Q&A経営相談室
【福利厚生】
独身社員の偏食を改善するには
 
Q:
 独身社員の偏食を心配しています。食生活改善を指導し、それを厳重に守らせたいと考えています。良い方法があれば教えてください。(ソフトウェア受託開発業)
 
<回答者>ヘルスポート研究会 カナン代表 新出真理

A:
 経営者が従業員の食生活や健康づくりに配慮し、健康増進事業を行うことは、労働安全衛生法の健康(安全)配慮義務や健康増進法、食育基本法にかなっています。

 私たちが心身ともに健康で、公私ともに生き生きと暮らすには食生活が重要なことを質問者はよくご存知なだけに、独身社員の偏食を心配されているのでしょう。

 従業員の偏食を改善するためには、「食(情報・食物)環境の整備」を含めた以下3点がポイントです。

 第1に、どのような食生活を送ったら良いか、という具体的な「食に関する情報」を提供することです。日本には健全な食生活の目安である「食生活指針」や、1日に何をどれだけ食べたら良いかを、具体的な料理例で示す「食事バランスガイド」があります。独身者が多いのであれば、管理栄養士の協力を得て外食・中食を利用した具体的な食生活像まで示すと良いでしょう。

 また簡単に作れるメニューの実演・試食等の体験型学習ができれば、楽しみながら自分の食生活と指針の内容とのギャップに気づきやすく、理解を深めます。

 第2に、理解した健全な食生活を実践するための食環境として「食物へのアクセス」の整備です。職場の飲食物の自動販売機や売店、社員食堂、寮等のメニューなどの食に関する資源が、食生活改善に役立つように見直します。

 社外の食環境も影響が大きいので、従業員が食にアクセスするスーパー、コンビニ、食堂等のメニューに関する食環境の整備状況等は、必要に応じて市区町村からの情報を利用すると良いでしょう。

 しかし、これらのポイントを抑えても、本人に食生活改善の意欲・関心がなければ効果は望めません。特に自覚症状がない場合は、一般的に関心が低いものです。

 そこで第3に、といっても基本的に必要なこととして、食生活改善の動機付けがあります。この時、健康・食生活改善の大切さを納得してもらうためには、個々人の価値観を尊重したカウンセリングやコーチング的手法を取り入れた講演等のアプローチが有効です。QOL(生活の質)向上のために、従業員個々人が自分の価値観に基づいて健康の優先順位を見直す中で、食生活改善の意義を改めて発見していただくのです。

 また、このアプローチは食生活改善が健康状態を変えることや、健康リスクを減らすという「事実」を、他人事ではなく自分の問題としてとらえることができるよう援助する点でも、効果的です。

 個人の動機付けを強化し、継続させるには社風も影響します。健康づくりや食生活改善に取り組むことが、職場内でプラスに評価される、と社員が感じるような雰囲気づくりができると、従業員の行動変容が起こりやすくなります。

 これらの雰囲気づくりは一朝一夕ではできませんが、衛生委員会等でポイントの1〜3を戦略的に取り組むことで効果を上げます。

 健康増進法では、食生活などの健康な生活習慣について関心・理解を深めて自覚的に健康増進に努めることを国民の責務と位置づけていますが、食育基本法の第1章第4条では国民等の自発的意思を尊重するとも明記されています。

 イソップ物語の「北風と太陽」にもあるように、従業員がふと食生活改善をしたくなるような、雰囲気と機会を提供されてはいかがでしょうか。

提供:株式会社TKC(2010年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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