Q&A経営相談室
【海外取引】
海外企業と取引を始める際の留意点
 
Q:
 ホームページを開設し、自社の機械部品を紹介したところ、これまで取引をしたことのないアメリカや中国などのメーカーから注文が入りました。海外企業と取引するうえでの注意点を教えてください。 (部品メーカー)
 
<回答者> 中小企業基盤整備機構 アドバイザー 小林 修

A:
 町工場がホームページ(HP)を開設した途端、海外から製品の注文依頼が舞い込んできたというケースは数多くあります。しかし、今まで国内業者としか取引をしたことのない企業にとっては国際間の商取引はよく分からないものです。そこで注意すべきポイントをいくつか解説します。
 まず、(1)「契約書の作成が重要」ということを心掛けて下さい。言語、文化、商習慣、法制度が異なるので書面による契約が欠かせません。
 アメリカでは「口頭証拠の法則」があります。これは一旦契約を結んでしまうと、後になって当事者や第三者が口頭での証拠によっては、契約書の内容を勝手に追加や修正をしたり、否認することはできないという原則のことです。要は契約書が絶対ということですので、契約書の作成に当たっては慎重を期して詳細を一つずつ丁寧に詰めていくことが肝要です。自社に不利な条件になっていないかをよく見てください。例えば「納入日の指定」です。国際契約では契約書をよく読むとペナルティ条項が設けられていて、遅延が1日のびるごとの値引率が書かれていることがあります。納入日を決めるにあたっては、「日本の工場渡ししか駄目」と強気に交渉を行うのも手です。わざわざ海外から日本の中小企業を探して連絡してきたのですから、強気でも大丈夫です。 
 次に、(2)「品質の取り決めは『仕様書』に一本化する」という点にも留意すべきです。国内取引では、「試作サンプルの提出」と「図面の確認」の2つで品質の取り決めをしているケースが多いかもしれません。しかし国際取引においては、サンプルの品質を一人歩きさせないためにも、図面の確認による仕様書売買の一方だけにしたほうが賢明なのです。また、海外企業が日本製部品を求めてくる理由は、寸法精度、耐久性、勘合など、つまり“機能”を求めているので、何の機能が必要なのかを事前に打ち合わせし、それを仕様書に明記する必要もあるでしょう。

商品検収場所は日本で

 また、(3)「商品検収場所は日本とする」ことも留意点の1つといえます。
 日本では不良品が発生したら客先に引き取りに行って代替品と差し替えますが、国際取引の場合、輸送費や相手国での再輸入手続きに時間がかかりすぎて、倉庫保管料や諸経費も加えると、利益が吹っ飛びます。そのため、契約交渉時において問題となりそうな規格は自社の利益を守れる検収方法を採用するよう交渉すべきです。例えば積み地である日本での検収を条件にすること。これは決して自社の利益確保のためだけでなく、検収を相手国で行う場合、なかなか実行してくれなかったり、契約を盾に支払いを先延ばされる恐れがあるからです。国際ビジネスは性悪説に立つほうが安全といえます。ただ、どうしても相手国での検収を受け入れなければならないという場合は、検収方法は日本と統一しておくことが重要です。こうすれば、国内での自社内検品と照合できます。
 以上、注意点を3つほどあげましたが、海外企業との取引を継続して行うのなら、知財権、PL法、海外与信管理などのこともあるので、英語や中国語といった従業員の語学研修に、時間がかかっても取り組むことを提案します。2005年4月より「人材投資促進税制」が創設されましたので、企業負担もしやすい環境になっています。
 また、独立行政法人中小企業基盤整備機構(03-5470-1522)では、国際取引や海外投資など海外ビジネスにおける中小企業に対し、相談員が無料でアドバイスする公的サービスを実施しているので活用をお薦めします。

提供:株式会社TKC(2005年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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