Q&A経営相談室
【税  務】
災害支援活動における税務上の留意点
 
Q:
 新潟県中越地震やスマトラ島沖地震など自然災害が続いていますが、当社も社会貢献の一環として支援したいと考えています。その場合の税務上の処理はどうなるのでしょうか。(日用品メーカー)
 
<回答者> 税理士 多勢陽一

A:
 寄付金は事業活動とは直接関係なく支出されるものですから事業上の経費としての性格が乏しいものです。もっぱら公益的な寄付を除いて一定限度額内での損金算入しか認められていないのが実情です。ただ、災害に対する寄付金の場合はその「公益的な寄付」に当たり、全額損金として認められるなど優遇されます。
 災害地への援助はその企業の姿勢を示す良い機会ともいえます。あくまで余裕の範囲内ですが、企業としての社会的責任を果たすべく支援活動は積極的に行っていくべきでしょう。
 具体的な災害に対する義援金や支援に対する税務上の取り扱いは以下の通りです。
 

1.災害義援金を支出した場合
 災害義援金は税制上の優遇処置により、基本的には法人税法上全額損金となります。郵便振替や銀行振込により義援金専用用紙で寄付をした場合には控えとして手元に残る振込金受領書をもって、税制上の優遇措置を受けるための領収書にかえることがことができます。
 現金の交付が行われた日に支出されたものとして扱われますから、決算期末に取締役会で寄付金を支出する決議をして未払金で計上しても認められません。翌期において現金を支出した時点で損金として認められることになります。ただ、公益法人等への現金による寄付の場合には、若干異なる税務上の処理が必要になることもありますから注意してください。

2.自社製品の在庫を被災者に対して提供した場合
 多数の被災者の救援のために緊急に自社製品を提供するための費用は寄付金には該当せず、広告宣伝費や支援費などの勘定科目で損金処理することになります。自社製で法人名が表示されているものに限らず、購入品であっても該当することになります。

3.取引先に対する売上債権の免除等を行った場合
 災害を受けた得意先に対して災害発生後相当期間内に売掛債権や貸付金の全部または一部を免除した事による損失は寄付金には該当せず売上値引等の勘定科目で経理処理をします。ただし、明らかに回収ができない売上債権の免除は貸倒損失として経理処理することになります。
 得意先に対して売上債権の免除は後のトラブルを避ける意味からも、内容証明など文書によって手続きを行い、それを保管しておくことを忘れないでください。

4.災害見舞金に充てるための組合等へ拠出する分担金
 組合等の構成員の事業用資産に生じた災害損失に対して拠出した分担金等で、その損失の補填のための構成員相互の扶助等についての規約に基づいてその組合等から合理的な基準に従って賦課された金品については会費等の勘定科目で経理処理します。

5.取引先に対する低利や無利息による融資を行った場合
 災害を受けた得意先に対して、その取引先の復旧を支援するために災害発生後相当期間内に行った低利または無利息の融資は正常な取引条件に従って行われたものとして寄付金には該当しません。

提供:株式会社TKC(2005年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る