Q&A経営相談室
【新会社法】
取締役会決議をeメールで行う際の留意点
 
Q:
 新会社法では、定款に定めれば、取締役会を実際に開かずにeメールのやり取りで決議できると聞きました。その際の留意点等を教えてください。(食肉卸売業)
 
<回答者>新日本監査法人 公認会計士 渡辺伸啓

A:
  新会社法では、取締役会決議において、従来までの旧商法では認められていなかった書面決議が一定の要件の下で認められています。
 本来、取締役会は取締役相互が協議・意見交換を通じて意思決定を行う場であって、その会議を省略して書面決議を行うことは認められていませんでした。これに対して、企業活動の国際化などにより従来に比べ容易に取締役会を開催することが難しくなってきていることなどから、機動的な会社経営の実現のため取締役会の書面決議を認めるべきとの指摘がされ、新会社法で法的な手当てがなされているのです。
 取締役会の書面決議については、新会社法上、次のような規定がされています(新会社法370条)。
 次の各要件を満たす場合には、当該提案を可決する旨の取締役会決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

1.

取締役が取締役会決議の目的である事項について提案した場合であること。

2.

当該提案につき、当該事項について議決に加わることができる取締役の全員が書面又は電磁的記録(いわゆるeメール等/筆者注)により同意の意思表示をしていること。

3.

監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べていないこと。

 当該規定は、基本的には旧商法及び新会社法において認められている株主総会の書面決議に関する規定と同様ですが(新会社法319条1項)、取締役会決議の書面決議を認めるに当たっては当該項目を定款で定めることが必要とされています。これは、取締役がいかなる方法で意思決定を行うかが株主にとって重大な関心事で、経営上の基本的事項と考えられているためです。
 また、要件の一つとして当該提案について取締役全員の同意が必要とされていますが、これは各取締役が当該提案の内容を判断するに当り、書面等で十分な情報を入手でき、適切に判断することができる事項についてのみ認める趣旨です。したがって取締役会を開催し、議論を尽くさなければならないような提案については採用できません。
 なお、新会社法においても旧商法と同様に、代表取締役及び代表取締役以外の取締役であって、取締役会決議により取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選任されたものは、3ヵ月に1回以上、自己の職務の執行状況を取締役会に報告しなければならないとされています(新会社法363条2項)。このため、当該取締役会について書面決議が採用されたとしても、少なくとも3ヵ月に1回以上、取締役会の開催が必要とされています。
 ほか、当該取締役会の書面決議に関連するものとして、従来の重要財産委員会制度に相当するものとして規定がされている特別取締役による取締役会決議の取扱いが問題となりますが、当該取締役会は一定の重要事項について機動的に意思決定が行えるよう少数の取締役で組織されるものですから、当該規定の趣旨から書面決議が認められていません(新会社法373条4項)。

 なお、当該書面決議がなされた場合の取締役会議事録の記載事項については、次の規定が設けられています(会社法施行規則101条4項1号)。

1.

取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容

2.

1の事項の提案をした取締役の氏名

3.

取締役会の決議があったものとみなされた日

4.

議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

提供:株式会社TKC(2006年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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