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下請代金法は平成15年に改正され、翌年4月1日から適用対象が増え、ご質問者の「運送業」も適用対象になりました。
運送業の場合、親事業者(発注者)と下請事業者(受注者)の定義は次のようになっています。(1)資本金3億円超の親事業者が資本金額3億円以下の下請事業者(個人を含む)に対し委託する場合と、(2)資本金1000万円超3億円以下の親事業者が資本金1000万円以下の下請事業者(個人を含む)に対し委託する場合です。この2つのケースのとき、下請代金法が適用されるわけです。
このとき親事業者は、4つの義務を負わされます。第1は発注に際して、運送の内容、運送をする期日等を記載した書面を下請事業者に交付しなければならないということ。
2番目は下請事業者に対して、運送の委託をした場合、運送の内容、運賃(下請代金)の金額等を記載した書類を作成し、2年間保存するということ。
3番目は下請事業者が運送役務を提供した日から起算して60日以内の期日を運賃の支払期日として定めなければならないということです。締め日からではなく、運送役務提供日から60日以内であることに注意を要します。
第4は支払期日までに運賃を支払わなかったときは、14.6%の遅延利息を付加して支払わなければならないということです。
親事業者の禁止事項
親事業者の主な禁止事項を挙げると、9つあります。
(1) |
下請事業者に責任がないのに、運送役務の受領を拒否してはならない。 |
(2) |
運送役務が提供された日から起算して60日以内に運賃全額を支払わなければならない。 |
(3) |
下請事業者に責任がないにもかかわらず、予め定めた運賃を減額してはいけない。 |
(4) |
運賃を決めるときに類似の価格または市価に比べて著しく低い額を不当に定めてはならない。 |
(5) |
正当な理由なしに物(例えば親事業者が兼業で扱っている商品)や役務を下請事業者に強制的に購入・利用させてはいけない。 |
(6) |
下請事業者が親事業者の下請代金法違反行為を、公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由に、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取り扱いをしてはならない。 |
(7) |
運賃を手形で支払う場合に、一般の金融機関での割引を受けることが困難な手形を交付してはいけない。 |
(8) |
下請事業者に対して自己のために金銭、役務等を提供させることで、下請事業者の利益を不当に害してはならない。 |
(9) |
下請事業者に責任がないのに発注の取消とか発注内容の変更を行い、または受領後にやり直しをさせることで下請事業者の利益を不当に害してはならない。 |
さて、親事業者が前述した義務に違反したときは、50万円以下の罰金が課せられます。さらに親事業者が禁止行為(1)〜(9)を行ったときは、公正取引委員会から勧告措置がなされます。
このため、下請事業者としては、まず親事業者との間で下請代金法に従った基本契約書を結ぶことが大事です。そして他社から受注する場合にも、同じような配慮をしてもらえるよう、その業者(親事業者)に下請代金法の話をすることが肝心です。
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