Q&A経営相談室
【ウェブ】
ドメイン名の不正登録への対処法
 
Q:
 日本語ドメインの普及に伴い、企業名や商品名をHPアドレスに不正に利用される恐れがあるといいます。その対応策を教えてください。(菓子卸売業)
 
<回答者>牧野総合法律事務所 弁護士 世戸孝司

A:
 ドメイン名とは簡単に言うと、各企業のホームページ(HP)の住所のようなものです。HPアドレスの「http://」に続く「○○.jp」や「○○.com」の部分がドメインに当たります。この○○の部分に企業名やその会社が扱っている商品の名前を用いることが日常化しています。消費者もそうした傾向を踏まえて、ドメイン名を手掛かりに会社のウェブサイトにアクセスする傾向があります。

 当初、ドメイン名はアルファベットに限定されていましたが、平成13年以降、日本語で表記することもできるようになりました。現在、私たちの牧野法律事務所のドメインは「makino-law.jp」ですが、例えばそれを「牧野法律.jp」とすることも可能なわけです。実際、企業のなかには日本語ドメインを採用するところも増えています。

 さらに総務省では、ドメイン名の末尾で国名を表す「.日本」「.日本国」などのような日本語表記を導入することを決定し、早ければ今年中にも解禁されるかもしれません。つまり今後は「牧野法律.日本」などというドメイン名が増加していく可能性があります。日本語表記のドメイン名は企業等の広報戦略にも効果があるとされるからです。

 しかしドメイン名は原則として誰でも先着順に登録することができ、しかも登録に際し、商標登録出願などにおいて行われるような実質的な審査はありません。だから、ある企業の商号・商標と同一、あるいは限りなく似たものを勝手に登録することも難しくないわけです。

 ドメイン名の日本語表記の普及がこの先見込まれるなか、早い者勝ちの登録制度を逆手にとって第三者が有名企業などの商号や商標と類似した文字をドメイン名に登録することが増える恐れもあります。(1)商標権者(企業)が長年にわたり築き上げた知名度や信頼にフリーライド(ただ乗り)して商売を始めたり、(2)嫌がらせ目的でウェブサイト上にて商標権者等の信用を傷つけたり、(3)取得したドメイン名を商標権者不当に高く買い取らせるといった行為を狙ってのことです。

 では、こうした商号・商標の不正登録・不正使用がなされた場合、企業はどんな対応策をとればいいのでしょうか。ここで目を向けたいのが「不正競争防止法」という法律です。不正の利益を得る目的、または他人に損害を加える目的で他人の特定商品等表示(氏名、商号、商標など)と同一もしくは類似のドメイン名を使用することを不正競争行為として禁止しています。そして、「差し止め請求」(ドメイン名の使用禁止や登録抹消請求など)や「損害賠償請求」ができることを認めています。つまり不正なドメイン名の使用に対しては、「不正競争」の1つとして訴訟を起こすのが企業側の対応策と言えます。なおドメイン名を不正に取得する行為は、刑事罰の対象にはなっていません。

 また、裁判によることなく、「日本知的財産仲介センター」(ドメイン名の不正登録者との争いを処理する機関)の紛争処理制度を利用するという手もあります。中立公正な弁護士、弁理士、学識経験者の中から選ばれた1名または3名のパネリストによる裁定を行います。裁判に比べて短期間、かつ低コストでの紛争解決が可能です。詳しい情報は、同センターのHPに(http://www.ip-adr.gr.jp/)に記載されています。

提供:株式会社TKC(2009年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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