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プリペイド方式のショッピングカード(以下、プリペイドカード)は、事前に支払った金額の分、ある特定の商品やサービスを購入できる金券(有価証券)であるという意味では商品券に近いものです。ただ、商品券と異なるのは、残額がゼロになるまで繰り返し使えるという点にあります。
商品券やギフト券、プリペイドカードなど、前払いで購入した金券は法律上は「前払式証票」と呼ばれ、これを発行する場合は「前払式証票の規制等に関する法律」の適用を受けます。プリペイドカードも、その仕組みや販売の対象などによって、この法律の下で届出や申請が必要であったり、毎年の基準日(3月と9月)における未使用残高に応じて発行保証金の供託が必要だったりするので、導入を検討する場合は、まず関係各省庁や専門家などへ問い合せるとよいでしょう。
前払式証票には、自社で発行、もしくは自社グループ内のみで使用できる「自家発行型」のものと、クレジットカードなどと同じように専門のサービス会社が発行する汎用型の「第三者発行型」とがあります。
利用者側は、レジや自動販売機で素速く決済が可能なこと、いちいち小銭を持ち歩く必要がないこと、カードによっては購入金額による一定のプレミアム(割引などの特典)が付いていること等の利点があります。
一方、食品スーパーなどがこうしたプリペイドカードを導入するメリットとして、顧客に前述のような利便性を提供できることの他、現金が必要でないため、つい余分に購入してしまう可能性があること、事前に入金されたお金を運転資金に活用できること、残高が残ったままに終わるカードが発生すること、などが挙げられます。いずれにしても、顧客がカード利用のメリットを感じて繰り返し使用してくれるようなものでなければ、成功はおぼつかないでしょう。
ポイントカードとは区別せよ
さて、ご質問者が検討しているプリペイドカードは、同じカードに繰り返し入金できる磁気カードないしICカードのタイプだと思いますが、磁気カードは初期投資が少ない半面、簡単に偽造できる可能性があります。すでに交通機関などでは高額な磁気カードが廃止されたりしています。他方、ICカードは、そうした偽造の心配はまずありませんが、システム導入のコストが非常に大きくなります。
プリペイドカードは、基本的に少額多頻度の決済で利便性を発揮する制度ですから、導入にあたっては自社の営業政策などに基づき顧客がプリペイドカードの利用にメリットを感じてくれるかどうかをよく見きわめる必要があります。例えば食品スーパーでは、通常のレジに並んでプリペイドカードを使用するのではあまりメリットが感じられません。カードによる少額決済用のスピードレーン設置やサービスカウンターでの入金対応など、店内システムの変更も検討しなければならないでしょう。また、顧客管理を目的とした「ポイントカード」とは区別して考えるべきです。顧客データを管理するシステムは個人情報保護法の絡みもあって、投資金額や運用コストが非常に高額になるからです。
日本でもクレジットカードはごく日常的に使われており、「スイカ」や「エディ」といった電子マネーの店舗への導入も進んでいます。将来的には、こうした電子マネーとプリペイドカードの境界はなくなる可能性が高いため、中小チェーン店では当面、自家発行型ではなく、第三者発行型のカードを導入するのが賢明ではないかと思います。 |