Q&A経営相談室
【知財戦略】
特許法等改正が中小企業に与える影響
 
Q:
 特許法などの一部が改正されたと聞きました。中小企業への影響についてポイントを教えてください。(製造業)
 
<回答者>弁理士 岩崎博孝

A:
 平成26年4月25日に成立した「特許法等の一部を改正する法律案」のポイントは4つあります。

 1つ目は特許異議申し立て制度が新たに設置されたこと。競合他社の特許権を認めさせたくないときは、今まで「特許無効審判」に頼るほかありませんでした。特許無効審判は、裁判をイメージすると分かりやすいと思いますが、当事者対立構造で、手続き的なハードルが高い制度です。今回新設された「特許異議申し立て」は、特許掲載公報発行日から6カ月と期間は限られますが、申立人が審理に参加する必要がない(基本的に特許庁と権利者との間で審理が行わる)ので、気軽に申し立てが可能です。競合他社の権利を定期的に監視して、事業の邪魔になりそうな特許が成立した場合に、より積極的に影響力を行使することが可能になったと言えます。

 2点目は一つの国際出願でまとめて複数国の意匠権を取得することが可能になること。特許や商標は、一つの国際出願を行って各国で権利を取得する制度(PCT、マドプロ)が存在していましたが、意匠ではそのような制度はありませんでした。今回、意匠も一つの国際出願を行うことで複数の外国で権利を取得する事が可能となります。出願する国の数にもよりますが、各国に直接出願する場合に比べ、相当な費用の削減効果が見込まれるでしょう。そもそも意匠は特許に比べ権利取得費用は低廉ですので、財務体制への影響を抑えつつ世界各国で権利取得することが一層容易になります。

音や色彩も商標に

 3つめは、文字や図形(ロゴマーク)だけでなく、「音」や「色彩」も新たに商標として権利を取得することが可能になること。「音」の商標とは、CMで流れる音楽(例えば久光製薬の「ヒ・サ・ミ・ツ♪」というメロディー)やパソコン起動時に流れる音などが該当します。「色彩」の商標とは、トンボ鉛筆の消しゴムの色彩や、ティファニー社の青色をイメージしていただければよいでしょう。商標は先願主義(早い者勝ち)ですから、昔から使用しているイメージカラーやメロディーがある場合、権利取得のチャンスが拡大することになります。

 最後は商工会、商工会議所やNPO法人でも地域団体商標を取得できるようになったこと。「地名+商品名」といった商標(例えば「大間まぐろ」や「草加せんべい」)は、従来からも地域団体商標として登録を受けることが可能でしたが、権利主体は事業協同組合に限定されていました。しかし今回の法改正で、商工会、商工会議所やNPO法人でも権利を取得することが可能となりました。企業単独での権利取得は従来通り不可能ですが、特定の地域や産業の活性化を目指して商工会やNPO法人の一員として活動されている中小企業にとっては、商標権取得の選択肢が増えることになります。

 地域団体商標の登録主体の拡充を除き、施行日は確定していませんが、恐らく平成27年4月1日から施行されるものと思われます。ただし意匠の国際出願に関しては、わが国において「ジュネーブ改正協定」が効力を生ずる日から施行されることが決まっています。

提供:株式会社TKC(2014年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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