Q&A経営相談室
【法改正】
「租税特別措置法の一部改正」について
 
Q:
 今年6月に国会で成立した追加経済対策による税制改正の中に、中小企業に関係の深いものがあると聞きました。その内容を教えてください。(金属加工業)
 
<回答者>税理士 北村 恵

A:
 最近の社会経済情勢を踏まえた税制上の措置として、「租税特別措置法の一部を改正する法律」が今年6月19日に成立しました(同月26日に公布・施行)。とりわけ中小企業に関係が深いのは「交際費定額控除額の引き上げ」と「研究開発費減税」の2点です。

交際費定額控除額の引き上げ

 資本金1億円以下の中小企業(中小法人)は、交際費を年間400万円までについては90%を損金算入できました。それが今回の改正で、限度額が年間600万円に引き上げられました。適用されるのは、平成21年4月決算の中小企業からです。なお本措置法が6月中の成立となったため、すでに定額控除限度額を400万円として申告をした4月決算の中小企業については、国税庁側で減額更正を行う見込みです。

 この改正により、損金算入できる交際費支出額は改正前の最大360万円から最大540万円に増えました。しかし現在、ほとんどの中小企業が経費削減を進めていて当然、交際費も減らしています。そんな状況下で、当改正の効果を疑問視する声もあります。

研究開発費の減税

 研究開発税制の拡充として、「試験研究費の総額に係る特別税額控除制度」「特別試験研究費に係る特別税額控除制度」「中小企業技術基盤強化税制」について、以下の2つの措置が講じられました。

 (1)税額控除限度額の引き上げ

 (2)税額控除限度超過額の繰越控除制度に係る繰越期間の延長

 (1)は2年間の特別措置です。税額控除限度適用額が当期の法人税額の20%から30%に引き上げられることになりました。平成21年4月から平成23年3月31日までの間にはじまる事業年度に適用されます。

 同時に、法人が繰越税額控除限度超過額を有している場合の税額控除限度額についても、改正前の20%から30%に引き上げられています。本制度の限度額引き上げ期間は、今年4月から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度となっており、(2)により延長した繰越期間にあわせて期間が長くなりました。

 (2)は、今年度と来年度に生じる税額控除限度超過額について、平成23〜24年度においても税額控除の対象とされるものです。つまり、今年度発生分は3年間、来年度発生分は2年間の繰り越しができるわけです。

 具体的には、今年度発生分の繰越税額控除限度超過額については最長3年間にわたり繰り越せるので、平成22年度、平成23年度、平成24年度のいずれかの事業年度において、その事業年度の試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超えていれば適用要件を満たすことになります。

 これまでは本制度の繰越期間は1年間のみでした。そのため、翌年に支出した試験研究費が前年を下回った場合は、適用要件に当たらず繰越額が無駄になっていました。一時的に試験研究費が減ったとしても適用期間内に要件を満たせばよいため、法人側にとっては減税の恩恵を受ける時間的余裕ができたといえます。

提供:株式会社TKC(2009年8月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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