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「成果型退職金制度」とは、従来型の「基本給連動方式」や「定額方式」によって退職金の金額が決まる制度と異なり、基本給や勤続年数にかかわらず、等級や役職など、会社への貢献度(成果)に応じて退職金額が決定される制度です。
例えば、会社への貢献度(成果)が役職に反映されている企業の場合、課長職在籍1年につき15万円、また、部長職在籍1年につき20万円が加算され、退職時の加算金の累計が退職金の金額になるといった具合です。この制度においては、従業員が在職中に役職に就いていたか否かによって退職金の金額に差が生じることになります。
ちなみに、従来型の「基本給連動方式」というのは、従業員が退職する時の基本給に、勤続年数に応じた支給率を掛け合わせて算出した金額を退職金とする方式です。例えば、勤続40年の従業員が定年退職し、その時の基本給が50万円、勤続40年に対応する支給率が30倍であった場合、退職金の金額は、50万円×30倍=1500万円となります。
また、「定額方式」というのは、従業員が退職する時の勤続年数に応じて退職金の金額が決まる方式で、例えば、勤続20年で定年退職の場合は500万円、勤続40年で定年退職の場合は1500万円というように定めます。
しかし、基本給が下がるのは稀ですし、勤続年数も増えることはあっても減ることはないので、基本給や勤続年数によって退職金の金額が決定される従来型の制度を維持し続けると、退職金が右肩上がりで増え続けることになってしまいます。
経済が右肩上がりで成長していた時代であれば、これらの退職金制度でも支障はなかったのですが、現在のように経済が停滞している時代においては、このような退職金制度は企業にとって大きな負担となっております。
また、「定額方式」においては、会社への貢献度に関係なく、同じ期間勤めていれば同じ金額の退職金を受け取ることができるため、例えば、同期入社の従業員2名の内、1名は部長まで出世し、もう1名は定年まで平社員であった場合でも、2名の退職金は全く同じ金額となってしまいます。
こういった理由から、最近、「定額方式」を導入している企業においては、会社に多大な功績を残した従業員から疑問や不満の声が上がっています。
そこで、このような問題を解決すべく、会社への貢献度を退職金の金額に反映させる「成果型退職金制度」の導入を検討する企業が徐々に増えてきています。
導入にあたってのポイント
「成果型退職金制度」を導入するにあたって注意しなければならないのは、「自社の等級や役職が、本当に会社への貢献度を反映しているか」ということです。
せっかく「成果型退職金制度」を導入しても、成果を計るための等級や役職といったモノサシ自体が年功序列によって決まるようであれば、結局、従来型の退職金制度と変わらないものになってしまいます。
従来型の退職金制度から「成果型退職金制度」へ移行するにあたっては、自社における退職金の意義を再検討する必要があります。
そういった意味でも、まずは自社の「人事理念」を明確にし、自社の人事・評価制度が、従業員の会社への貢献度を適切に反映しているかどうかを見直すことから始めることをお勧めいたします。
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