Q&A経営相談室
【法改正】
13年度中に施行の「改正労働契約法」とは
 
Q:
 改正労働契約法が来年度中に施行されると聞いています。運用上の注意点を教えてください。(飲食業)
 
<回答者>社会保険労務士 山本礼子

A:
 労働契約法の改正法が平成24年8月10日に公布されました。

 今回の改正では、(1)有期労働契約の無期労働契約への転換(2)有期労働契約の更新等(「雇い止め法理」の法定化)(3)期間の定めのあることによる不合理な労働条件の禁止――の3つのルールが規定されました。

有期労働契約5年で無期に

 有期労働契約というのは、1年契約や6カ月契約など期間の定めのある労働契約のことです。パート・アルバイト・派遣社員・契約社員・嘱託社員などの有期労働契約がその対象となります。

 有期労働契約の労働者は、全国に約1200万人おり、その約3割が契約更新により通算5年を超える有期労働契約です。契約終了時において紛争問題がみられ、これを防止するために改正が行われました。

 第1の改正点である「無期労働契約への転換」とは、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みです。

 通算労働契約期間が5年を超え、労働者が無期転換申し込み権を行使した場合、使用者が申し込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が終了する翌日から無期労働契約が成立します。

 また、有期労働契約と有期労働契約に空白期間(同一事業主で働いていない期間)が6カ月以上あるときは、空白期間より前の有期労働契約は5年のカウントに含まれません(クーリング)。

 なお、別段の定めがない限り、転換後の無期労働契約は従前と同一の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)でなくてはなりません。ただし、労働者との個別合意により別段の定めで変更することは可能です。

 第2の「雇い止め法理」の法定化とは、使用者が有期労働契約の更新を拒否したとき、契約満了により雇用契約が終了(雇い止め)しますが、労働者保護の観点から過去の最高裁判例により、一定の場合に無効とする判例(雇い止め法理)を条文化したものです。

 使用者が雇い止めをすることが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇い止めが認められず、従前と同一条件で、有期労働契約が更新されます。

 第3の「不合理な労働条件の禁止」については、同一の使用者と労働契約を締結している有期契約労働者と無期契約労働者との間で、有期であることで不合理に労働条件を相違させることを禁止するというルールです。

 労働条件の相違が不合理かどうかは、(1)職務内容(業務の内容および責任の程度)(2)職務内容および配置変更の範囲(3)その他の事情、を考慮して個々の労働条件ごとに判断されます。

 対象となる労働条件は、賃金や労働時間だけでなく、災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など労働者に対する一切の待遇が含まれます。

 施行期日は、雇い止め法理の法定化は平成24年8月10日公布の日から、無期労働契約への転換と不合理な労働条件の禁止は、公布日から1年以内の政令で定める日となっています。

 無期転換ルールの5年のカウントは、改正法の施行日以後に開始する有期労働契約が対象となるので注意してください。施行前に開始している有期労働契約は5年のカウントには含まれません。

提供:株式会社TKC(2012年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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