A:
このところ我が国では、カルテルや談合の摘発が続き、不正行為の広がりが危惧されていました。また、下請企業に対する違法な拘束という事例も発生しており、自由競争の確保のための新たな対策の必要性が指摘されていました。こうしたことをうけ、独占禁止法の改正が行われました。
本年6月3日に参議院を通過して成立した独占禁止法改正法案は、課徴金制度の見直し、不当な取引制限などの罪に対する懲役刑の引き上げ(3年から5年へ)、企業結合規制の見直しなどを主な内容とするものです。
特に課徴金制度の見直しでは、従来の課徴金制度に加えて、私的独占や不当廉売、共同取引拒絶、再販売価格の拘束の繰り返し行為や、優越的地位の濫用に対して課徴金を課すること、また主導的役割を果たした企業に対する課徴金を5割増しするなどの改正も行われました。
この改正法は6月10日に公布され、一部の規程については7月10日に施行されていますが、それ以外も平成22年1月から施行予定で、今後正確な施行日は政令で決めるとされています。
現在は関係規則などの改正に関するパブリックコメントが募集されており、その意見を踏まえた規則改正などが実施されるでしょう。
今回の改正の中でも重要なのが課徴金制度の適用の拡大です。これまでは不当な取引制限、支配的私的独占に対して課徴金が課されていましたが、それが優越的地位の濫用行為に対しても適用されることになったのです。
自己の地位が、取引相手に優越していることを利用して、取引している商品や役務に入らない、他の商品や役務の購入を強要するような行為を、繰り返し行う事業者に対して取引額に応じた課徴金を課するという制度(第20条の6等)を採用したわけです。
“下請いじめ”改善に期待
このような改正が行われた背景には中小企業に対するいじめ、優越的地位を濫用して不当な不利益を与える行為が横行していたという現実がありました。20年度だけでも大型家電量販店による納入業者に対する濫用事件(割引強要、店員派遣強要、商品購入強要など)により4件の排除命令と1件の警告が行われています。
こうした事例が後を絶たず、経済状況の悪化の中で拡大する恐れがあったという背景があります。
この法改正は昨年に国会に提出されたもので、平成18年成立の改正法の想定事項(2年以内の見直し)でもあり、早期成立が期待されていたのですが、国会の都合により1年延期されたという事情もあります。
この改正法が施行されることで、優越的地位を持つ企業の無理な取引の強要などが規制対象となりますので、これまで受忍せざるを得なかった不合理な強要行為を拒絶することが可能となりました。排除命令や勧告に加え、課徴金が課せられ、厳しく対応されることになりましたので、不正な強要の排除がより確実となったわけです。
中小企業としては、不合理な取引の強要や社員派遣の強要などが求められたときには、問題であることを明示すると共に、止めないときは公正取引委員会に相談するなど、泣き寝入りしない対応が求められます。
|