Q&A経営相談室
【危機管理】
万引き被害を減らす方法とは
 
Q:
 万引きが増えて困っていますが、有効な対処策が見つかりません。どうすればいいのでしょうか。 (食品スーパー)
 
<回答者> リテールサポート 代表取締役 山内三郎

A:
 万引きは年々、増加傾向にあり、警察の発表で14万件以上となっています。アメリカのスーパーマーケットのロス率のデータでは、売上対比の平均1.8%のロスがあり、その3分の1が万引きであるとされています(アメリカでは社内不正の率が一番高い)。
 これを日本の市場に当てはめて、万引きの被害を換算すると10億円規模の売上のスーパーであれば、3000〜5000万円程度は万引きの被害にあっているといって良いと思います。このような莫大な被害にあっているにもかかわらず、万引き対策の費用を年間どの程度かけているかを換算したことが無い経営者が多いことは非常に残念です。日本の盗難率や万引き率等が今後下がっていくという明るい要素は何も無く、社会的な秩序の欠如を考えると、盗難等の率は上がっていくとみるのが妥当でしょう。
 万引き対策や、社内不正等の商品のロスに対する対策は、コストとして考えるべきで、店員のサービス教育や商品知識の教育と同じように「防犯教育」を施していくのが極めて当たり前のこととして認識されるべきであると考えています。下記のグラフもアメリカのデータですが、セキュリティ講義日数と万引き捕捉者からの盗難回収金額の比較を表現しています。万引きの捕捉を従業員がすることはお勧めできない面もありますが、下記の表によるとセキュリティ教育が年間2日以下の会社は、回収額約14万ドル(約1500万円)に対して、3日以上の会社は約倍の31万ドル(約3400万円)の回収となっています。

万引き捕捉後の対応が重要

 万引き対策の基本は、先ずは、教育です。如何に高価な防犯ゲートを入れても、高価なカメラを入れても意味はありません。先ずは、防犯機器も含めた運用と意図を明確にして、対処をしていくべきなのです。では、防犯教育とは如何におこなっていくべきなのでしょうか? この限られた誌面の中では、コンセプトしかご案内できませんが、大事なことは、次のような「万引き捕捉後の対応」を明確に決めておくことです。

 ・声のかけ方
 ・捕捉後の対面場所への引率の仕方
 ・商品の出させ方
 ・警察に引き渡すのか(何歳でも? 小学生は? 未成年者は?)
 ・対面する場所、対面する人をあらかじめパート社員が知っているか?
 ・一筆とるのか?
 ・身分証等のコピーはとるか?

 これらをを決めておくことで、従業員の対応もかなり違ってきます。「捕捉後の対応」を知らないと怖くて声をかけられません。

 声のかけ方は、「何か、お探しですか?」「お客様、お会計はレジでお願いします?」「カゴをお使いください(カゴを渡す)」等、捕捉を目的とせず、あくまで、予防を心がけることです。万引きを目撃したら、店長や店員を探すのではなく、直ぐに、上記のようなお声かけをして下さい。
 捕捉するためではないのに、「万引き捕捉後の対応を取り決めておく」というのは少し矛盾して聞こえるかもしれませんが、「捕捉後の対応」を知っていることで、勇気も持って「何かお探しですか」とお声かけができるのです。
 詳細等をお知りになりたい方は、リテールサポート(03-5823-1522)までお問い合わせください。

提供:株式会社TKC(2005年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る