Q&A経営相談室
【法  律】
改正不正競争防止法の中身と注意点
 
Q:
 今年11月に「改正不正競争防止法」が施行されると聞きました。そのポイントと注意点を教えてください。(金属製品業)
 
<回答者>弁護士 河原崎 弘

A:
 近年、日本の技術の流失、特に海外への流失が非常に多くなり、また、模倣品・海賊版商品の販売・輸入等で、日本企業が損害を受ける例が多くなっています。
 そこで、こうしたことに対応するため、不正競争防止法がこのほど改正され、今年11月1日から施行されることになりました。営業秘密の保護と模倣品対策を強化したことが骨子で、その改正ポイントは次の通りです。
(1) 日本国外で営業秘密を使用、開示した者を処罰の対象とする。
(2) 元従業員等が営業秘密の使用、開示した場合を処罰の対象とする。
(3) 営業秘密を侵害した犯人が属する法人を処罰の対象とする(1億5000万円以下の罰金)
(4) 不正競争違反の罪について、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に引上げる。
(5) 著名なブランドなどを勝手に自己の商品に付けて販売する行為を処罰の対象とする。
(6) 商品形態模倣行為(コピー商品)を処罰の対象とする。

 とくに営業秘密の保護強化についていえば、今回の改正法で新たに処罰の対象となったのは、まず、日本国内で管理されている営業秘密を国外で開示、使用した場合です。
 また、元従業員(退職者)が処罰される場合は「秘密保持契約」があり、かつ在職中に開示の申込み、または請託があることが処罰の前提になります。秘密保持契約がない場合は処罰されません。
  従来、競合者で、他人の営業秘密を取得した者は不可罰でした。新たに、他人が犯罪により取得した営業秘密を取得して、使用、開示した者は独立の正犯として処罰されます。この点でも処罰範囲が広がりました。
 さらに従業員が、詐欺行為、管理侵害行為など不正行為により、営業秘密を取得して、使用、開示した場合、従業員等が属する法人は、最高1億5000万円の罰金刑が科されます。判例によると、法人が従業員等の選任監督につき相当の注意を尽くしたことを証明した場合は、法人は免責されます。

営業秘密の3つの要件

 営業秘密とは、次の3つの要件を満たしている場合をいいます。
(1) 秘密管理性……施錠した保管庫に入れてあったり、パスワードによりアクセスが制限されたり、文書に「秘密」などと書かれたりして、厳重に管理されていること。
(2) 有用性……当該情報が客観的に有用な情報であること。
(3) 非公開性……当該情報が保有者の管理下以外では、一般的に入手できないこと。

 この3要件が欠けると、営業秘密として保護されません。会社にとって有用な秘密であっても、誰でもアクセスできる状態であったり、無施錠の引出しに入れてあったりすると、保護されないわけです。秘密保有者としては、営業秘密を秘密として管理する必要があります。
 また、営業秘密は、前述したように会社と従業員間に秘密保持契約がないと、保護されません。が、従業員を無制限に拘束しない方が得策です。従業員と契約する場合は対象、期間などを特定する必要があります。例えば「当社で知ったことは一切秘密」などとすると無効とされるおそれがあります。期間も「退職後10年間」などと限定する方がよいでしょう。
 これらの点につき、経済産業省では近く「営業秘密管理の新指針」を出すことにしています。  

提供:株式会社TKC(2005年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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