Q&A経営相談室
【労  務】
厚労省のメンタルヘルスケア指針とは
 
Q:
 厚生労働省が打ち出している「事業所のメンタルヘルスケアの指針」が最近注目を浴びていますが、どんなものですか。(機械メーカー)
 

<回答者>株式会社ピースマインド シニア産業カウンセラー 田中貴世

A:
 正式な名称は、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」といい、平成12年8月に労働省(現在、厚生労働省)が発表したものです。発表当時、労働者健康状況調査によって、仕事や職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合の増加が確認されていました。平成4年の調査で約57%であったものが、平成9年の調査では約63%に達していたのです(その後平成17年7月の調査では75.8%)。その状況を改善するべく、労働省では事業場における労働者の心の健康の保持増進を図るため、事業者が行うことが望ましい基本的な措置(メンタルヘルスケア)の具体的実施方法をまとめたのです。
 内容は以下のとおりです。

(1)事業者は事業場におけるメンタルヘルスケアの具体的な方法等についての基本的な事項を定めた「心の健康づくり計画」を策定すること。
  ポイントは次の4つ。1.体制の整備…メンタルヘルス対策の統括的な責任者と組織および担当者を決定し、各役割と権限、責任を明確にする。2.問題の把握および対策の実施…社内のメンタルヘルス状況について問題点を把握し、具体策を実施する。健康調査票の定期的な活用、教育研修などを行う。3.必要な人材確保および事業場外資源の活用…内部の産業保健スタッフなどの育成、外部スタッフの活用を行う。セルフケアやラインケアについての教育、相談対応、社員への研修によって周知を行う。4.労働者のプライバシーへの配慮…個人情報の収集に関するルール作りを行い、情報管理者の決定と管理方法、個人情報の活用の基準などを明確にする。
 
(2)心の健康づくり計画に基づき、次の4つのケアを推進すること。
●労働者自身による「セルフケア」…心の健康は見えにくいものなので基本はセルフケアの考え方が必要になります。そのためには、健康調査とストレスチェックの実施によって、労働者が自分自身の健康状態に気づく機会を事業者が作る事が必要です。
●管理監督者による「ラインによるケア」…上司にあたるひとは、部下の心の健康について十分に把握し、問題がある場合は速やかに対処するだけではなく、日ごろから問題が起きないように十分に配慮することが大切になります。そのために管理職が日ごろから労働者に対して「気配り」「声かけ」「気づき」が必要になります。
●事業場内の健康管理担当者による「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」…事業場内産業保健スタッフとは、産業医、衛生管理者、保健師、心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフを示しています。
●事業場外の専門家による「事業場外資源によるケア」…大・中規模の事業所では、事業場外からの情報提供や支援を求めることが有効です。公的機関としては、都道府県保健推進センターや労災病院勤務者メンタルヘルスセンターなどがあります。一方、中小企業など社内に専門家がいない場合は、地域産業保健センターの支援を受けることができます。特に近年注目を集めているのがEAP(従業員援助プログラム)サービス業者。専門知識に基づいたコンサルや教育研修、専門家によるカウンセリングなどを受けることができます。
 
(3)その円滑な推進のため、次の取組を行うこと。
 ●管理監督者や労働者に対しての教育研修●職場環境等の改善●労働者が自主的な相談を行いやすい体制整備
 私たちは周囲の人たちと円滑な関係を保持し、自分の能力を存分に発揮できることを願っています。個人を尊重する風土があり、労働者の存在価値を十分に認めている事業所であるためにも、この指針に基づいた計画立案、計画の実施が求められています。

提供:株式会社TKC(2006年8月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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