Q&A経営相談室
【経済政策】
中小企業関連「経済対策」の中身とは
 
Q:
 今秋、2回にわたって打ち出された中小企業関連の「総合経済対策」の内容を教えてください。(機械部品製造業)
 
<回答者>日本能率協会コンサルティング 経営戦略事業部
 チーフ・コンサルタント 横山隆史

A:
 サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機が日本経済にも影を落とし、中小企業の資金繰りに深刻な影響が出始めています。

 こうしたなか、政府は中小企業の資金繰り支援として、まず今年10月16日に成立させた2008年度補正予算で「中小企業等の活力向上」として4469億円を盛り込みました。具体的には「中小企業の資金繰りを支援する信用補完および、融資の充実によるセーフティネットの一層の整備」といったものです。

 今回の補正予算に中小企業支援策を盛り込んだのは、第一に地域金融機関が米国発の金融危機に伴い財務体力が低下していることにあります。地方銀行・信用金庫・信用組合といった地域金融機関はこれまでも“再編”が進められてきましたが、依然として過剰気味だといえます。このため、融資競争が熾烈なことから、債券や株式といった有価証券に運用の対象を切り替えてきました。これが結果的に今回の金融危機によって裏目にでて、財務体力を悪化させ、“貸し渋り”が起こりやすい状況にあると考えられます。

 そこでそれを未然に防ぐため、中小企業支援策が補正予算に盛り込まれたのだと思います。

「経済対策」を利用するには

 さらに政府は10月30日、「追加経済対策」を決定し、そのなかで信用保証協会による緊急保証枠を総額20兆円規模、政府系金融機関を中心とした貸付枠を総額10兆円規模――という巨額の中小企業向け資金繰り支援策を打ち出しました。これに併せて、法人税の軽減措置を一時的に拡大することも盛り込んでいます。これは10年前の「貸し渋り経済対策」を思い起こさせるほどの事業規模ですが、今回は世界的な金融危機や景気の先行きを見越した早めの政策展開がなされたといえます。

 中小企業にとって、このような経済対策を活用しない手はないと思います。そのためには、まず自社の現状を正確に示すための「経営資料」を用意することが必要です。具体的には試算表や資金繰り表、金融機関別の借入・預金の状況、受注状況一覧などです。

 また、信用保証協会や政府系金融機関を利用するにあたっては、今回の経済対策を受けるための要件確認が求められます。それは例えば、「最近3ヵ月間の売上が減少している」とか「最近3ヵ月間の売上総利益率または平均営業利益率がマイナスとなっている」といったもので、それを示す資料が必要となります。

 次に、これらの資料をもとに、取引のある金融機関、各都道府県の信用保証協会、各都道府県や各市区町村の相談窓口、顧問の公認会計士・税理士などに相談するといいでしょう。できれば電話やメールではなく、直接相談することをお勧めします。今回の経済対策を受けるための要件を満たしているか否かを事前確認するには、よほど制度や銀行取引に精通していないと難しいからです。専門的な知識を有する方からのアドバイスを受けたほうがスピーディーに利用することができます。経営の現状を示す資料を経営者自らが説明しながら、直接相談を受けるのがいいでしょう。

 このように経済対策を利用するするためにはクリアしなければならないハードルはありますが、積極的に活用して、急激な経営環境の変化を乗り超えてほしいと思います。

提供:株式会社TKC(2008年12月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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