Q&A経営相談室
【 I T 】
データの長期保存はどれくらい可能か
 
Q:
 大事なデータをパソコンに入れたままの状態にしています。パソコンのハードディスクでは、データの長期保存はどれくらい可能でしょうか?(繊維卸)
 
<回答者>IT機器評論家 西田宗千佳

A:
 パソコンは仕事の基盤ですが、安心してずっと使うには、データが消えないことが重要です。現状では、大容量データの日常的な保存に最も適している媒体は、ハードディスクであるのに間違いありません。しかし「パソコンに内蔵された1台のハードディスク」だけに長期保存を委ねてしまうのは少々リスクがあります。

 ネット検索大手のグーグルは、自社で消費した10万台(!)のハードディスクの故障状況から「使い始めてから5年間で、4分の1のハードディスクになんらかの故障が発生する」という統計を導きだしました。すなわち「対策なしに使い続けられるほど、ハードディスクは安全な機器ではない」ということです。この結果はサーバーとしての運用によるものですが、振動が多いノートパソコンの場合、より壊れやすいといえます。要は、ハードディスクに記録したデータは、必ず「バックアップ」をしておかないと、いつか消えるということです。

 では、どんな媒体にバックアップをすればいいのでしょうか。もっとも一般的なのは、DVD−Rやブルーレイ・ディスク(BD-R)など「記録型ディスク」です。

 ただしこちらも、ハードディスク同様、「永遠にデータが消えない」ものではありません。信頼性の高いメーカーのメディアで数十年、安価で質の悪いメディアの場合、数ヵ月から数年でデータが消えてしまうことがあるようです。特に、DVD−RとLTHタイプのBD−Rは紫外線に、それ以外のディスクは熱に弱いため、注意が必要です。埃が少なく、高温にならず、直射日光や蛍光灯の当たらない場所に保存するようにしましょう。その上で、やはり数年に一度は、ディスク自体を新しいものにコピーし直して、データが消えるのを防ぐべきです。

 他方、記録型ディスクには、容量が小さいことと、記録(データの書き込み)に時間がかかるという問題があります。「年に数回重要なデータだけをバックアップする」なら構いませんが、日常的にパソコン内の重要データを頻繁にバックアップするには向きません。

複数のハードディスク活用

 では何を使うのがいいのか。結局は、別のハードディスクをつないでバックアップに使うのが現実的です。ハードディスクは故障しやすい、と書きましたが、それはあくまで確率的な問題であり、コンピュータウィルス被害や火災・地震などの天災をのぞくと、別々のハードディスクが同時に故障し、両方のデータが消えてしまう可能性はかなり低くなります。

 すなわち、外付けやLAN接続といった形で、パソコンに内蔵されているものとは「別のハードディスク」を用意し、日常的にバックアップを行うための媒体として利用すれば、安全性はかなり高まるのです。記録型ディスクと違い、書き込みが速いのも、日常的なバックアップには大切な要素です。

 高価なパソコンや外付けハードディスクでは、複数台のハードディスクにデータを複製しながら利用する「RAID」という仕組みが導入されていますが、これも考え方は同じ。複数台なら故障する確率が減る、という考え方です。

 どちらにしても、単純に「一つの媒体にバックアップしておくだけ」では信頼性が足りません。大切なのは、「複数の場所に保存する」「信頼のおけるメディアを、数年おきに更新して使っていく」という原則です。

提供:株式会社TKC(2010年9月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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