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サーバー会社(B社)の責任は、契約内容によって定まります。この場合には、おそらく約款があり、その約款のなかには「賠償はするが、その額は利用料金の3倍までに限定する」という条項が設けられていることがよくあります。
しかし、このような条項も、その内容が社会的に見て妥当性を欠く場合には、「公序良俗」(民法90条)に反するとして、その部分だけ無効になります。そこで、約款の記載が社会的に見て、妥当かどうかを検討することになります。
B社の側からすると、B社のサーバー上で仮に1億円の取引があったとしても、その一部を得られるというわけではなく、得られるのは利用料金のみです。なのに、その取引について損害が生じた場合にだけ、賠償責任を負わされるというのでは、割に合わないでしょう。損害は、利益のあるところに帰属するというのが法律の大原則だからです。
したがって、賠償の額を利用料金の範囲に限定する条項は、公序良俗に反するとまではいえないと考えられます。なお総務省も、NTT東日本と西日本が類似の約款を設けていることについて、特に問題はないと考えているようです。
民法の債務不履行に関する規程
約款に損害賠償に関する定めがない場合や定めが無効になる場合には、民法の債務不履行に関する規定が適用されます。
債務不履行により損害賠償責任が認められるためには、B社に故意・過失があることが必要です。地震は不可抗力であり、B社に過失はないと考えられますが、必要以上に復旧が遅れたのであれば、過失が認められる場合もあります。
賠償責任が認められる範囲は、(1)債務不履行から通常生じると考えられる損害(通常損害)と、(2)特別の事情によって生じた損害(特別損害)であり、その事情が予見できた場合、または、普通なら予見できただろうといえる場合の損害です。
B社のレンタルサーバーの利用者はネット通販業者だけとは限りませんし、サーバーがダウンしていた期間、確実に売上が見込めたわけでもないので、これが通常損害に当たると考えることは難しいでしょう。もちろん、3日間サーバーが利用できなかったわけですから、3日間の利用料金相当額は通常損害に該当します。
また、特別損害に当たる場合を考えても、B社には特別事情を予見していなかったでしょうし、一般的にもこれを予見するのは困難と思われ(A社がミラーサーバーを用意している場合もある)、特別損害として損害賠償を認めるのは難しいと考えられます。
したがって、B社に過失があったとしても、損害賠償責任は3日分の利用料金の3倍まで、約款がなければ3日分の利用料金相当額に限られ、売上額の損害賠償責任は認められないのが通常です。
よって、このようなリスクを回避するためには、A社としては別々のサーバーを借りて、サイトを複数用意しておくのが適切でしょう。インターネットのサイトは、レンタルサーバー会社のサーバーがダウンした場合だけでなく、上流の回線がダウンした場合にも利用できなくなるものです。数千万円もの売上を上げるサイトを、たった一つのサーバー会社でまかなうのは非常に危険だと思います。
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