Q&A経営相談室
【情報技術】
社内SNS導入にあたっての留意点
 
Q:
 社員間のコミュニケーション向上に役立つという「社内SNS」をはじめようと思っています。導入の留意点などを教えてください。(広告代理店)
 
<回答者>野村総研 主席研究員 山崎秀夫

A:
 SNSとは、人と人とのつながりを促進・円滑にする手段や場をネット上で提供するものです。SNSといえば、若者たちの人気を集め会員数を増やしている「ミクシィ」などが有名ですが、最近では利用者を社員だけに限定した「社内SNS」を導入する企業も増えています。社内SNSのメリットには次の2つがあります。
1. 社内の活性化、一体化を促すことに役立ち、社員の仕事に対する意欲が増す
2. 社員同士の「教えあい」「学びあい」を促進し、仕事の品質改善が期待できる

 社内SNSでは、参加する社員一人ひとりが自分の趣味や日常の出来事などを日記風に書き合います。それによって社員間の“感情の共有”が進みます。その結果、社内の人脈が形成されやすい環境が生まれ、社員同士のコミュニケーションがスムーズになります。そうなれば、チームワークも高まり、仕事の成果にもよい影響を与えてくれるはずです。
 社内SNSは言ってみれば、日本企業が経費削減を理由に近年、切り捨ててきた運動部、保養所、社員旅行などの社内交流を補完してくれるものです。成果主義賃金制度の普及などで職場がギスギスしているという企業が少なくない昨今、社内SNSに関心が寄せられているのは、こうした部分が期待されているからです。

草の根的な盛り上がりが必要

 次に社内SNSの導入にあたっての留意点を3点述べます。
1. 経営サイドからの全面的な支援が必要となる
2. 社員間の「草の根的」な盛り上がりが欠かせない
3. 事務局(ファシリテーター)を設置すべき

 社内SNSは当然、社員の主体的な盛り上がりがないと成立しません。しかし非公式組織の要素が高い社内コミュニティといっても、経営サイドからの全面的なバックアップがないとうまく運用されないのも事実です。その辺りの調整をするためにも、社員と経営サイドの両者をつなぐ事務局的な機関を設けることをお勧めします。
 特に注意したいのは、社内SNSを導入したからといってすぐに期待していた成果が得られるわけではないということです。性急に結果を求めるのではなく、最初のうちは感情の共有を促進する親睦の要素を重視していくことも大切でしょう。社内SNSの書き込みから革新的な製品開発のアイデアが出たり、建設的な議論が噴出するケースは多々ありますが、他愛のない日記の連鎖から突如生まれることがほとんどです。焦らず、成果を待ち続けるのが基本です。
 コールセンター事業を展開する社員数87名のバーチャレクス社では、ブログとミクシィを足して二で割ったような自社オリジナルの社内SNSを導入しています。同社は、社員の大部分が中途採用であるものの、顧客先にチーム単位で常駐することも多いため密接な人間関係が必要とされています。それを促すうえで社内SNSが貴重な役割を果たしています。
 大企業でも社内SNSをすでに導入しているところは多く、NTT東日本やNTTデータの事例がよく知られています。NTT東日本の場合は社員の自発的な動きから始められ、NTTデータについては経営改革のアプローチから会社が先頭に立ってスタートしました。両社とも、「趣味のテーマ」と「仕事のテーマ」の2つをうまく織り交ぜながら、社員たちが自発的に書き込みを行っています。
 社内SNSは現在、企業規模、業種を問わず着実に広がっています。今年中には国内のほとんどの業種の事例が登場する勢いです。ぜひ効果的な社内SNS導入を進めてみてください。

提供:株式会社TKC(2007年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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