Q&A経営相談室
【危機管理】
中小企業もBCPを導入すべきか
 
Q:
 最近BCPという言葉を良く聞きますが、どういうものですか。中小企業も導入すべきものなのでしょうか?(機械部品製造業)
 
<回答者> 東京海上日動リスクコンサルティング
事業継続グループ グループリーダ  近森健三

A:
 BCPは「Business Continuity Plan」の略で、事業継続計画と訳される場合が多いようです。「事業継続」とは、地震やテロなど不意の災害や事故が発生した場合に、企業における重要な事業が中断しないこと、また、万が一中断した場合においても、目標とする復旧期間内に目標とするレベルまで回復することであり、そのための具体的な行動計画を「事業継続計画」といいます。
 なぜ最近BCPという言葉が注目されているのかというと、ひとつには、政府が主導となって国家的な防災力向上のための政策や指針を打ち出したことがあります。その流れの中で、経済産業省の「事業継続計画策定ガイドライン」(2005年3月)、内閣府の「事業継続ガイドライン(第1版)」(同年8月)、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」(2006年2月)など、各種ガイドラインが公表されました。これによって「BCP」という言葉が加速的に世の中に広まったと言えるでしょう。また、ここ数年、日本においては、新潟・福島豪雨および福井豪雨、新潟県中越地震、大雪などが発生し、地場の企業に相当なダメージを与えた一方で、2001年9月11日の米国ニューヨークのテロにおいて、予め策定していたBCPに則って迅速に復旧を果たした企業の例が紹介されるなど、事業継続体制の有無が企業の存続を左右するとの認識が高まったことが挙げられます。
 さて、建物の耐震化や防火対策、安否確認、防災組織など、これまで企業が取り組んできた防災対策ももちろん重要であり、BCPもこれらの対策を包含するものです。しかし、重要なポイントは「事業の継続」に着目している点です。
 例えば、大規模な災害が発生した場合においては、これまでの防災対策によって自社の建物や社員がある程度無事であったとしても、社会インフラがストップしたり、仕入先が被災したりなどの事態が発生した場合、自社の事業継続は困難になる可能性があります。従って、企業の経営資源である人・物・情報(IT)・金などの保全を図るだけではなく、事業継続上必要となる機能や要素について、二重、三重の対策を講じておく必要があるのです。
 また、中小企業は大企業に比べて経営基盤が弱く、特定の事業への依存度が高い、拠点が分散化していないといった特性があり、大規模災害等によって自社や仕入先、得意先などが被災した場合に、致命的なダメージを蒙る恐れがあります。そこで、このような非常事態の発生に備えてBCPを構築しておくことが求められます。事業継続の取り組みには様々なレベルがありますが、まず、自社にとって重要な事業を特定したうえで、当顧客からの要請や事業中断による経営へのインパクトを勘案し、目標とする復旧時間と復旧レベルを定めることから始まります。
 そして、建物・設備の損傷、情報システムの停止、社会インフラの機能停止、人的被害の発生などを想定として、(1)非常時における指揮命令系統や連絡体制の整備、(2)重要な設備の早期復旧対策、(3)部品や原材料などの調達対策、(4)重要な情報やデータのバックアップ対策や代替手段の準備、(5)業務実施のための要員確保策などを講じておきます。

 これらの対策を非常時において確実に実行できるようにするために、日頃の訓練や見直しが必要となります。また、地域の企業や取引先同士で連携して、非常時の対策を話し合っておくことも有効です。

提供:株式会社TKC(2006年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る