新会社法のポイント 新しい会社法のポイントと中小企業の対応策

Q:当社は有限会社ですが、今後どうなるのでしょうか?

有限会社法が新会社法に統合され、廃止されました。
これにより新しく有限会社を設立することはできませんが、既に存在する有限会社については経過措置が定められ、そのまま存続できることとなりました。

具体的には1) 経過措置により有限会社として存続する(特例有限会社)か、2) 新株式会社に移行するかの選択となります。

有限会社フロー

(注)既存の有限会社は法律上「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第2条により「株式会社」として新会社法に取り込まれます。

ここがポイント:会社の今後を見据えた上での選択を
  1)有限会社として存続する 2)新株式会社に移行する(注1)
手続 何もしない 定款変更等した上で登記が必要
商号 有限会社のまま変更なし 株式会社に変更する
機関 取締役1人以上 最低、取締役1人以上(注2)
役員任期 取締役、監査役とも任期なし 取締役2年(注3) 監査役4年(注3)
社員(注4)の責任 有限責任(注5) 有限責任(注5)
決算公告 義務なし 義務あり
展開 現状維持 機関設計が自由にできる 将来の企業実態に合わせて対応が可能
その他 登記費用等が発生する(注6)

(注1) 移行についての経過措置が予定されています。
(注2) さまざまな設計が可能です。
(注3) 株式譲渡制限会社は定款により最大10年まで可能。
(注4) 社員とは出資者(株主等)を指します。
(注5) 有限責任とは出資者が出資範囲内でのみ責任を負うことをいいます。
(注6) 特例有限会社から株式会社に移行する場合、特例有限会社の解散登記、株式会社の設立登記の手続きが必要です。

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Q:当社は株式会社ですが、何もしなくてもよいのでしょうか?

今回の改正では株式会社については、有限会社のように移行手続との選択肢はありません。何も手続きをしなくても問題ありませんが、新会社法のもと会社の実態、今後の展開に応じた見直しが必要となるケースが考えられます。

株式会社フロー

新会社法では1)取締役の数、2)取締役の任期、3)会計参与の設置等、会社の実態、今後の展開に応じた自由な機関設計が可能となります。

見直しが必要となるケース

ケース1(名目上の役員がいる場合)

役員の数が最低でも取締役3名監査役1名必要だったため、家族や知り合いに頼んで取締役や監査役に就任してもらっている

実際経営に参画している役員のみ就任する

ケース2(役員の変更がない場合)

取締役の任期が2年と規定されているため、重任登記の手続きを形式的にしている

任期の再検討をし、延長をする(注)

ケース3(決算書の信頼性を高めたい)

取引先や金融機関に対し、決算書の信頼性を今よりさらに高めたい

会計参与制度を採用する

(注)株式譲渡制限会社の場合に限ります。

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Q:合名会社、合資会社はどうなりますか?合名会社が新設されたそうですが、それはどのような会社ですか?

合名会社、合資会社は株式会社と同様、従来通り設立、存続できます。
合同会社は新会社法で新設された会社です。米国のLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー:有限責任会社)にならって導入され日本版LLCと呼ばれています。合同会社は対外的には社員(出資者)の有限責任が認められるので株式会社と共通しますが、内部的には取締役、監査役の設置が不要、利益配分を自由に決める事ができる等、合名会社、合資会社と共通しています。

従来、商法においてそれぞれ規定していましたが、新会社法では、「合名会社・合資会社・合同会社」という3つの会社形態については
1) 社員(出資者)自らが会社に業務執行に当たることを予定している
2) 会社の内部関係は民法の組合に似た規律がなされている
などが共通していることから「持分会社」として1つのグループにまとめられました。

では3つの会社形態の違いは何かというと、社員(出資者)が会社債権者に対してどのような責任を負うかという点です。

会社形態 会社債権者に対する社員(出資者)の責任
合名会社 全員が無限責任社員
合資会社 無限責任社員と有限責任社員が混在
合同会社 全員が有限責任社員

合名会社、合資会社、合同会社における社員(出資者)の責任

合名、合資、合同会社フロー

■合同会社(日本版LLC)とは?

合同会社の特徴は次のとおりです。

  1. 有限責任制を採用
  2. 出資額にかかわらず柔軟に利益などを配分可能
  3. 役員等の設置も不要
  4. 社員(出資者)の氏名または名称、出資の価格が登記事項とされない
  5. 会社の計算は株式会社と同じ 等

専門知識やノウハウを持った少数の出資者が集まり、その知識などを活用して自らが経営(業務執行)する場合に適している会社だと言えます。

なお、合名会社・合資会社・合同会社・株式会社の間で組織変更することもできます。

有限責任事業組合(日本版LLP)とは?

有限責任事業組合(LLP)制度は、平成17年8月1日に施行されました。「有限責任制」を採用し、出資額にかかわらず柔軟に利益などを分配できる「内部自治原則」が特徴です。法人ではなく、民法上の組合の一種と位置づけられ、事業活動上の制約もありますが、有限責任事業組合には課税されず、出資者に直接課税されるいわゆる「構成員課税」(パススルー課税)が採用されます。経済産業省・法務省は、有限責任事業組合は「ハイリスク・ハイリターン」の事業に適しているのに対し、合同会社は安定的な事業向きとしています。

提供:株式会社TKC出版

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