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違法駐車は日常化し、交通渋滞・交通事故の原因となっています。他方、日本の治安情勢は悪化しており、違法駐車の取締りに投入できる警察官の数には限度があります。
このため、警察官を、本来の刑法犯の捜査に向け、他方、駐車違反の摘発の効果をあげ、交通状況を改善する狙いから、昨年6月の「道路交通法改正」によって2006年6月までに違法駐車取締り手続きの一部が民間に委託されることになりました。
違法駐車の取締り件数は、04年では、全国で約168万件となっています。違法駐車の反則金は多くの場合1万5000円。単純計算すると、昨年は駐車違反取締りによって、年間約250億円の反則金が生じたことになります。警察庁では、民間委託により、駐車違反取締り件数を現在の2倍程度に引き上げる計画です。
違法駐車の取締り事務は、現在でもレッカー移動、車輪止め取付けなどが民間に委託されています。が、今回の改正では、違法駐車車両の「確認」「標章の取付け」が新たに民間に委託されることになったのです(改正道路交通法51条の8第1項)。
具体的には、(1)違法駐車発見のための巡回、(2)違法駐車車両の確認、証拠写真の撮影、(3)違反を確認する標章の取り付け――の事務が民間に委託されます。民間への開放によって、取締りの効率、質が高くなることが期待され、警察庁では「警察官500人程度のリストラ効果がある」と予想しています。
総合評価方式で選定される
さて、このような取締り事務の委託を受けるには、公安委員会に登録をした法人でなければなりません(同法51条の8、4項)。登録は今年7月下旬から始まります。登録申請書は事務所所在地の警察署に提出します。
法人の業務の性質等については特に制限はありませんが、警備業、NPO、人材派遣業からの参入が多いと言われています。従って、登録までは比較的スムーズに行くでしょうが、受託業者は入札で決まります。
委託を受ける法人の選定は最低価格方式ではなく、総合評価方式がとられるようです。総合評価方式とは「価格」以外に「評価点」の要素を入れて総合的に評価し、最も適切な法人を選定する方式です。評価点は(1)公平性(中立性、利害関係など)、(2)適正性(責任、信頼、苦情処理への対応など)、(3)確実性(組織・財務基盤・過去の実績など)、の3つです。
総合評価方式のため、入札書と併せて業務遂行に関する提案書や会社の実績に関する書類を提出することになります。従って、警察官OBを雇った会社が優先される懸念もありますが、的確な提案をした優良法人が選定される可能性もあります。
警察庁では、民間業者への業務委託については出来高制ではなく、一定の条件で取締まりを行うために必要な人件費をもとに委託費を算出する方針です。「駐車監視員」(受託法人に所属)2名以上を1ユニットとし、巡回活動(1日8時間)をするユニット総量で契約する予定です。駐車監視員は専用携帯端末、記章付きの帽子、腕章を警察から貸与され、業務を行います。
この駐車監視員というのは、今回新たに作られた資格です。この資格を取得するためには、各都道府県公安委員会が開催する資格者講習(14時間)を受け、終了考査に合格しなければなりません。駐車監視員は「みなし公務員」で、駐車監視員の業務を妨害すれば公務執行妨害罪、賄賂を受取れば収賄罪となり、業務上知った秘密を漏洩した場合は罰則が科せられます。 |