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「老人保健法」が「高齢者の医療の確保に関する法律」に発展的に改正され、平成20年4月から、新しい高齢者医療制度が施行されます。
現行の老人保健法は75歳以上の高齢者を対象とした制度です。会社を退職し、国民健康保険に加入している方も、会社に勤務して政府管掌健康保険や健康保険組合に加入している方も、75歳以上であれば、皆老人保健制度で医療を受けています。しかし、今後、定年退職者が国民健康保険に大量に加入するため、保険者間での医療費負担の調整が求められていました。
来年4月からの新しい高齢者医療制度では、65歳以上75歳未満を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と位置づけています。前期高齢者の医療費については財政調整制度が創設され、75歳以上(65歳以上の寝たきり等の状態にある人を含む)の後期高齢者医療については独立した医療保険制度となります。
この後期高齢者を対象にした医療保険制度は、現行の老人保健制度とは異なり、独立した制度なので、75歳以上の方は後期高齢者医療の被保険者(加入者)となり、各医療保険制度の被保険者や被扶養者からはずれる形となります。
後期高齢者医療制度を運営する財源については、患者負担のほかに、公費約50%、現役世代からの支援金(後期高齢者支援金)約40%、後期高齢者保険料約10%とされています。ただし、人口比率の変化に応じて後期高齢者支援金の負担割合は変更されます。
75歳以上の後期高齢者医療の加入者の保険料徴収は市町村が行います。原則として保険料は年金から特別徴収(天引き)です。具体的な保険料の推計額は、基礎年金79万円受給者の場合、月額900円、厚生年金の平均的な年金額(厚生年金208万円)の受給者の場合は月額6200円、子と同居する者(子の年収390万円、親の基礎年金79万円)の場合月額3100円です。
現役世代からの支援金とは
この高齢者医療制度の創設に伴い平成20年4月から健康保険法も改正され、70〜74歳の高齢者の一般の人の自己負担額(患者負担)が、現行1割から2割となります。75歳以上については現行1割負担で変更はありません。また、70〜74歳の1ヵ月の自己負担額の上限は、一般の現行4万4400円が来年4月から6万2100円に引き上げられます。
現役世代からの支援金は、「後期高齢者支援金等および前期高齢者納付金等」といい、現行の老人保健拠出金および退職者給付拠出金にかわるものです。この拠出金の改正に伴い、平成20年4月からは一般保険料が基本保険料と特定保険料の合算額となります。特定保険料は、後期高齢者支援金等および前期高齢者納付金等に充てる保険料です。特定保険料の保険料率は、会社および個人負担の保険料増加となりそうです。
また、この改正とともに都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合が実施されます。政府管掌健康保険については、平成20年10月に全国健康保険協会が設立され、都道府県ごとに支部が設置されます。保険料率も現在の政府管掌健康保険は全国一律ですが、都道府県ごとに年齢構成や所得水準の違いを調整した上で、地域の医療費に応じた保険料率が設定されることになります。
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