Q&A経営相談室
【環  境】
“ゴミゼロ工場”を実現するには
 
Q:
 ゴミゼロ工場をめざしたい。基本的な考え方と注意すべきことを教えてください。(金型メーカー)
 
<回答者>千葉商科大学 政策情報学部教授 三橋規宏

A:
 日本の環境行政は、環境基本計画に基づいて実施されています。第1次環境基本計画は平成6年12月に策定され、ほぼ5、6年ごとに改訂されています。第2次環境基本計画は平成12年12月に策定されました。現在第3次計画の改定作業が進行中です。環境基本計画の重要な柱として、資源の有効活用の推進があり、その実現のため循環型社会形成推進基本計画も制定されています。現在、日本の産業廃棄物は年間約4億トン排出されていますが、このうち最終的にゴミとして埋め立て処分される量は、約5000万トンです。企業がすべてゴミゼロ工場を実現すれば、最終処分されるゴミは、ゼロに近づけることができます。ゴミゼロ工場は、このような資源循環型社会づくりという大きな時代の流れの中で位置づけられています。

ゴミゼロ工場とは…

 ゴミゼロ工場とは、埋め立て処理に回す廃棄物をゼロにした工場のことをいいます。国土の狭い日本では、これまで廃棄物の処理の仕方として、中間処理として焼却できるものは焼却して減量する、それが不可能な廃棄物は、解体・圧縮し、最終的に埋め立て処分してきました。しかし最近では、増え続ける廃棄物に対し、最終処分場が極端に不足し、処理費が高騰する中で、企業の収益を圧迫しています。一方、不法投棄が目立ち、各地で廃棄物の処分をめぐって紛争が起こっています。また廃棄物の焼却は、有害物質のダイオキシンを発生させるなど国民の健康に脅威となっています。ゴミゼロ工場への挑戦は、このような新事態に対する企業の防衛策の意味もあります。

徹底的な分別が必要

 工場から出る廃棄物をゴミとして扱わないためには、廃棄物を素材ごとに分別し、資源として再活用していくことが必要です。そのためには、工場の従業員が全員参加で、徹底的なゴミの分別を実施することが求められます。よく言われるように、ゴミをごちゃ混ぜにして捨てれば、単なるゴミに過ぎませんが、分別すれば立派な資源として再生させることができます。ゴミゼロ工場を目指す場合には、工場の「川下」で、出てきたゴミを分別収集するだけでは十分ではありません。廃棄物をできるだけ出さない製品設計、製造工程の改善、さらに原材料や部品の仕入れに当たっても、過剰包装や過剰梱包品の購入を避けるなど、「川上」での対策が必要です。

資源の引き取り手開拓がカギ

 廃棄物を素材ごとに分別しても、それを資源として使ってくれる事業者がいなければ、埋め立てに回さざるをえなくなります。分別素材を資源として使ってくれる事業者を探すことがゴミゼロ工場を成功させるためのカギになります。素材によっては、引き受け側の事業者がお金を払ってくれるところもあります。セメント工場は、産業廃棄物の多くをセメント製造過程で原燃料として使い、エコセメント(廃棄物を主原料としたセメント)を作っています。産業廃棄物の主要な引き取り手の代表格といえます。すでにゴミゼロ工場を実現している企業では、かなり遠方の事業者に引き取ってもらうケースもあります。できるだけ近場で引き受けてくれる事業者を探す努力が大切です。
  最後に、ゴミゼロ工場を実現している企業の多くが、コスト削減効果、従業員の士気向上に効果があると指摘していることを付け加えておきます。

提供:株式会社TKC(2005年8月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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