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確かに企業業績の回復には地域間、規模間格差があります。とはいえ2007年1〜3月期の経常利益は全規模・全産業ベースで過去最高益を更新するなど、全体でみた企業業績は好調といえます。
一方、同時期の1人当たり賃金の伸び率は前年比マイナス0.7%と2年半振りの前年割れとなり、過去に比べると企業の好業績がなかなか賃金の増加につながりにくい状況にあるようです。07年の春闘賃上げ率をみても、大企業が1.9%(06年度より0.14pt上昇)、中小企業が1.68%(同0.08pt上昇)と、昨年からの上積み幅はいずれも小幅にとどまりました(日本経団連調査)。
このような賃金の低調の背景には、根強い企業の人件費抑制姿勢があります。これは主に(1)グローバル競争の激化や、(2)過剰雇用への恐れからくる非正規雇用への需要シフト、によって引き起こされていると考えられています。
(1)は生産拠点の海外移転を積極的に進めた大企業に限った話ではありません。中小企業研究所の調査によると、半数強の企業が海外製品との競合による販売量・販売単価への影響を感じており、中小企業といえどもグローバル競争に晒されているといえるでしょう。
(2)については、人手不足感の強まりから一部大企業で非正規雇用の正社員化の動きがみられましたが、全体でみれば「業務の細分化・標準化を通して正社員従来が行ってきた業務を非正規雇用者にシフトする」という企業行動は今後も続くと見られます。非正規化による押し下げに加えて、非正規雇用へと労働需要がシフトしたことが、正社員の賃金抑制要因となっています。実際、パートを除く常用労働者(大部分が正社員)の充足率(就職件数/求人数)は悪化しておらず、企業はまだ正社員を採り難い(=賃金上昇に踏み切る)状況にはないようです。
低調な賃金動向を受け、みずほ総合研究所では今夏の民間企業(事業所規模5人以上)1人当たりボーナス支給額を前年比プラス0.8%の41万9224円と予想しています。伸び率は、06年の前年比プラス1.3%からやや鈍化するとみています。一方、雇用環境の改善を受けて、支給対象者は堅調な増加が見込みまれることから、賞与総額は前年比プラス1.7%の15.4兆円となる見通しです。
中小企業(事業所規模5〜29人)の1人当たりボーナス支給額は前年比プラス0.4%の約32万円(06年31万9千円)と、全体と比べてさらに小幅な伸び率が予想されます。なお業種別の支給額は、パート比率の違いなどから一概には比較出来ませんが、一般に製造業では全体平均の1.2倍程度のようです。
なお予想では、パートを含む常用労働者について1人当たり支給額を計算しているため、支給対象者の大部分を占める正社員の実感からすると、小さめの数字となっています。正社員ベースでみた今夏ボーナス支給額は55万円、中小企業に限ると45万円程度を見込んでいます。
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