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結論から先にいえば、その通りです。ご質問のように、企業が他の企業の保有する技術を利用し、あるいはその企業と共同で新商品の開発を行うような場合には、まず「NDA」(Non Disclosure Agreement = 秘密保持契約、非開示合意書ともいう)を締結します。
この契約は、事業共同、共同開発などが決定する前に締結されることがほとんどです。交渉の初期段階で、本当に事業共同ができるのか、新商品開発が可能なのかを検討したりするために情報を開示するのですが、それは企業の持つ重要な技術に関する情報や、企画している新製品のコンセプトなどの場合があります。それは貴重な資産であり、しっかりと管理したい情報です。従って、技術情報やアイデアが盗まれてしまったり、第三者に開示されることがないようにしなければなりません。
そこで、互いに開示した情報を使用する目的を限定して、他の目的に利用しないこと、第三者に開示しないことを合意するのです。相手方企業に自社製品の開発を委託したり、自社業務を委託する場合や、自社の保有する重要な情報を開示する場合に締結されます。
注意すべきこと
ここで、まず理解しておきたいのは、交渉の初期段階に提供した情報は漏洩しやすいということです。すなわち多くの場合、情報が漏洩しても漏洩事実を正確に捕捉できないということに注意すべきです。従って、本当に重要な情報は、交渉が終了して、本契約が締結された後になって初めて開示するなど、強い信頼関係が確立されてから行われるべきです。それ以前に開示する必要がある場合には、漏洩する危険を前提に、事前に加工し、部分的に隠蔽した情報とするか、特許申請などの権利処理を済ませてから提供すべきです。
定めておくべき内容
秘密保持契約で定めておく内容としては、(1)保護すべき情報の具体化と特定が重要となります。守るべき対象が不明確な契約は単なる精神条項となってしまいます。
(2)開示する情報の利用目的、閲覧者を限定します。交渉している事案を特定し、それ以外には使わないこと、そしてその判断をするために必要な人にだけ開示する、とします。下請けや再委託先などに開示する場合も同様です。
(3)提供した情報の管理方法、管理体制については、相手企業の情報管理は内部問題なので干渉することは困難ですが、開示の際に「御社の重要秘密として取り扱うことを条件に開示する」とすることは合理的です。相手企業の保護制度、情報管理規定に沿って取り扱ってもらうことで保護の度合いは強くなります。
(4)終了した際の消去方法、返還方法なども規定しておくとよいでしょう。ただし、手残りを防止することは困難ですから、残っていたら損害賠償することを明記しておくとよいでしょう。
提供情報の取り扱い
提供開示する情報には、必ず「秘密」と表示すること、通し番号や管理のための番号を付記し、かつ開示者名、交付相手の氏名などを明記しておくことが必要です。開示する情報を厳格に特定することで、安易にコピーしたり、第三者に貸し出した場合でも責任者、管理者が明示される仕組みが重要となるのです。
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