Q&A経営相談室
【法  律】
前国会で成立した「有害サイト規制法」とは
 
Q:
 今年6月に「有害サイト規制法」が成立したそうですが、その内容について詳しく教えてください。(インターネット関連事業者)
 
<回答者>牧野総合法律事務所 弁護士 世戸孝司

A:
 有害サイト規制法(正式名称:青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)が今年6月、参院本会議で可決、成立しました。

 この法律は、青少年(同法で、青少年とは18歳未満の者を指します)が安全に安心してネットを利用できるようにすることによって、青少年の権利を守ろうという目的で作られたものです。そこで、同法は、(1)青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得に必要な措置を講ずる、(2)青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能の向上及び利用の普及、その他青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための措置等を講ずる、としています。

7つのポイント

 同法の内容は多岐にわたりますが、要約すると、7つあります。

 (1)青少年有害情報の例示。(2)青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する施策の推進は、民間における自主的かつ主体的な取り組みによってなされるべきとした。(3)国及び地方公共団体は、青少年がインターネットを適切に活用する能力を習得することができるよう、学校教育、社会教育及び家庭教育におけるインターネットの適切な利用に関する教育の推進に必要な施策を講ずるものとした。(4)携帯電話会社は、青少年の保護者からフィルタリングサービスが不要であるとの申出がない限り、携帯電話(PHSを含む)の契約の相手又は携帯電話の使用者が青少年である場合は、青少年有害情報フィルタリングサービスの利用を条件としなければならない。(5)インターネットと接続する機能を有する機器を製造する事業者(例えばケーブルをつなげば直ちにインターネットに接続できるソフトウェアをインストールしたパソコンの製造業者などが想定されます)は、青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスの利用を容易にする措置を講じた上で販売しなければならない。(6)インターネット接続プロバイダは、そのサービスを受ける者の求めに応じて、青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供しなければならないとした(ただし、有償・無償は本法では問うていません)。(7)青少年有害情報フィルタリングソフトウェア及び青少年有害情報フィルタリングサービスに関する調査研究並びにその普及及び啓発を行う者と青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの技術開発の推進を行う者について、総務大臣及び経済産業大臣の登録を受けることができる――などです。

 同法によって影響を受ける民間企業とは前述したように、携帯電話会社、パソコンメーカー、インターネット接続プロバイダなどが考えられます。また、「青少年のインターネットの利用に関係する事業を行う者」(これについては、同法に定義規定はないのですが、上記事業者の他、ネット通販等のためにウェブサイトを立ち上げている事業者も含まれるとも読めるような体裁になっています)についても一定の努力を促しています。

 もっとも、同法に罰則規定はなく、いずれも「努めなければならない」に止めています。ただ、公権力が表現伝達プロセスに一定の基準や施策の策定、登録制度などを定めたという意味では、基本的人権である表現の自由を制限する方向での立法であることに間違いはありません。

提供:株式会社TKC(2008年9月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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