Q&A経営相談室
【環  境】
来年4月施行の“改正省エネ法”とは
 
Q:
 来年4月から“改正省エネ法”が施行されると聞いていますが、その具体的な内容と中小企業への影響について教えてください。(地場スーパー経営)
 
<回答者>野村総合研究所 社会システムコンサルティング部
上席コンサルタント 福地 学

A:
 平成22年4月1日に、平成20年度に改正された「省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」が施行される予定となっています。

 今回の改正では、従来の事業所単位の規制から企業(事業者)単位の規制へ大きく枠組みが変化します。このため、従来は一事業所で、年間のエネルギー消費量が原油換算1500キロリットル以上が対象でしたが、この改正により、例えば年間エネルギー消費量が原油換算300キロリットルの事業所を6つ抱える企業の場合も、合計エネルギー消費量が原油換算1500キロリットル以上となり、規制の対象となります。

 資源エネルギー庁によれば、ホテルで300〜400室規模以上、コンビニエンスストアで30〜40店舗以上、ファーストフード店で25店舗以上、ファミリーレストランで15店舗以上、フィットネスクラブ8店舗が対象の「目安」とされています。また、一定の要件を満たすフランチャイズチェーンについても、チェーンを一体として捉え、本部事業者に対して、企業(事業者)単位の規制と同様な措置が行われます。

 さらに企業単位でのエネルギー管理を進めるために、「エネルギー管理統括者」(企業の事業経営に発言権を持つ役員クラスの者など)と「エネルギー管理企画推進者」(エネルギー管理統括者を実務面で補佐する者)を、それぞれ1名選任し、企業全体としてのエネルギー管理体制を推進することが義務付けられています。これにより、業務部門の中小規模の事業所を多数保有する事業者が新たに義務の対象に加わると共に、産業部門を含めて、事業者の経営判断に基づく効果的な省エネルギーの取組を推進することとしています。

 省エネ法は石油危機を契機に昭和54年に制定され、工場、建築物及び機械器具に関する省エネルギーを総合的に進めるために、各分野において事業者が取り組むべき内容とそれを支援する施策を定めたもので、これまでにたびたび改正されています。

 とくに今回の平成20年度改正での中小企業への影響としては、次の2つが考えられます。1つはフランチャイズチェーンが規制対象となることから、フランチャイジーである個別のコンビニエンスストア等の中小企業についても、エネルギー管理の対象となります。

 2つ目は複数の店舗を有する企業であれば、全国展開をしているような大規模な事業者でなくても対象となることです。すなわち地域で展開しているスーパーやコンビニエンスストア、ファーストフード、飲食店と熱利用が大きいホテル、スポーツクラブ、健康ランド、福祉施設等では、中小企業も省エネ法の規制対象者となり、エネルギー使用の合理化に努める必要が生じます。

 しかしながら、今回の改正については、経済産業省・地方経済産業局より「説明会」等が多数実施され、周知に努めていますが、対象となる可能性のある事業者が認識していない場合があります。このため、企業自らも「目安」を参考として、対象事業者となる可能性がある場合には、その認識を高め、まずはエネルギー消費量の把握を行うことが必要です。

 国では、これらの対象となる中小企業での省エネを推進するために、日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫からの低利融資制度やNEDO(独立行政法人「新エネルギ・産業技術総合開発機構)からの補助金制度を設けて支援しています。

提供:株式会社TKC(2009年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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