Q&A経営相談室
【環  境】
「太陽光発電買取新制度」の概要
 
Q:
 太陽光発電の新しい買取制度がスタートしています。その内容と中小企業への影響をを教えてください。(リフォーム工事業)
 
<回答者>野村総合研究所上席コンサルタント 福地 学

A:
 平成21年11月1日から、太陽光発電の新たな買取制度がスタートしました。これにより、太陽電池を使って家庭で作られた電力のうち自宅で使わないで余った電力を、1kW時あたり48円で10年間電力会社に売ることができるようになっています。

 この制度は、平成21年4月24日の二階経済産業大臣(当時)の記者会見で発表され、7月1日に根拠法令となる「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」が成立し、その後、買い取り制度の詳細が政令、施行規則、大臣告示等の整備で行われ、実施に至りました。日本の太陽光発電導入量を拡大することで、エネルギー源の多様化に加えて、温暖化対策や経済発展にも大きく貢献できるものと期待されています。

 買取価格は、住宅用が48円/kWh、非住宅用が24円/kWh、自家発電設備等併設の場合は住宅、非住宅それぞれ39円/kWh、20円/kWhと設定されています。これは既設の太陽光発電設備も対象です。買い取られるのは、太陽光パネル出力が500kW未満の発電事業目的以外の設備からとなっています。

 住宅用、非住宅用の区別についての「住宅」とは、家庭・個人の居住の用に供されるもの(集合住宅を含む)を意味し、店舗や事務所等を兼用している場合も原則として「住宅」と評価されます。ただし具体的な判断は、「低圧に連系される受給契約かどうか」を判断の基礎としつつ、個別の事例に応じて電力会社が判断することとなっています。

 買取費用については、全電気利用者で負担する「全員参加型」の制度となっています。従来も太陽光発電の発電電力については、電力会社が「余剰電力購入メニュー」として、供給電力と同等の単価で買い取っていましたが、これはあくまでボランタリーな制度であり、買取価格と買取期間を固定する制度ではありませんでした。また、買取に係る費用負担についても、需要者に明示されるものではありませんでした。対して本制度では、価格と期間が定められ、その費用負担についても明確にされています。

 現在の国内での太陽光発電の普及状況は、2007年末時点で192万kWであり、ドイツに次いで、世界第2位の導入国となっています。将来については、2009年4月に当時の麻生首相が、2020年に20倍の導入量(約3840万kW)を目指すとスピーチしており、その後の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の検討においてもこの数値が導入目標として掲げられました。

 中小企業経営者にとっては、従来の制度と比較して買取価格が概ね2倍になり導入の負担が大きく減少することで、自宅への設置のみならず、経営している店舗や工場への設置が進むと予想されます。また、太陽光発電システム買取価格の増額という経済的な理由だけでなく、環境保全への貢献やCSR(企業の社会的責任)の観点からも導入のインセンティブが向上すると考えられます。

提供:株式会社TKC(2010年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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