Q&A経営相談室
【法 改 正】
「改正障害者雇用促進法」とは
 
Q:
 障害者雇用促進法の改正が段階的に行われていますが、その内容を詳しく教えてください。(小売業者)
 
<回答者>社会保険労務士 三留敏明

A:
 障害者の雇用が進展するなかで、中小企業における障害者雇用の改善が遅れています。障害者によっては長時間労働が難しく、福祉的就労から一般雇用への段階的な就労形態として、短時間労働に対するニーズもあります。そのため、障害者雇用促進法が改正され、平成21年4月から段階的に施行されています。改正のポイントは以下の2点です。

 (1)障害者雇用納付金制度の対象事業主の拡大

 障害者雇用納付金制度とは、雇用障害者数が法定雇用率(1.8%:労働者56人に対して障害者1人の計算)に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1ヵ月当たり5万円を徴収し、障害者雇用調整金や助成金を支給するというものです。障害者雇用納付金の徴収は、常用雇用労働者を301人以上雇用する事業主のみを対象としていました。法改正で、常用雇用労働者が101人以上300人以下の事業主に段階的に障害者雇用納付金制度の対象が拡大されます。ただし、制度の適用から5年間は納付金の減額特例が適用されます。

 (2)短時間労働も障害者雇用率制度の対象

 障害者雇用率制度では、原則として週所定労働時間が30時間以上の労働者を実雇用率や法定雇用障害者数の算定基礎としています。重度でない身体障害者や知的障害者である短時間労働者については、実雇用障害者数や実雇用率にカウントされていませんでした。

 法改正により平成22年7月から、障害者雇用率制度における実雇用障害者数や実雇用率に、身体障害者または知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)をカウントすることとなります。カウント数は0.5です。あわせて、障害者雇用率制度における実雇用率や法定雇用障害者数の算定基礎となる常用雇用労働者の総数に、短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)をカウントすることになります。短時間労働者は0.5カウントとし、実雇用率や法定雇用障害者数を計算します。

 民間企業の障害者雇用の実態(平成21年度)をみると、全体の実雇用率は1.63%、法定雇用率を達成している企業は45.5%です。企業規模別でみると、中小企業の実雇用率は低い水準で、特に300人規模以下の企業では実雇用率1.35%となっています。

 法改正によって100〜300人規模の企業では現状の実雇用率や短時間労働者の数によって、障害者雇用納付金の増加が見込まれ、その対応が必要となります。助成金の活用も考え、社会保険労務士やハローワークに相談してみてはいかがでしょうか。

提供:株式会社TKC(2010年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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