Q&A経営相談室
【資産運用】
2014年に始まる「日本版ISA」とは
 
Q:
 来年1月から日本版ISAという制度が始まると聞きました。制度の詳細やメリットについて教えてください。(不動産業)
 
<回答者>ファイナンシャルプランナー 山崎俊輔

A:
 株式や投資信託の売却益、銀行預金の利息収入などには20.315%の税金が課せられます(譲渡所得として課税/復興特別所得税を含む)。これまで株式や株式投資信託の譲渡益については10.147%の軽減税率が認められてきましたが、何度かの期間延長を経てこれが2013年末で終了することになります。

 この受け皿として新たな証券税制優遇策が検討され、イギリスのISA(個人貯蓄口座の略)が採用されることとなりました。イギリスでは国民の約4割が利用している資産形成制度です。

 日本版ISAではまず、銀行や証券会社にISA口座を開設します。20歳以上の国内居住者が住民票を提出すれば誰でも開設可能ですが、国民ひとり1口座しか持てません。1口座あたり年100万円の投資枠が得られ、上場株式や公募株式投資信託、ETF、REIT等の購入を行うことができます(銀行預金等は対象外)。

 そして年100万円までの投資については、その譲渡益が非課税になります。売却時期は自由に決められますが、一度売却した場合、その税制優遇枠は終了となり再利用できません(例えば同年に「購入→売却」をしても、非課税投資枠は復活しない)。

 非課税メリットを活用できる期間は5年(厳密には投資した年から数えて5年目の年末)までです。もし5年持ち越したままであった場合、売却するか(もちろん売却益は非課税)、含み益も含めて100万円までの範囲について、次の年の100万円のISA投資枠にそのまま引き継ぐ(ロールオーバー)か、そのまま証券口座に移すことができます(この場合、値上がりした状態を取得価額にできるので含み益は課税されずにすむ)。

 日本版ISAは、勤労者、経営者、配偶者、年金生活者など国内居住の成人であれば誰でも利用できる制度です。一括で100万円を入金できるような富裕層はもちろんのこと、毎月1万円程度からの積み立てを行う会社員にとってもメリットがあり、幅広く投資に活用できるでしょう。またいつでも解約が可能で、急な資金ニーズが生じた場合はすぐ現金化することができます。これから先、消費税率の引き上げが行われるほか、社会保険料の負担増などが検討されており、税制上のメリットがある制度は貴重な存在といえるでしょう。

 ただし、いくつか注意点もあります。ISAの対象は株式や投資信託などのリスク資産ですから、元本割れの可能性があります。また、損失が生じた場合は損益通算の対象とならず、税制上のメリットはまったく得られません。一度売却をすれば非課税枠を再利用できませんので、売却時期も慎重に検討する必要があります。

 制度の特徴を考えると、中長期の視点で資産形成をねらえる対象を検討する必要があります。具体的には、複数の投資対象をひとつの投資信託内で売買するバランス型の投資信託などに活用の妙味がありそうです。

 申し込みは10月からを予定しており、各社が商品ラインアップやサービスを競い始めています。まずは資料を取り寄せて検討してみるといいでしょう。

提供:株式会社TKC(2013年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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