A:
信用保証協会の全額保証付きの融資は、金融機関も快く貸してくれるので、借り手の中小企業には金融機関の敷居が低く感じられると思います。金融機関にとっては、貸出先が万一返済出来なくなっても、保証協会が代位弁済(肩代わり返済)してくれるし、またその融資に対する金融機関内部の引当金の心配もありません。
とはいえ、全額保証では金融機関の貸出審査が甘くなり、かつて経験したように保証協会保証付き融資の不良債権を増加させてしまう心配があります。また「担保・保証に過度に依存しない融資の拡充」という国の方針にも逆行します。そこで信用保証協会の保証制度をこの10月から変更し、金融機関に2割のリスクを分担させることにしたわけです。これが「責任共有制度」で、貸出先が返済出来ない場合、保証協会の代位弁済の2割分を金融機関が自ら負担するか、保証協会の保証を8割にすることです。つまり保証協会の保証付き貸出であっても、その貸出の2割分は金融機関の「信用貸出」にするということです。
しかし、これによって中小企業による保証協会の融資利用が減ることは、保証協会や監督官庁の本意ではありません。そのため同制度の導入にあたっては、まず借り手企業の保証申込みの手続きが煩雑にならないようにし、企業負担の保証料が保証割合どおり軽くなるようにしました。また、新たに1250万円以下の小口保証制度をスタートし、これについては従来通り全額保証を継続しました。結果、責任共有制度は中小企業の大きなクレームもなく、静かなスタートを切りました。
「信用貸出」と同じ心構えで
しかし、金融機関の内部に阻害要因がないとは言えません。金融機関の信用貸出にリンクする引当金積上げの厳格化です。従来は保証協会保証付き融資の場合、金融機関には引当金積上げやそれに伴う事務負担はありませんでした。が、今後は保証協会保証付き融資であっても、信用貸出があるため引当金積上げが生じます。したがって企業の信用格付け(債務者区分)が低下すれば、その都度、信用格付け評価に基づいて引当金の積増しを行わなければなりません。
たとえば、企業の格付けが正常先から要注意先、要管理先、破綻懸念先に下がれば、それぞれ5%、25%、70%と引当率が高まり、その積増しに伴う事務負担が生じるわけです。この負担感が貸出現場の担当者にのしかかり重荷に感じるようになると、いよいよ保証協会保証付き融資の推進にブレーキが掛かることになります。
現在、金融機関は例外なく、バーゼルUという厳しいBIS規制や改訂金融検査マニュアルのガイドラインによって、信用貸出に対する厳格な引当金の積上げが求められています。そのため今後、金融機関は責任共有制度の保証協会保証付き融資を、「信用貸出」と同様に扱うことも考えられます。
したがって、保証協会保証付き融資を申し込む場合でも、企業としては「信用貸出」を申し込む際と同じ心構えが必要になります。
それには、金融機関の信用格付け評価の手法を習得するとともに、その評価プロセスである財務分析要因と定性分析要因の勘所を押さえておくことがとりわけ重要です。同時に経営計画を作成し、「金融検査マニュアル別冊〈中小企業融資編〉」の事例を参考にしながら、自社の強みを堂々と金融機関に主張することも必要になります。
|