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労働者がスケジュールに応じて柔軟に働け、使用者は繁閑に応じて労働者を確保できる便利さ、そして携帯電話等の普及により、日雇い派遣は急成長を遂げました。しかし、不安定な労働環境やワーキングプアなどの社会的問題が顕在化し、また不適切な派遣業者による違法行為の横行により、日雇い派遣を行う派遣会社への規制強化が求められてきました。
このような中で、厚生労働省は改正労働者派遣法案を作成し、平成20年11月4日付で国会への提出が閣議決定されました。成立についてはいまだ微妙な状況ですが、今国会を通れば平成21年10月から改正労働者派遣法が施行(一部は平成22年4月)されます。改正労働者派遣法案のポイントは、以下のとおりです。
1.事業規制の強化
●日雇い派遣(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣)の原 則禁止
●グループ企業内派遣(専ら派遣)の規制(8割規制)
2.派遣労働者の常用化や待遇の改善
●登録型派遣労働者の常用化を努力義務化
●派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(マージン率)な どの情報公開を義務化
3.違法派遣(偽装請負、二重派遣等)に対する迅速・的確な対処
日雇い派遣については、あまりにも短期の雇用・就業形態であり、派遣元・派遣先双方で必要な雇用管理責任が果たされてないとして原則禁止となります。
例外として、労働者保護に問題のない業務について、政令によりポジティブリスト化して日雇い派遣を認めるとしています。その対象業務は、当面は現在の「政令26業務」のうち、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書などの専門性の高い18業務とするのが適当とされています。
また、現在の日雇い派遣労働者等の雇用安定を図るため、公共職業安定所または職業紹介事業者の行う職業紹介の充実等必要な措置を講ずるとしています。
法改正の影響と対応策
法規制の強化だけで派遣業界がどこまで適正化するかは、まだ不透明な部分があります。日雇い派遣が禁止となっても、日雇いの仕事自体が禁止されるわけではありません。要するに、日雇い派遣業者を介さず、労働者と雇用主の直接雇用契約になるだけです。
しかし、倉庫、引っ越し、イベント会場設営・撤去、小売店などでは、これまで人材を日雇い派遣で賄っている場合が多く、日雇い派遣の原則禁止の影響は大きいと思われます。これらの業界では、人手不足が恒常化しており、繁忙期や大口の仕事があると、通常の数倍の人手が必要です。直接募集では、人が集まらないという悩みもあります。日雇い派遣が禁止となれば、募集コストの増加等で多くの業者は廃業を余儀なくされるという意見もあります。
当面は、業務の繁忙期を想定して30日を超える派遣契約を結んでいくことや直接募集の効率化、たとえばアルバイトの情報蓄積、募集媒体の効果性の精査などの仕組みづくりをすることなどが対応策として考えられます。長期的には、募集ノウハウの蓄積や国の施策による新サービスの動向を注視することも求められます。
(注:掲載内容は平成20年11月30日現在のものです)
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