Q&A経営相談室
【法 改 正】
「改正著作権法」の中身を教えてください
 
Q:
 「改正著作権法」が来年1月から施行されるそうですが、その詳しい内容を教えてください。(ウェブコンテンツ事業者)
 
<回答者>牧野総合法律事務所 弁護士 牧野二郎

A:
 今年6月、著作権法が改正され、平成22年1月から施行されることになりました。今回の改正では、デジタル情報の活用を促進するための改正が多く盛り込まれました。また、違法な複製物の利用が正規複製物の利用を上回っているとの指摘を受けて、違法複製物の流通を規制しました。このほか、障害者の著作物利用促進のための改正も盛り込まれました。

 ここでは、主にベンチャー企業をはじめとした情報ビジネスで活躍する企業に関係の深いものに絞って解説することにします。

 今回の改正の最大のポイントは、これまで事実上禁止されていた検索エンジン事業を、明文を持って合法化した点です。インターネットが普及するにつれ、人々は検索エンジンでネット上に公開された情報を検索するようになりましたが、その検索エンジンを構築する場合も、情報の複製行為になります。これまで我が国では、合意のない複製行為は違法とされてきたこともあり、違法論が常識とされ、検索エンジン事業はまったく行われませんでした。大学内での研究目的の場合や政府公表データだけを対象とする検索などが、小規模で行われていましたが、事業としてはまったく存在せず、産業自体成長しませんでした。

 その結果、我が国で利用可能な検索エンジンは「Google」や「Yahoo!」「MSN」など米国製のものに限定されていました。最近になって中国製の「百度(BAIDU)」、韓国製の「NAVER」などが上陸して、ビジネスを開始してきています。このように、我が国ではインターネットでの情報利用は外国製の検索エンジンに頼るほかなく、自生の技術開発は15年ほど遅れてきてしまいました。

 こうした事態に対して、ベンチャービジネスをはじめとする小規模事業者、情報産業界の多くの企業の要望で、今回ようやく改正に至ったというわけです。現在、政令を準備していることから、その内容によってビジネスの範囲が多少影響されるかもしれませんが、我が国での新しい産業が起こる可能性が出てきたということであり、十分にこれを生かしてほしいと思います。

 次に、ネットオークションに出品する人が、正当な権利である商品を譲渡しようとする場合、出品物(複製物/写真など)をコピーしてウェブに公開する必要がありました。これも複製行為である以上、著作者の同意がなければできないとされ、一つひとつの譲渡行為に対して、著作者の同意を必要とし、煩瑣であり、不経済でした。こうした観点から今回、正規の譲渡のためであれば、そのコンテンツを複製すること、公開して提供すること(公衆送信)が合法化されました(47条の2)。これによって、ネット上での競売や公売などへの利用が進むものとみられます。

 その半面、多くの違法利用が存在していることから、違法複製の規制も行われました。これまで最も頻繁に行われ、疑わしいが、合法性とされてきた行為の一つが、私的複製行為のなかでの違法コンテンツの利用(録音、録画)でしたが、今回、それが禁止されることになりました(30条1項3号)。受信するだけの場合には違法侵害がないと言われてきましたが、権利者から見れば、使う人がいるから提供するわけで、使う人すなわち複製する人も同罪である、というわけです。音楽や映画などを利用する場合には、十分に注意する必要があります。

提供:株式会社TKC(2009年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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