Q&A経営相談室
【労務管理】
本人責任で休職する社員の給与は?
 
Q:
 社員が休日に骨折の大ケガをし、ひと月以上入院することになりました。その間の給与はどのように扱えば良いのでしょうか。(建設業)
 
<回答者>社会保険労務士 三留敏明

A:
 ご質問の事例では、「休日」とありますので、社員本人の責任によるケガと考えられます。会社の業務以外でのケガや病気などで長期に休む場合は、私傷病休職あるいは事故欠勤休職となります。休職とは、会社に在籍したまま長期間の労働義務が免除され、かつ雇用契約はそのまま持続することをいいます。いずれの場合も、労働者都合で休職するわけですから、ノーワーク・ノーペイの原則により、無給であることが普通です。

詳細は就業規則で

 休職については、就業規則で定めるのが普通です。労働基準法は、休職制度があるときは就業規則等に明記すること以外、特に休職について言及していません。内容については、自由に定めることが可能です。会社側からみてやむをえない休職もあれば、悪質な休職もあります。このため、休職の事由に応じて賃金控除の取り扱い(私傷病欠勤、公傷欠勤では一定額を支給、その他は無給とするなど)を定めているところもあります。
 また、休職の期間は、勤続年数等で差異を設けるのが一般的で、私傷病休職は6ヵ月から1年の範囲とすることが多いようです。休職事由がなくなれば、休職期間中であっても復職できますが、さらに休職が続くようであれば、休職期間の延長、退職、解雇などとなる場合もあります。

休職中は健康保険が役立つ

 業務上の災害による病気やケガは、労働基準法の災害補償の規定や労働者災害補償保険法の適用により、社員が業務に就けず、賃金を受け取れない期間について、おおむね賃金の6割に相当する金額が支給されます。
 一方、私傷病の場合は、健康保険法が適用されます。社員が入院や療養などで業務に就けず、賃金を受け取れない時、健康保険から「傷病手当金」として、1日につきおおむね賃金の6割に相当する金額が支給されます。ただし、傷病手当金は、業務に就けなくなった日から3日間は待機期間とされ、4日目から1年6ヵ月を限度として支給されます。給付内容については、加入している健康保険組合等で若干異なりますので、詳しくは加入している健康保険組合で確認してください。
 そのほか、健康保険では、(1)療養の給付(診察や薬剤の支給。実質的には、診療時に一部負担金として、医療費の3割を支払うことになっています)、(2)入院時食事療養費(食事療養に要した費用の給付です)、(3)高額療養費(所得により一定額以上の療養費用に対する給付です)、その他各種の給付があります。

社員の自助努力も必要

 しかし、最近の医療費の高騰を背景とした医療制度改革などにより、一部負担金や高額療養費などの負担額が、徐々に割高になっているのも事実です。一家の働き手が、長期に入院することにより、差額ベッド代や患者の身の回り品、あるいは家族の病院までの交通費など、家計への影響も意外と大きくなります。各自が、万一のリスクに備えて、日ごろから蓄えをすることや適切な医療保険に加入することも必要です。一般的に、給与所得者なら公的保障以外に、日額1万円程度が必要といわれています。何歳まで医療保険を必要とするか、1回の入院で何日分の給付金を必要とするかなどを検討することとなります。
 また、社員の長期休業により、会社の業務への影響もあると思われます。会社としては、公私を問わず社員の安全管理、健康管理、リスク管理について啓蒙することも大切なことと思われます。

提供:株式会社TKC(2006年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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