の1人に対し農地等について使用貸借による権利を設定して、農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人
※ 贈与者の死亡の日後も引き続いてその推定相続人が農業経営を行うものに限ります。
農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受像者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人
※ 贈与者の死亡後も引き続いて賃借権等の設定による貸付けを行うものに限ります。
相続税の申告期限までに特定貸付けを行った人(農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者である場合には、相続税の申告期限において特定貸付けを行っている人)
 
 
(3) 特例農地等の要件
   特例の対象となる農地等は、次のイからホまでのいずれかに該当するものであり、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載したものであること
 
被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割された農地等
被相続人が特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地で相続税の申告期限までに遺産分割された農地又は採草放牧地
被相続人が営農困難時貸付けを行っていた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割された農地等
被相続人から生前一括贈与に取得した農地等で、被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていた農地等
相続や遺贈によって財産を取得した人が相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていた農地等
 
(注1) 「農地等」とは、農地(特定市街化区域農地等に該当するもの及び農地法第32条第1項又は第33条第1項の規定による利用意向調査に係るもので、同法第36条第1項各号(次の(1)から(5)の場合をいいます。)に該当するとき(次の(1)から(5)の場合に該当することについて正当の事由があるときを除きます。)におけるその農地を除きます。)及び採草放牧地(特定市街化区域農地等に該当するものを除きます。)、準農地又は一時的道路用地等をいいます。
(1) 農地の所有者等から農業委員会に対し、その農地を耕作する意思がある旨の表明があった場合において、その表明があった日から起算して6か月を経過した日においても、その農地の農業上の利用の増進が図られていないとき
(2) 農地の所有者等から農業委員会に対し、その農地の所有権の移転又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転を行う意思がある旨の表明(農地法第35条第1項の農地中間管理事業を利用する意思がある旨の表明又は同条第3項の農地所有者代理事業を利用する意思がある旨の表明を含みます。)があった場合において、その表明があった日から起算して6か月を経過した日においても、これらの権利の設定又は移転が行われないとき
(3) 農地の所有者等にその農地の農業上の利用を行う意思がないとき
(4) 利用意向調査を行った日から起算して6か月を経過した日においても、農地の所有者等から農業委員会に対し、その農地の農業上の利用の意向についての意思の表明がないとき
(5) 上記(1)から(4)までのほか、農業委員会が、農地について農業上の利用の増進が図られないことが確実であると認めたとき
(注2) 「特定市街化区域農地等」とは、都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地で、平成3年1月1日において首都圏、近畿圏及び中部圏の特定市(東京都の特別区を含みます。)の区域内に所在し、都市営農農地等に該当しないものをいいます。
(注3) 「都市営農農地等」とは、こちらのものをいいます。
(注4) 「準農地」とは、農地区域内にある土地で農業振興地域整備計画において用途区分が農地や採草放牧地とされているものであって、開発して農地又は採草放牧地としてその農業相続人の農業の用に供することが適当であるものとして市町村長が証明したものをいいます。
(注5) 「一時的道路用地等」とは、一定の公共の事業の用に供するために特例農地等をその公共事業のために一時的に転用しているものとして主務大臣が認定した用地をいいます。
(注6) 「営農困難時貸付け」とは、納税猶予の適用を受けている人が、障害や疾病などの事由で特例の適用を受けている農地等での営農が困難な状態となったために、その農地等について賃借権等の設定による一定の貸付けを行った場合のその貸付けをいいます。
 
 
(4) 申告の手続
   この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書と必要書類を期限内に提出するとともに農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保(特例農地等でなくても差し支えありません。)を提供する必要があります。
 なお、特定貸付けを行った農地又は採草放牧地につき、この特例の適用を受けるためには、原則として相続税の申告書に「特定貸付けに関する届出書」を添付して提出する必要があります。
 
 
(5) 納税猶予期間中の手続
   この特例の適用を受けている農業相続人は、農地等納税猶予税額の全部について免除されるまで又は農地等納税猶予税額の全部について納税の猶予が打ち切られるまでの間、相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する一定事項を記載した届出書(この届出書を「継続届出書」といいます。)を提出しなければなりません。
 なお、継続届出書の提出がない場合には、この特例の適用が打ち切られ、農地等納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。
 
 
(6) 農地等納税猶予税額の納付
 
農地等納税猶予税額を納付しなければならない場合
   納税猶予を受けている相続税額は、次の表に掲げる場合に該当することとなったときは、その相続税額の全部又は一部を納付しなければなりません。
 
特例農地等について、譲渡等があった場合
 
(注) 譲渡等には、譲渡、贈与若しくは転用のほか、地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは賃借権の設定(農用地利用集積計画に基づくもの等で一定の要件を満たすものを除きます。)若しくはこれらの権利の消滅又は耕作の放棄(農地について農地法第36条第1項の規定による勧告(農地が農地中間管理事業の推進に関する法律第2条第3項に規定する農地中間管理事業の事業実施地域外に所在する場合には、農業委員会等から所轄税務署長に対し、農地が利用意向調査に係るものであって、農地法第36条第1項各号に該当する旨の通知をするときにおけるその通知をいいます。)があったことをいいます。)も含まれます。
 
特例農地等に係る農業経営を廃止した場合
継続届出書の提出がなかった場合
担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかった場合
都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合
準農地について、この特例の適用を受けた場合で、申告期限後10年を経過する日までに、農業の用に供されていない準農地がある場合
 
利子税
   上記イにより納付する相続税額については、相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間(日数)に応じ、次の区分によりそれぞれに掲げる割合で利子税がかかります。
 
1) 特例農地等のうちに相続又は遺贈により取得をした日において都市営農農地等であるものを有する農業相続人・・・年3.6%
2) 特例農地等のうちに相続又は遺贈により取得をした日において都市営農農地等であるものを有しない農業相続人
  特例農地等のうち相続又は遺贈により取得をした日において市街化区域内農地等であるものに対応する部分の金額を基礎とする部分・・・年6.6%
  A以外の部分・・・年3.6%
ただし、各年の特例基準割合(※)が7.3%に満たない場合は、以下のとおりとなります。
(算式)
 
6.6%又は3.6%
×
特例基準割合(※)
──────────
7.3%
(注)0.1%未満の端数は切り捨て
(例)特例基準割合(※)が4.3%である場合
  上記1)及び2)B 割合が年3.6%の場合・・・2.1%
  上記2)A      割合が年6.6%の場合・・・3.8%
  (注)特例基準割合(※)が変動すると利子税の割合も変動します。
 
※特例基準割合
  各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合
 
特例農地等を収用交換等により譲渡した場合の利子税の軽減
   平成26年4月1日から平成33年3月31日までの間に、特例農地等について収用交換等による譲渡をした場合には、利子税の額が0(零)に軽減されます。
 なお、利子税の軽減の特例の適用を受けるためには、公共事業施行者の収用交換等による譲渡を受けたことを証する書類を添付した届出書を提出する必要があります。