Q&A経営相談室
【人事労務】
4月施行「改正均等法」のポイント
 
Q:
 「改正男女雇用機会均等法」が今年4月からスタートすると聞いています。注目すべき改正ポイントと、どのような影響があるかを教えてください。(病院経営)
 
<回答者>社会保険労務士 三留敏明

A:
 昭和61年に施行された「男女雇用機会均等法(以下、均等法)」は、均等待遇の強化、セクシャルハラスメントへの配慮義務、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制の解消など、数次の改正がなされてきました。今年4月施行の均等法では、職場で働く人が性別により差別されることなく、また、働く女性が母性を尊重されつつ、その能力を十分発揮することができる雇用環境を整備することを目的としています。

  主な改正点は次のとおりです。

1.性別による差別禁止の範囲の拡大
(1) 男性に対する差別の禁止:
女性に対する差別の禁止が男女双方に対する差別の禁止に拡大されます。
(2) 禁止される差別の追加・明確化:
募集・採用、配置・昇進・教育訓練、福利厚生、定年・解雇に加え、降格、職種変更、パートへの変更などの雇用形態の変更、退職勧奨、雇止めについても性別を理由とした差別は禁止されます。
(3) 間接差別の禁止:
外見上は性中立的な要件でも、一定の要件については、業務遂行上の必要などの合理性がない場合は間接差別として禁止されます。

2.セクシャルハラスメント対策
 これまでの「配慮義務」が、今後は男性に対するセクシャルハラスメントも含め、「雇用管理上の義務」とされます。

3.妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止
 妊娠・出産・産前産後休業の取得や請求を理由とする解雇、その他不利益取り扱いが禁止されます。妊娠中や産後1年以内に解雇された場合、事業主が妊娠・出産・産前産後休業の取得などの理由による解雇でないことを証明しない限り、解雇は無効となります。

4.過料の創設
 均等法に関する報告徴収に応じない場合、または虚偽の報告を行った場合、20万円以下の過料が課せられます。

 今後は、間接差別も含めて、合理的な理由がなければ、性別を理由とした差別の禁止はより強化され、職種変更や雇止めなどへ範囲も拡大されます。差別に違反しない例としては、(1)芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請(2)守衛、警備員等のうち防犯上の要請(3)宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上の必要性(4)風俗、風習等の相違による海外勤務が必要な特別の事情などがあります。また間接差別に該当する具体例としては、合理的な理由がないのに、(1)募集・採用にあたり一定の身長、体重または体力を要件とすること(2)コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用にあたり、全国転勤を要件とすること(3)昇進にあたり、転勤経験を要件とすることなどがあげられます。
 妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いでは、妊娠や出産はもちろん、妊娠中および出産後の健康管理に関する措置を求めたこと、つわりや出産後の回復不全などによる労務の提供ができないこと、または労務能率が低下したことなども含まれます。
 企業は、職務と性別の関係をもう一度見直すとともに、妊娠中および出産後の健康管理に関する職場の一層の理解が求められます。昇進・昇格、異動・配置、教育訓練、あるいは人事評価、キャリア形成などの実態を精査して、同一職種の男女労働者間に合理的な理由もなく、性別による違いや不利益が生じていないか確認することが重要です。その際には、単なる形式上の問題ではなく、企業の雇用管理の実態をしっかりと確認することがポイントです。

提供:株式会社TKC(2007年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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