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物品デザインの保護手段として基本となるのは意匠登録です。意匠法では意匠(「物品のデザイン」)を意匠登録することにより保護しています。意匠登録を受ければ意匠権者はその意匠、及びそれに類似する意匠を独占的に実施(製造、販売など)することができます。そして、無断でその意匠や類似する意匠を実施する者に対しては、意匠権侵害として差止請求や損害賠償請求を行うことができます。
なお意匠権は同一の意匠だけでなく、類似する意匠にまで及びますので、デザインが少し異なる類似の意匠に対しても権利を行使できます。
意匠登録を受けるためには特許庁に意匠登録出願(以下「出願」)をする必要があります。出願をする際には願書と共に意匠を特定する図面などを提出します。
出願は特許庁で審査されます。審査では出願された意匠が意匠法に定める登録要件(登録を認める条件)を備えているかどうかを審理します。
登録要件としては「出願前に世間に知られていない新しい意匠であること(「新規性」)」、「出願前に知られている意匠から容易に創作できた意匠でないこと(創作非容易性)」などがあります。
ここで注意したいのは「新規性」の要件です。出願の前に発表や販売などをすると、原則として新規性を失うことになります。ですから出願は新製品の発表や販売の前にするようにしてください。
審査で登録が認められ、登録料を納付すれば意匠登録され、意匠権が発生します。意匠権の存続期間は最大で登録から15年間となっています。
「関連意匠」や「部分意匠」も
意匠法では意匠保護の強化のために、様々な出願制度が用意されています。例えばバリエーションなどで類似する複数の意匠がある場合、「関連意匠」として同時に複数の出願をして、より広い範囲で意匠の保護を図ることができます。
他にも、「部分意匠」という制度があります。出願は原則として物品ごとに行うのですが、特定の部分のみにデザイン的な特徴がある場合、その部分だけについて「部分意匠」として出願して意匠登録を受けることができます。
例えば、筆記具のクリップ部にデザイン的な特徴があり、そのクリップ部のデザインは色々な形状の筆記具本体と組み合わせて使えるような場合、クリップ部のみについて「部分意匠」の出願をして意匠登録を受けることができるのです。
このように物品のデザインについては意匠登録により保護できますが、次に意匠登録以外による保護についても簡単に説明したいと思います。
まず考えられるのが不正競争防止法による保護です。無断で「模倣」された複製物(デッドコピー)に対しては、自社商品の販売開始から3年以下であれば販売や輸入などの差止を請求することができる場合があります。さらに、模倣でなくても自社商品の形態が有名になれば、不正競争防止法の別の規定により保護されることもあります。
とはいえ、真似されたくない重要なデザインについては、不正競争防止法による保護を過度に期待せず、意匠登録により積極的に保護しておいた方が確実です。直接デザインを保護するわけではないのですが、特許や実用新案登録により保護される場合もあります。
なお、著作権も物品のデザインを保護することがありますが、基本的に文房具のような量産品は著作権の保護対象である「著作物」ではないとされるので、文房具のデザインを著作権で保護するのは難しいです。
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